goo blog サービス終了のお知らせ 

goto_note

西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

お土産飽和状態

2007-04-11 | 研究ノート
・札幌出張。車内では,ヒノキ論文の最終チェック。単なるコピー&ペーストのミスとかが発見されたりするが,内容的にはなかなかいいと自画自賛。もはや自分の論文を愛してしまっており,絶対に大丈夫だという気になる(のはいつものことだ)。ということで,戻り次第,修正してAnnals of Forest Scienceに投稿するとしよう。ひとしきり終わったので,久保さんのブログに掲載されていた図などを眺めつつ,何を打ち合わせるべきか(というより,何が分かっていないか?)を考える。

・北大へと向かう前に,まずはパン吉へと・・・。おお,今日は充実しているな。ハード系をあれこれと買い込み,食パンも一斤。“こちらの食パンは簡単には切れません・・・“などと挑戦的な(?)注意書きがあるが,我が家ではパンナイフを新調したので大丈夫なはず。あえて,切らない状態で持って帰る。地環研の久保さんのところを訪ねて,トドマツ母子モデルの打ち合わせ。モデル検討の過程はブログに詳細に書いてあるので,もはやそれを前提とした状態で話をお聞きする。

・説明資料のコピーを頂いたので,それに書き込むなどして理解に努める。こちらも,プリントアウトした図などに書き込みをしていると,おぼろげながら何が明らかにされたかが分かってきた。定着した実生や稚樹の親子解析をすると,種子トラップでは得られない定着,生残の過程を経た後の親子関係が浮かび上がる。これはとりもなおさず,森林の空間的あるいは遺伝的な構造の“鋳型”となるわけだ。しかし一方,これらは定着・生残のプロセスを経た上での結果であり,これらの要因が相互に関係しあっている。したがって,観察されたものから,種子の散布パターン,定着のしやすさ,生残確率などを伺い知ることはできない。本気でこれをやりたければ,むしろ種子散布はシードトラップで定量して,その後はデモグラフィックな追跡調査を行うのが本当だろうが,今回は散布,定着,生残などのプロセス考慮しつつ,散布カーネルを推定しようという試みだ。

・これまでの論文(例えば,Dow & Ashley 1996)では,得られた観察値にカーネルをフィットさせようとしてきたわけだが,一体何を推定しようとしているのかが案外と分かりにくい(この問題点は,Jones et al. 2005 Amer Natでも既に指摘されている)。それはともかく,今回の結果では,母樹ごとの散布カーネルに相当の個体差があること,にもかかわらず母樹を込みにすると全体としては裾野の長い,一見,シンプルな散布カーネルになるというところが面白い。このような個体差が生じる要因として,倒木というセーフサイトと母樹の位置だけではなく,母樹の種子散布能力パワー(母樹の質),倒木の定着・生残のしやすさ(倒木の質)などをランダム効果を駆使しながら検討している,といった感じだろうか。ベイズの場合,それぞれにパラメータの事後分布が与えられるので,結果を見るだけでどんな雰囲気なのかが感覚的に分かる,というのが興味深い。

・などというのも,WinBugsによるベイズ推定の実践や様々な作図を見せていただくうちに,何となく実感がつかめてきたもの(まだ間違って理解している可能性もあるけど)。これまでにも、ベイズの話は時折眺めてはいたが、あくまで遠い外国の出来事といった感じだった。ところが、今回は理解しないと(理解したことにしないと・・・)論文投稿できない。さらに、扱う生物が自分が触ってきたもの(トドマツ)だと急に親近感が湧くから不思議。

・階層ベイズモデルの意味と本モデルの詳細についてはまだまだ勉強が必要で,論文として仕上げていくうちに少しずつ理解するしかない。が,今回のモデルで単純化した仮定や得られた結果の意味はだいぶ分かった,と思う。後は,モデルの部分のテキストと図表などをいったんお願いし,それを待って全体を整えていくという打ち合わせを行う。遺伝構造の図はいらないんじゃないか?という指摘も頂いたが,これこそが面白いと言っているレフリーもいるので,とりあえずは残して後で検討することに・・・。

・お昼は生態学会シンポでお世話になった平尾君とともに,新装“きゃら亭”へ。そこでは,Wikiによるホームページ作成に関して色々とお話を伺う。最近はページ荒らしロボなるものがネット上を徘徊していて,とんでもないことをすることがあるとか・・・。昼過ぎにWiki実演で,これまただいぶ感じが分かった。永光さんの作業場で当方がコメントしようとするとどうにもうまくいかなかった理由もようやく判明。HTML言語を覚えなくて済むというのは素人にはかなり便利。

・帰りがけに「Wikiでつくるかんたんホームページ」なる本があったので早速購入。分かっている人にとってはまるで無駄な情報ばかりだろうが,当方にはまさに欲しい情報がそこにあり,早速,始めることができそうな感じ。ようし,いよいよ研究室(といっても一人だけど)ホームページ作成に入るか!という気分になる。ちょっと名前が怪しげだが,ロリポップなるレンタルサーバーが使いやすそう。

・ホームページで思い出したが,当機関のホームページでの研究室紹介を100文字程度でという注文が来ていた。正式(?)な研究室名は,「遺伝育種」。100文字で何を書くべきか・・・。

「当遺伝育種研究室では,主に樹木種を対象に,生態遺伝や林木育種に関する研究を行っています。特に,遺伝マーカーを用いて,天然林や人工林における主要樹木種の繁殖や更新の様式を明らかにした上で,いかに森林の遺伝的管理や改良を行うかといった応用的な研究に挑戦しています。最近では,種子のかたち,開芽のフェノロジーなど表現形質の評価と遺伝的分化に関心を持ち,交配実験や移植実験などを通じて,樹木集団の局所適応の実態解明を目指し,移植リスクを評価するような研究を目指しています。さらに,最近では,森林の再生修復機能にも着目し,様々な林相において小面積皆伐と地がき処理を組みわせて,森林がどのように再生修復されるかといったことを実験的に明らかにしようとしています。さらにさらに・・・」

・はい,既に300文字を超えています。「お前さんは最近何をやっているのか!?」とか言われるわけだよ,実際。育種と生態を両輪で走らせようとしているのだが,その両輪がどんどん開きつつ,その間に造林とか施業とか,興味と必然にかられて色んな分野が入り込みつつあり,操縦不能状態となっているのでは!?「文章を書く」というポリシーだけは一貫しているんですけど・・・。

・久保さんは、まずはLaTexで原稿を書いてみる(数式が多いから当然・・・)とのことで,最終原稿をどのように仕上げるかという話になる。最終的にはワードで編集できるように統合させましょうという提案をしていただいたのだが,むしろこちらの文章をLaTex形式に直してしまえばいいのか・・・。無謀のような気もするが,こういう風に自分を追い込むとLaTexを必然的に覚えることができそうだ(といいつつ,練さんとのやりとりはPDFファイルになるね)。当方にとっての実際問題は,文献リストと引用のところだろう。ここで,一気に導入するかどうかは練さんと相談してから,ということにするか。それにしても,またすごい世界に突入してしまうのか・・・はてさてどうなることやら。

・戻ってきて,ヒノキ論文の投稿。投稿規程を最終チェックしつつ,気合のクリック。さあてどうなるか、楽しみである。