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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

花水木山法師

2020年05月22日 | 音楽

  風薫る五月、いよいよみどり深く、あと二週間ほどしたら梅雨入りも近い。アジサイの季節にはまだ少し早いけれども、そのいまの時期に目に入るのが小さな山法師の姿、といっても青々とした葉っぱを地として織りなす星形模様のように咲くヤマボウシの白い花だ。

 そのヤマボウシの花で思い出すのは、「ぴあ」特別編集版(2012年10月号)における「山下達郎“超”大特集!」記事、そのラストに掲載されていた山下夫人である竹内まりやスペシャルインタヴュー中のエピソードのこと。
   このとき夫は還暦前にして、まりや夫人57歳なのだがその印象は、気さくでおおらか、かつ年齢を感じさせないチャーミングさとほのかに漂う男前的カッコよさが素敵と前置きにある。都会育ちとは異なる地方の名家出身、老舗旅館お嬢様育ちならではのよさが自然と備わっているのだろう。そのまりや夫人が伴侶ならでは生の姿の山下達郎という人間&夫像を、率直かつあけすけに語っているコトバが興味深い。まだまだこんな感じで話してくれたんだなあとすこし驚くが、年を重ねていくぶん優等生的な印象が漂ういまならば、いったいどうなんだろうと思う。

 そのなかの数あるエピソードの中で、ヤマボウシの季節におかしくも思いだすのが、もの知りの夫山下達郎は「花の名前と魚の名前」については、まったくの頓珍漢だということ。これは自然世界と食べ物については頓着しない、こだわりが少ないということなのかもしれないけれど、まりや夫人曰く、「ヤマボウシとハナミズキの違いを何度教えてもわからないんですよ。咲くたびに“どっちがヤマボウシだっけ?”って」。
 このエピソードからたぶん想像するに、都内山下&まりや家の庭周辺には、少なくともヤマボウシとハナミズキが植わっていて、四月にはハナミズキ、五月に入るとヤマボウシが咲いているのだろう。それでもって、夫人のほうは花の種類にそれなりに詳しく、たぶん多少園芸の趣味もあって、ガーデニングか庭いじりのようなことも行い、いっぽう夫のほうは音楽三昧オンリーでてんでそんな趣味はないけれども、そんな愛する妻の趣味嗜好を少なからず好ましく思っていて、季節がめぐる度に咲き出した花を見ると「これは何の花だっけ」と問いかけると、妻のほうは半分仕方ないねっていう表情で正解を教えて、ふたりともこの毎年のたわいない繰り返しを無上の歓びとしている、といった構図なのだろうか。ここだけ音楽以外の固有名詞が出てくるのが妙におかしくって、あれこれ妄想気味になってしまうが、おふたりの夫婦関係がとっても人間臭いなあ。
 
 毎年のように咲いた花の名前を妻に問う、和洋ポップス音楽にかけては尊敬すべき表現者の東夫(あずまおとこ)と、毎回のその問いかけをまんざらでもなく嬉しそうに答えるのは、スリムなスタイル美人かつ男前でチャーミングなシンガーソングライター出雲妻(いずもおんな)だとしたとしたら、これはもう大ノロケ以外の何物でもなく、「はい、ごちそうさまでした」というのがオチ、というもの。

 夫婦恋人友人関係、なにかにつけてもひとの絆には、謙虚さかつ誠実をベースに継続した“信頼”が大事です。


花盛り見ごろの山法師ヤマボウシ、白い法衣を纏った法師姿からきている。


こちらは花水木ハナミズキ、四月に咲く(撮影:2020.4.25)



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