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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

霜月三河旅、豊田から岡崎

2022年12月04日 | 旅行

 霜月の終いに岡崎を拠点に三河地方巡りをして、締めくくりに念願の熱田神宮を訪れてきた。この旅、当初通りの予定ならば八月二十八日からのはずだったのが、寸前で家族の新型コロナウイルス感染が判明してしまって延期になっていたものだった。ようやく三か月ぶりで実現した二泊三日の旅、これまでなく難産の末にようやく実現を果たしたものの、道中は和やかに進むように願いつつも、行き違いの修復が果たせない予兆を秘めながら、ときに対話が成り立たなくなって思いやりと寛容さを失いそうになり、ほろ苦い思いも含んだこれまでにない旅となった。

 豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター展」をガイド付きで観たあと、足を延ばした豊田市民芸館からの帰路だった。片野元彦・かほり父子による藍染の絞りは良かったし、茶室からの紅葉と矢作川勘八渓谷の眺めもよかった。
 冬の日の暮れ始めた中岡崎駅へ降り立ったときには、どことなく不安な思いがしていた。岡崎は初めてであったし、滞在先最寄り駅は名鉄本線「東岡崎駅」がメインと案内を受けていたこともあり、虚を突かれた感じがしたのは致し方ないだろう。ふたつの駅は乗り換え可能ではあったものの、いったん改札を出る必要があったことが下車してわかる。これが振り返るには、どうもあまり良くなかった気がする。
 ここから滞在先までは徒歩圏ではあるらしいのだけれど、荷物を持っての暗い道中はできればタクシーを利用したかった。思いのほかローカルな中岡崎駅前に車が回送してきそうな気配はなく、もう疲れてはいたと思うが、仕方なくといった感じで暗闇を歩き出す。不条理さに加えて非と責められると、昼間なら何でもない道行が、なんとも遠くに感じて気持ちがすっかり萎んでしまった。
 ようやくといった感じで岡崎公園に隣り合った滞在先に到着したのだが、落ち着かずになんとも気まずいままで夜を過ごすことになりそうで、たまらなく気が重くなる。。受付もスムーズにはいかなくて動揺し、落ち着こうと自分に言い聞かせる。

 窓からは暗く沈んだ内堀に木々の影とライトアップされた天守閣と、その左隣り先に南欧風のそれとわかる安っぽいヴィラが浮かび上がっている。まあ、行ないの結末はもう悔やんでも仕方ないし、こんなこともあるさと自分を慰めてみる。ひとまずはアルコールを口にして体を温め、空腹を満たそう。深い眠りに入る前に展望大浴場に身を浸してみる愉しみだってあるさ、と気を取りなおす。

 翌朝、目覚めるとまだ暗がりの中に見知らぬ街が沈んで灯かりが瞬いている。眼下には乙川の広い河川敷、そこにはグランドと遊歩道が整備されているようで、コース道幅を記すLEDサインが点々と連なっている。そのコースを時折、別の灯かりが単独で進んでいくのを目を凝らして眺めていると、夜明け前のランニングをしている人のヘッドライトだった。大小の連なって揺れる灯かりは、どうやら犬をお供に散歩する姿である。こうしていつものようにこの町の情景は一日の始まりを迎えることを繰り返しているのだろうか。

 明るくになるにつれ、岡崎城址に隣り合って滞在したコーナールームの部屋からは、乙川の流れと天守閣が真正面に望める絶好のロケーションとなり、朝の光とともに気持ちも晴れてきた。
 せっかく岡崎を訪れたのだから、展望浴場の朝風呂ですっきりとして、お城を眺めながらの朝食を取り、まずはすぐの岡崎城址をめぐって徳川家康公生誕の足跡を確かめることにしよう。それからは、やはり外せない「八丁味噌の郷」巡りへと旧東海道を歩いて行けばいいさ。
 その日の行程プランが見通せるとほっとする。気を取り直して滞在そのものをじっくりと楽しもう、と思えるようになり、嬉しくなる。午前中のダラダラはリラックスできていい気分でシアワセな気持ちになれる貴重なひと時だ。そうだ、急ぐことはない、すこし部屋でゆっくりしてからお昼前に出かけたらいいよねって、お城を眺めながら、天下人の気分でうたた寝をするのも悪くない、緩急自在で行こう。


 東海道新幹線車中。新富士駅を通過し、富士川鉄橋を渡る(撮影:2022.11.27) 



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