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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

オン・ザ・ストリートコーナー 1980-86

2018年11月21日 | 音楽
 夏前から抱えていた懸案のひとつにようやくの区切りがついて、自宅近くの16号線沿いにある中古CDコーナーの棚を覗いていたら、大学時代にLPで馴染んでいた、山下達郎の旧譜CDがまとまって並んでいるのを見つけた。ほっとした気持ちもあって、この機会に自分への褒美として購入して久しぶりに聴いてみようかと思った。すこし迷って選んだのは、ア・カペラソング集「オン・ザ・ストリートコーナー1&2」(ともに1986年版)と「僕の中の少年」(1988年)の三枚。
「オン・ザ~1」のほうは、1980年12月にLPがリリースされていて、それはいまもレコードコレクションのなかにある。CD版とはアルバムジャケット写真が異なり、NYブルックリンあたりの摩天楼をモノクロの粗い粒子でプリントしてあって、アンダーグランド風の渋く趣味的な雰囲気を漂わせている。一度は友人へ譲ってしまったのをふたたび取戻したもので、大学時代の思い出がつまった一枚だ。ここでア・カペラやドウー・ワップなる音楽用語を初めて知り、すこし背伸びした気分になったものだ。

 その当時(1980年)は、一部の音楽通受けだった山下達郎が「ライド・オン・タイム」でブレイクしてメジャーなったばかりで、ひとり多重録音を駆使した音楽的才能のスゴさと歌唱のカッコよさに驚嘆し、彼の音楽的ルーツのひとつを思い知らされた気がした。このアルバムの中のお気に入りは、「スパニッシュ・ハーレム」「ブルー・ベルベット」などで、当時、ご本人がつき合っていた?という噂のある吉田美奈子との掛け合いの曲があったりと、なんとも懐かしい。若かったとはいえ、よくぞこのようなオリジン的アルバムをだしてくれたものだと感心する。
 たぶん山下達郎はこのころ、まりや夫人とはまだ巡り合っていなかったのではないだろうか。なんだか、その後の三人三様なのか、はたまた二人三脚なのかの音楽人生にもかかわってくるであろう出逢いと別れ?模様ではある。

 アカペラ集2のほうは、その六年後のリリース、沢田研二もカバーしていた「アマポーラ」で始まり、結婚したばかりのまりや夫人も一曲バックで達郎氏に寄り添って、その歌唱をなぞるような朗読で参加している。高度のアカペラ術はさらに洗練され、いい意味のポピュラー色が増して、クリスマスソングも数曲入り、これからの年末にふさわしい内容となっていて、実にいいタイミングである。スタイリステイックスの大ヒット曲カバー「ユー・メイク・ミー・フイール・ブラン・ニュー」は、ひとりで四声コーラス、さらにリードバリトンとファルセットをこなしてしまう、ある意味タッツアン(愛称)ならではの乗りまくり、圧倒的かつ倒錯的なスゴさ!

 全面イエロー色のアルバム「僕の中の少年」リリーズは、いまからもう三十年前になるというのが信じられない。冒頭「新・東京ラプソディー」が軽快なリズムではじまり、桑田佳祐&原由子夫妻とまりや夫人の三人がバックコーラスで参加している「蒼茫(そうぼう)」を聴きたかったから、というのがこのアルバムを選んだ理由だ。そしたら翌日の新聞夕刊に、山下達郎コンサートツアーの中野サンプラザ公演記事が掲載されていて、それによればこの曲が冒頭二曲目に歌われていたのだそうだ。「クリスマスイブ」「シャンプー」、間奏で祝砲が鳴らされる「レッツ・ダンス・ベイビー」など、いまでも80年代の数々の曲がライブでは歌い継がれて、輝きを増しているのは、当時からの記憶を共有する同時代人としては、ほんとうにうれしい限りである。
 
 黒のニットキャップに赤いシャツ、ジーンズ姿でリズムギターをかき鳴らす達郎氏、はたして思い出の中野サンプラザステージでは、標題の「僕の中の少年」は歌われたのだろうか?

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