ことしの八月に入ってからの猛暑は大変なもので、立秋を過ぎた14日のこと、新潟県上越市高田では、台風10号のあとのフェーン現象のため、気温が40.3℃まで急上昇して、この夏の国内最高温度を記録、ニュースとなった。さらに辛かったのは、その暑さと並んで湿度の高さだっただろうと思う。
その少し前の週末朝、出勤前にNHKニュースをつけていたら、「土曜すてき旅」というわずか五分あまりのコーナーがあり、女性アナウンサーが上越を旅してきたというので、はたしてどこが紹介されるだろうとちょっと興味をもって見た。
そうしたら真夏ということもあったのか、日本海を遥かに臨む山の中腹からパラグライダーで大空を飛び回る様子が映されるではないか。ここ尾神岳はふるさとのすぐ近くであり、約三十年前に日本初の公式大会が開かれた場所だったことが契機になって、地元にレジャーとして定着したということも知ってうれしくなった。けっこう、中年や初老の男性が楽しんでいる。
尾神岳といえば“大出口泉水”という名水の地でもあり、いつか帰省のおりには足を延ばしてこの爽快な体験してみたいと思う。鳥のように大空に飛びだしたら、眼下には頚城(くびき)平野の水田、名峰米山山麓のさきには蒼い日本海がどこまでも広がる情景がせまってくるだろう。
つぎに紹介されていたのが、とあるキャンプ場にある雪を利用したおおきな倉庫。固有名詞こそ出なかったが、安塚キューピットバレースキー場、夏の情景であることはすぐにわかった。「雪室ストア」と呼ばれていたひんやり倉庫内には、地元でとれた米、穀類、キュウリ、トマトなどの野菜やニンジンジュース、お酒などが籠に盛られて並んでいる。その冷気は天然の雪を集めて保存したものを使っていて、豪雪地帯ならではの逆転の発想で自然エネルギーを活用した知恵だ。
そして隣接した牧場には、除草作業と搾乳を兼ねて四十数頭のヤギたちが飼育されていて、自然の豊かな山村ならではの一石二鳥役を果たしてくれているというわけだ。ここはスキー場なので、夏のシーズンにリフトが動いていれば菱ヶ岳まで登れて、そのむこうはもう信州、千曲川を臨む飯山市郊外の高原がひろがり、そのとなりは野沢温泉だ。そう実感できたのは、大学時代の友人が飯山にセカンドハウスを持ったことを聞き、昨年はじめて立ち寄らせてもらって、その帰りに峠越えをして空き家となってしまった実家に帰省してからのことだ。
テレビ番組にでてきたのはここまでだったが、さすがに番組としてうまくまとまっていたという印象。帰省のおりには夏も冬も楽しめる、というのを改めて短い時間の画面を通して実感したのだった。
ここはほかにログキャビンや天然温泉もあって、ゆっくりできる。市街からくる途中には、地場の物産館と十数年ほどの前にできた「小さな空」という武満徹の曲と同じ名前の雪むろ蕎麦屋があり、山菜の天ぷらが美味しく、川瀬の音をききながら気持ちよく過ごさせてもらっている。少し離れてはいるが、市内北方の地にいくと明治の中頃、頃川上善兵衛によって創業された「岩の原葡萄園」という、やはり早くから雪の石室を利用してワインを成熟させていることで知られる日本草分けのワイナリーがある。「深雪花」というのがこのブランドで、数々のコンクールで入賞を重ねている名品だ。
年を重ねると、離れた故郷の良さがすこしずつわかってきて、知らなかった思いがけない側面を発見したりで、つれなくしていた故郷が愛おしくなる。
薬師池畔、シラカシの枝にたたずむ、碧い宝石“カワセミ”翡翠 (2019/07/28 撮影)
その少し前の週末朝、出勤前にNHKニュースをつけていたら、「土曜すてき旅」というわずか五分あまりのコーナーがあり、女性アナウンサーが上越を旅してきたというので、はたしてどこが紹介されるだろうとちょっと興味をもって見た。
そうしたら真夏ということもあったのか、日本海を遥かに臨む山の中腹からパラグライダーで大空を飛び回る様子が映されるではないか。ここ尾神岳はふるさとのすぐ近くであり、約三十年前に日本初の公式大会が開かれた場所だったことが契機になって、地元にレジャーとして定着したということも知ってうれしくなった。けっこう、中年や初老の男性が楽しんでいる。
尾神岳といえば“大出口泉水”という名水の地でもあり、いつか帰省のおりには足を延ばしてこの爽快な体験してみたいと思う。鳥のように大空に飛びだしたら、眼下には頚城(くびき)平野の水田、名峰米山山麓のさきには蒼い日本海がどこまでも広がる情景がせまってくるだろう。
つぎに紹介されていたのが、とあるキャンプ場にある雪を利用したおおきな倉庫。固有名詞こそ出なかったが、安塚キューピットバレースキー場、夏の情景であることはすぐにわかった。「雪室ストア」と呼ばれていたひんやり倉庫内には、地元でとれた米、穀類、キュウリ、トマトなどの野菜やニンジンジュース、お酒などが籠に盛られて並んでいる。その冷気は天然の雪を集めて保存したものを使っていて、豪雪地帯ならではの逆転の発想で自然エネルギーを活用した知恵だ。
そして隣接した牧場には、除草作業と搾乳を兼ねて四十数頭のヤギたちが飼育されていて、自然の豊かな山村ならではの一石二鳥役を果たしてくれているというわけだ。ここはスキー場なので、夏のシーズンにリフトが動いていれば菱ヶ岳まで登れて、そのむこうはもう信州、千曲川を臨む飯山市郊外の高原がひろがり、そのとなりは野沢温泉だ。そう実感できたのは、大学時代の友人が飯山にセカンドハウスを持ったことを聞き、昨年はじめて立ち寄らせてもらって、その帰りに峠越えをして空き家となってしまった実家に帰省してからのことだ。
テレビ番組にでてきたのはここまでだったが、さすがに番組としてうまくまとまっていたという印象。帰省のおりには夏も冬も楽しめる、というのを改めて短い時間の画面を通して実感したのだった。
ここはほかにログキャビンや天然温泉もあって、ゆっくりできる。市街からくる途中には、地場の物産館と十数年ほどの前にできた「小さな空」という武満徹の曲と同じ名前の雪むろ蕎麦屋があり、山菜の天ぷらが美味しく、川瀬の音をききながら気持ちよく過ごさせてもらっている。少し離れてはいるが、市内北方の地にいくと明治の中頃、頃川上善兵衛によって創業された「岩の原葡萄園」という、やはり早くから雪の石室を利用してワインを成熟させていることで知られる日本草分けのワイナリーがある。「深雪花」というのがこのブランドで、数々のコンクールで入賞を重ねている名品だ。
年を重ねると、離れた故郷の良さがすこしずつわかってきて、知らなかった思いがけない側面を発見したりで、つれなくしていた故郷が愛おしくなる。
薬師池畔、シラカシの枝にたたずむ、碧い宝石“カワセミ”翡翠 (2019/07/28 撮影)