まほろ市はかつての武蔵国と相模国の境、多摩丘陵がやがて丹沢の山並みに連らなろうする間に位置する、どににでもありそうな典型的郊外のまち。明治維新以降は、八王子から横浜港へとむかう絹を運ぶ街道の中継地にはじまる商業街地が形成され、日本のシルクロードと呼ばれたこともあった。
昭和20年以降、JR横浜線と新宿から小田原・箱根・御殿場をむすぶ特急が走る私鉄が交差するターミナル駅を抱えたベッドタウンとして発展してきた。1960年代からの首都圏人口の集中化に伴う受け皿としての団地造成により、昭和40年に入ってから人口が急増し、関西資本のデパートが初進出、やがて私鉄駅ビルの中にも巨大デパートができて、1980年代には三つの百貨店が競合し、首都圏郊外でも吉祥寺とならぶ有数の商業激戦地となっていった。
いまのまほろは、百貨店こそ私鉄駅ビルの中のひとつに淘汰されてしまったが、旧デパートはファッション、雑貨、飲食にまたがるテナントビルとして改装され、沿線に点在する大学に通う若者や高校生で連日にぎわっている。もちろん、地元住人や団地、分譲住宅に住み着いた地方からの定住者層も少なからずそのにぎわいの一端をになっているのは間違いない。
休日お昼どきに駅ビルスカイタウンと呼ばれるレストラン街に昇ってみよう。それらのすでにまほろを故郷として久しからぬシニア層に次世代ファミリー層でなかなかの混雑ぶりである。今年開店四十周年を迎えるそのデパートは、下車ホームからそのままエスカレーター直結の改札が三階入口と直結している。
デパート八階の催事場では、アメリカ郊外で田舎暮らしを楽しみながら創作活動を続けた絵本作家ターシャ・チューダー展が開かれている。自作のカントリーハウスに動物と住み、自然を生かした庭づくりや生活全般にわたる手仕事、シンプルでありながら心豊かで優雅な自給自足的ライフスタイルそのものが、この郊外都市に暮らす中年世代を中心にひろく郷愁ともいうべき共感を集めて盛況そのもの。ある意味うまくできていてここまほろにふさわしい展覧会なのでは、と思えてくる。
かつては、まほろの里山地域ではあたり前にあった生活様式を理想化し、体現してみせてもらったということなのかもしれない。すぐに頭に浮かぶのは白洲次郎と正子で、鶴川武相荘はその変奏スタイルともいえるだろう(もっともご本人は、フンッっと一蹴するだろうに違いない)。
喧噪を抜けてレストラン街へ。入った店舗内の大きな窓からの眺めはなかなかのもの。ここ十年ほどで周囲に建物は立て込んできたが、丹沢や津久井、高尾の山並みが遠くに望めるのはできた当時と変わらない風景だろう。街並みの上に夏の終わりの入道雲、この青空!
まほろ私鉄駅ビルデパートスカイタウンからの眺め、左手奥に横長の市庁舎(2016.08.21)
同じ青空の風景を、故郷越後妻の魚沼スカイラインからの眺めと対比させてみる。眼下に横断する関越自動車道。(2016.7.19撮影)
昭和20年以降、JR横浜線と新宿から小田原・箱根・御殿場をむすぶ特急が走る私鉄が交差するターミナル駅を抱えたベッドタウンとして発展してきた。1960年代からの首都圏人口の集中化に伴う受け皿としての団地造成により、昭和40年に入ってから人口が急増し、関西資本のデパートが初進出、やがて私鉄駅ビルの中にも巨大デパートができて、1980年代には三つの百貨店が競合し、首都圏郊外でも吉祥寺とならぶ有数の商業激戦地となっていった。
いまのまほろは、百貨店こそ私鉄駅ビルの中のひとつに淘汰されてしまったが、旧デパートはファッション、雑貨、飲食にまたがるテナントビルとして改装され、沿線に点在する大学に通う若者や高校生で連日にぎわっている。もちろん、地元住人や団地、分譲住宅に住み着いた地方からの定住者層も少なからずそのにぎわいの一端をになっているのは間違いない。
休日お昼どきに駅ビルスカイタウンと呼ばれるレストラン街に昇ってみよう。それらのすでにまほろを故郷として久しからぬシニア層に次世代ファミリー層でなかなかの混雑ぶりである。今年開店四十周年を迎えるそのデパートは、下車ホームからそのままエスカレーター直結の改札が三階入口と直結している。
デパート八階の催事場では、アメリカ郊外で田舎暮らしを楽しみながら創作活動を続けた絵本作家ターシャ・チューダー展が開かれている。自作のカントリーハウスに動物と住み、自然を生かした庭づくりや生活全般にわたる手仕事、シンプルでありながら心豊かで優雅な自給自足的ライフスタイルそのものが、この郊外都市に暮らす中年世代を中心にひろく郷愁ともいうべき共感を集めて盛況そのもの。ある意味うまくできていてここまほろにふさわしい展覧会なのでは、と思えてくる。
かつては、まほろの里山地域ではあたり前にあった生活様式を理想化し、体現してみせてもらったということなのかもしれない。すぐに頭に浮かぶのは白洲次郎と正子で、鶴川武相荘はその変奏スタイルともいえるだろう(もっともご本人は、フンッっと一蹴するだろうに違いない)。
喧噪を抜けてレストラン街へ。入った店舗内の大きな窓からの眺めはなかなかのもの。ここ十年ほどで周囲に建物は立て込んできたが、丹沢や津久井、高尾の山並みが遠くに望めるのはできた当時と変わらない風景だろう。街並みの上に夏の終わりの入道雲、この青空!
まほろ私鉄駅ビルデパートスカイタウンからの眺め、左手奥に横長の市庁舎(2016.08.21)
同じ青空の風景を、故郷越後妻の魚沼スカイラインからの眺めと対比させてみる。眼下に横断する関越自動車道。(2016.7.19撮影)