・早起きは3文の徳,ということで朝飯前の読解作業.本ブログでもたびたび登場のHufford and Mazer 2003の前半部を割合ときっちり読む.この総説は,Restoration生態における移植に際する課題点を様々な角度から整理している.何が問題になっており,どこまで分かっているのかを掴む上で非常にありがたい論文である.さらに,用語解説も充実しているので,バイブル的な感じにも使える.
・イントロでは,ハビタットの減少にともない緑化(移植)が必要とされるケースが多いこと,分布域が広い植物種では同種の中にもはっきりとしたエコタイプが存在しうること,異なるエコタイプを移植したときに様々な影響が現れる可能性があり,適切な種苗配布区域の設定が必要だ,などと背景が整理される.
・本文では,いくつかの項目に分かれている.まず,「移植がもたらす集団遺伝学的影響」として,1)創始者効果,2)Genetic swamping(遺伝的劣化?),3)雑種強勢と遠交弱勢が紹介されている.1)の創始者効果は非常にイメージしやすい.緑化に用いられる種子源は,比較的母樹数が限定されてしまうことは多いのだろう.特に,絶滅危惧種ともなると,元々個体数が少ない上に,繁殖に有効な個体はさらに少ないだろうから,移植集団で遺伝的ボトルネックが起こりうることは容易に想像できる.
・ここでは海草アマモとハワイ島のSilverswordの例が紹介されている.Silversowrdをインターネットで検索していると,その姿の異形さに感動する.これだけ,奇妙奇天烈な植物ならば研究をやっていても楽しかろう・・・.MolEcolの論文をダウンロードしたので,いつか読んでみよう.
・Genetic swampingという用語は初めて見たが,Glossaryを見ると「導入したGenotypeが数的有利,あるいは適応力がより高いために急速にその頻度を高め(分布拡大も含まれる),自生Genotypeに置き換わりかねないこと」を示すらしい.これには,移植集団と自生集団の交雑を伴うケースと伴わないケースがあるらしい.ここでは移植を伴わないケースとして,イネ科草本のヨシが挙げられており,北米に自生した集団はユーラシアからの移植集団に駆逐され,既に入れ替わっていることが葉緑体変異の解析で分かった,などと書いてある.
・次に雑種強勢と遠交弱勢について触れている.この論文の中でも,このように移植集団と自生集団が交雑したときの影響については,メカニズムも含めて詳しく解説してある.遠交弱勢のメカニズムとして,「Dilution」と「Hybrid breakdown」の2つがあることを初めて知る.Dilutionは,地域適応した遺伝子群が交雑によって薄まることで適応度が下がる,ということでなんとなく理解できる.Hybrid breakdownはやや難解だが,要するに遺伝子間の相互作用が交雑によって崩れるために起こるらしい.
・次に,「種内交雑の実証的研究」として,12種に関する13の研究例がTable 1にまとめられている.13の研究例のうち,F1世代の評価を行ったものが8例,F2以降の世代までの評価を行ったものが5例である.F1世代で明瞭な遠交弱勢を示したのは,13のうち4例で,その他はむしろ雑種強勢か両親と同等のパフォーマンスを示した.ただし,F2以降の世代を評価した5例では,F2でHybrid breakdownによる遠交弱勢を示すものが4例も認められている.
・こうしてみると,実証されているのはほとんど草本でごく一部の低木を含むくらいである.やはり,樹木は扱いにくいし,繁殖までに時間がかかることが対象とされない原因だろう(そもそも遺伝的分化の程度も低いし・・・).ということで,トドマツ研究の価値を再認識.
・後半では,「地域適応の検出と移植リスクの評価」,「種子供給範囲の設定」,「結論」と続くのだが,ここまでやったところで力尽きる・・・.
・イントロでは,ハビタットの減少にともない緑化(移植)が必要とされるケースが多いこと,分布域が広い植物種では同種の中にもはっきりとしたエコタイプが存在しうること,異なるエコタイプを移植したときに様々な影響が現れる可能性があり,適切な種苗配布区域の設定が必要だ,などと背景が整理される.
・本文では,いくつかの項目に分かれている.まず,「移植がもたらす集団遺伝学的影響」として,1)創始者効果,2)Genetic swamping(遺伝的劣化?),3)雑種強勢と遠交弱勢が紹介されている.1)の創始者効果は非常にイメージしやすい.緑化に用いられる種子源は,比較的母樹数が限定されてしまうことは多いのだろう.特に,絶滅危惧種ともなると,元々個体数が少ない上に,繁殖に有効な個体はさらに少ないだろうから,移植集団で遺伝的ボトルネックが起こりうることは容易に想像できる.
・ここでは海草アマモとハワイ島のSilverswordの例が紹介されている.Silversowrdをインターネットで検索していると,その姿の異形さに感動する.これだけ,奇妙奇天烈な植物ならば研究をやっていても楽しかろう・・・.MolEcolの論文をダウンロードしたので,いつか読んでみよう.
・Genetic swampingという用語は初めて見たが,Glossaryを見ると「導入したGenotypeが数的有利,あるいは適応力がより高いために急速にその頻度を高め(分布拡大も含まれる),自生Genotypeに置き換わりかねないこと」を示すらしい.これには,移植集団と自生集団の交雑を伴うケースと伴わないケースがあるらしい.ここでは移植を伴わないケースとして,イネ科草本のヨシが挙げられており,北米に自生した集団はユーラシアからの移植集団に駆逐され,既に入れ替わっていることが葉緑体変異の解析で分かった,などと書いてある.
・次に雑種強勢と遠交弱勢について触れている.この論文の中でも,このように移植集団と自生集団が交雑したときの影響については,メカニズムも含めて詳しく解説してある.遠交弱勢のメカニズムとして,「Dilution」と「Hybrid breakdown」の2つがあることを初めて知る.Dilutionは,地域適応した遺伝子群が交雑によって薄まることで適応度が下がる,ということでなんとなく理解できる.Hybrid breakdownはやや難解だが,要するに遺伝子間の相互作用が交雑によって崩れるために起こるらしい.
・次に,「種内交雑の実証的研究」として,12種に関する13の研究例がTable 1にまとめられている.13の研究例のうち,F1世代の評価を行ったものが8例,F2以降の世代までの評価を行ったものが5例である.F1世代で明瞭な遠交弱勢を示したのは,13のうち4例で,その他はむしろ雑種強勢か両親と同等のパフォーマンスを示した.ただし,F2以降の世代を評価した5例では,F2でHybrid breakdownによる遠交弱勢を示すものが4例も認められている.
・こうしてみると,実証されているのはほとんど草本でごく一部の低木を含むくらいである.やはり,樹木は扱いにくいし,繁殖までに時間がかかることが対象とされない原因だろう(そもそも遺伝的分化の程度も低いし・・・).ということで,トドマツ研究の価値を再認識.
・後半では,「地域適応の検出と移植リスクの評価」,「種子供給範囲の設定」,「結論」と続くのだが,ここまでやったところで力尽きる・・・.