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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

論文掲載への厳しい道のり

2006-09-07 | 研究ノート
・日林誌に投稿していた焼松峠論文が戻ってきた.この論文は,1911年の山火事後に再生したウダイカンバ主体の広葉樹二次林の一部を皆伐し,その後に地がき処理してウダイカンバを初めとする木本種実生の発生状況を4年間調べたというものである.地がきを行う際,平坦地と斜面部をあえて設定し,それぞれの地形に定着した各木本種の実生数などについて記載している.

・「これから論文を書く若者のために」でも述べられていたと思うが,メールを開ける前から「よくない知らせ」であることがなぜか分かってしまう(別に私は超能力者ではない・・・).不吉な予感は見事に当り,審査結果の添付ファイルがやたらと多い.ふむふむ,2名の審査者のうち,1名は「わずかな修正で掲載可」,1名は「掲載不可」となり,第3者に審査してもらったところ「大幅修正で掲載可」となったらしい.かくもバラバラの査定となるのも珍しい.編集者は比較的好意的でぜひ修正稿を出すように推薦してくれているが,大幅な修正がなされない限り,「掲載不可」になるかもしれぬ,とのこと.

・最近,日林誌には自分がファーストでは投稿しておらず,セカンドではいくつか投稿したが,いずれも「わずかな修正で掲載可」であったために,まさか掲載不可の査定がなされるとは思いもかけなかった.さすがに,少々へこむ.地がき後にウダイカンバが更新するのは既にたくさんの報告があり,「新規性がない」と判断されたらしい.しかし,報告とはいっても,報告書か支部大会論文集ばかりで,いわゆる「学術誌」における報告はきちんとないのに,新規性がないとはいかに・・・.「常識」をきちんと量的に示すというのは,林学では大事だと思っているのだが,ここは見解の相違だろうか・・・.

・しばらく憤慨しつつ,攻撃的な心持ちのまま審査結果を読み進める.しかし,よくよく審査結果を読んでいると,なかなかよい指摘もしていただいている(むしろ,とてもしっかり読んでいただいている).さらに,こちらにも相当の落ち度があることが判明する.まず,ウダイカンバの資源保続に焦点を当てるのか,植生学的な観点で植生回復に焦点を当てるのか,論文の目的が確かに分かりにくい.また,考察は確かに指摘されている通り,推察の域を出ていないものが多く,言われてみれば”オーバーディスカッション”である.

・ここまで来て,原著論文としての新規性を無理やり追い求めるよりも,「ウダイカンバの資源保続における地がき処理の有効性」とでも題して,実証的な事例報告として短報で投稿した方がいいと思えてきた.たしかに,調査地も1つしかないし,環境条件の測定などもできていない.しかし,資源保続における有効性を事例報告的に示す必要性,緊急性は高いはずで(ウダイカンバの林業的価値を考えれば・・・),それについては問題ないだろう.

・それにしても,論文を掲載させるのは,例えどんな論文でも大変な作業であることに改めて気がつかされる.論文掲載までの闘いは,まだまだ続きそうである.