・車窓の風景。わずか4日前に来たばかりの福岡だが、既に桜は満開である。しかし、今回改めて目を惹いたのはクスノキなど常緑広葉樹の新芽である。若草色からえもいわれぬ赤、橙など実に多様である。桜がその儚さに魅力があるとすれば、新緑はその対極にあるとも思える。実に生命力に溢れていて個人的に好きだ(地味だけど)。

・受付を済まし、山梨のNさんとともに森林学会賞受賞講演を聴講。今回の学会賞は、井上真さんのコモンズの協治論と大住克博さんの北上山地の広葉樹林成立と過去の土地利用の話(既に購入済みの本の内容)。また、奨励賞は神戸大の石井弘明さんによる林冠構造と生産性や多様性の関係の話、道立林業試験場の今博計さんによるブナ・マスティングの究極要因における相対的重要性の話、日本大学の吉岡拓如さんによる森林バイオマス資源の話であった。時間の関係で吉岡さんのお話だけは聞くことができなかったのだが、他の皆さんのお話はとても興味深かった。
・中でも、石井さんの林冠構造の話はとりわけ面白かった。彼は、アメリカのワシントン州の林冠研究施設での林冠構造の調査と苫小牧でのクレーンを使った研究を引用しながら、普段あまり気にすることのない林冠における垂直構造を紹介してくれた。彼によると、枝先から下部への垂直方向は、植生の遷移段階になぞらえられるという。
・つまり、頂点の枝は若木できれいな円錐形だが、それから下がるにしたがって成熟していくと成熟個体のように徐々に円錐形が崩れ、力枝付近になると部分的に枯死したりする老熟個体、というわけだ。言われてみれば、そのとおりだが、考えもしなかった。また、空間の複雑さが生物多様性を維持するためのハビタットを提供していること、枯死枝の量からすると炭素固定量は無視できないほど大きいなどという話も興味深かった。
・いよいよ発表本番。T13セッションは、一人15分の時間で説明を行い、それに対して質問を受けるというもの。一人目の発表が終わったところ、ふと自分のポスターを見ると、既に人が来ている。それはいいのだが、既に誰かが説明している!?こんな離れ業をやってしまうのは、もちろんWT(本当(?)はWS・・・)氏である。自分の発表のときにも近い距離から見つめられて、冷や汗ものの異様なプレッシャー。質問に対しても、真っ先に答えてくれたりして、相変わらずの健在ぶりである。
・しかし、森林を歩いてきた人の意見は、なかなか示唆に富むものが多い。どんな厳しい突込みがあるかと思いきや、終始にこやかで、結局、喜んでいただけた(?)ようで・・・。そのほか、T13のセッションでは、ヌルデミミフシというヌルデにアブラムシがつくことによってできる虫えいに、なぜタンニンが含まれているかという研究がとても面白かった。穴を開けるとアブラムシの天敵であるヒラタアブ(?)が入ってきて食われてしまうので、それを防ぐためにアブラムシがヌルデに高濃度タンニンを出させているのではないか、ということを示唆する内容。
・何より、このヌルデミミフシがかつての日本女性のお歯黒の原料となっており、そうした文化の担い手たるアブラムシの多様性を保全するのは大事だという彼女の主張には大いに共感してしまった。当方も、鬢付け油の原材料であるハゼノキ(これまたウルシ科)の品種識別の論文を書いたことがあるので、こうした話はやっぱりロマンがあっていい、と思ってしまう。やはり、文化や人との関わり合いの中でのストーリーを整理してくれていると、ただ単に種多様性が高くなるような森林管理(施業)をしなければいけない、といった主張よりはずいぶんインパクトがある(と思う)。好みの問題かもしれないが、案外、こうしたことは大事な気もする。

・受付を済まし、山梨のNさんとともに森林学会賞受賞講演を聴講。今回の学会賞は、井上真さんのコモンズの協治論と大住克博さんの北上山地の広葉樹林成立と過去の土地利用の話(既に購入済みの本の内容)。また、奨励賞は神戸大の石井弘明さんによる林冠構造と生産性や多様性の関係の話、道立林業試験場の今博計さんによるブナ・マスティングの究極要因における相対的重要性の話、日本大学の吉岡拓如さんによる森林バイオマス資源の話であった。時間の関係で吉岡さんのお話だけは聞くことができなかったのだが、他の皆さんのお話はとても興味深かった。
・中でも、石井さんの林冠構造の話はとりわけ面白かった。彼は、アメリカのワシントン州の林冠研究施設での林冠構造の調査と苫小牧でのクレーンを使った研究を引用しながら、普段あまり気にすることのない林冠における垂直構造を紹介してくれた。彼によると、枝先から下部への垂直方向は、植生の遷移段階になぞらえられるという。
・つまり、頂点の枝は若木できれいな円錐形だが、それから下がるにしたがって成熟していくと成熟個体のように徐々に円錐形が崩れ、力枝付近になると部分的に枯死したりする老熟個体、というわけだ。言われてみれば、そのとおりだが、考えもしなかった。また、空間の複雑さが生物多様性を維持するためのハビタットを提供していること、枯死枝の量からすると炭素固定量は無視できないほど大きいなどという話も興味深かった。
・いよいよ発表本番。T13セッションは、一人15分の時間で説明を行い、それに対して質問を受けるというもの。一人目の発表が終わったところ、ふと自分のポスターを見ると、既に人が来ている。それはいいのだが、既に誰かが説明している!?こんな離れ業をやってしまうのは、もちろんWT(本当(?)はWS・・・)氏である。自分の発表のときにも近い距離から見つめられて、冷や汗ものの異様なプレッシャー。質問に対しても、真っ先に答えてくれたりして、相変わらずの健在ぶりである。
・しかし、森林を歩いてきた人の意見は、なかなか示唆に富むものが多い。どんな厳しい突込みがあるかと思いきや、終始にこやかで、結局、喜んでいただけた(?)ようで・・・。そのほか、T13のセッションでは、ヌルデミミフシというヌルデにアブラムシがつくことによってできる虫えいに、なぜタンニンが含まれているかという研究がとても面白かった。穴を開けるとアブラムシの天敵であるヒラタアブ(?)が入ってきて食われてしまうので、それを防ぐためにアブラムシがヌルデに高濃度タンニンを出させているのではないか、ということを示唆する内容。
・何より、このヌルデミミフシがかつての日本女性のお歯黒の原料となっており、そうした文化の担い手たるアブラムシの多様性を保全するのは大事だという彼女の主張には大いに共感してしまった。当方も、鬢付け油の原材料であるハゼノキ(これまたウルシ科)の品種識別の論文を書いたことがあるので、こうした話はやっぱりロマンがあっていい、と思ってしまう。やはり、文化や人との関わり合いの中でのストーリーを整理してくれていると、ただ単に種多様性が高くなるような森林管理(施業)をしなければいけない、といった主張よりはずいぶんインパクトがある(と思う)。好みの問題かもしれないが、案外、こうしたことは大事な気もする。