日々礼讃日日是好日!

まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

藍色浪漫あいいろろうまん

2017年03月05日 | 日記
 啓蟄の日のとおり、日中はポカポカと春らしい陽気となった。

 住まいのマンション集会室脇に植わっている山茱萸サンシュユが、薄黄色の球形に拡げた可憐な花々をいくつか咲かせ始めている。それを遠目で見かけると全体がポワッと軽やかに霞んで見えて、ああ春が来たなって思わせる。この花が終わってから楕円形の若葉がひろがってくるのは、五月の頃だろうか。
 住宅正面入口には、マンサクの花が咲きだしている。咲く時期が同じころなのでサンシュユと混同していたが、比較してみればまったくその容姿は異なり、こちらは少し濃い目の黄色の異形の花で、根元部分が赤褐色の紐状の花弁を四方八方に拡げている。あちらは、大陸からの外来種、こちらのマンサクは日本原産で、本州太平洋側から九州の山林に自生する植物だ。

 まほろ博物館へ「伊万里染付図変わり大皿の世界」の副題が添えられた磁器コレクション展を見にゆく。出品大皿に描かれた図柄はすべて藍一色、題して「藍色浪漫」、あいいろ“ろうまん”、と読ませることがミソのようで、大陸の異国情緒も漂い、見ごたえのある意匠がずらりと並ぶ。案内チラシも藍に敬意を表してか、地が白、柄は実際の本物以上に濃い藍一色のなかなか目をひくデザインとなっている。
 現物の大皿をみていくと、すべて江戸時代以降に制作されたもので深みよりも柔らかみを感じさせる。意匠図柄は花鳥風月が基本であり、当時の職人たちが自然や風景を描くことでこの世の中に生かされているものと同化し、よりおおきな一体感や充足感を得ようとしているように思える。また描かれた龍や鯉、象、虎、鹿といった動物たちは何らかの吉祥のアイコンであり、どこかユーモラスが格好である。そのほかに干支図と八卦の組み合わせ、蕭湘八景、近江八景の絵柄がおもしろい。

 お昼を過ぎる前に、鎌倉街道を戻って16号線に入り、相模原中央地区へと移動する。市役所前桜並木大通り沿いのロイヤルホストで昼食をとる。久しぶりに入る店内、ここはファミリーレストランが輝やいていたころの栄華をいまだに保つ、王道レストランの雰囲気をもっている。
 一目でわかる大きなガラス窓と暖色系瓦の屋根をもつ平屋建ての店舗、広めの駐車場、店内のゆったりしたレイアウト、しっかり調理された料理と盛り付け、白衣を着てきれいに頭髪を揃えた店長、品よく教育された従業員の接客態度、清潔なトイレ、スイートポテトに代表される吟味された持ち帰り用お土産品など、ホスピタリティと顧客満足を意識した店舗オペレーションが徹底されていることに少々感動してしまう。その分、値段はそこそこ高めだが、月に数回くらいの贅沢としては納得できるだろう。
 ただしここでは、ファミリーがメインに珈琲やスープ、サラダつきのセットメニューを注文するようにのぞまれていて、一人客が安くあげようとして単品の注文をすることは憚られるようだ。ちょっと今日の自分にはそぐわない感を抱きながらの昼食、いまの自分にいろんな意味での余裕がないからなのだろうか?



 まほろ駅ビルデパート。その真中を小田急線が貫通し、ホームからエスカレーターで店舗まで直結。1976年に開業してもう四十年が過ぎたが、郊外都市型百貨店の典型としていまもにぎわっている思い出のデパート。
 このなんともストレートな外観のフォルム、とくに屋上部ウルトラマン的アイコンは、いまはほかに見ることの叶わない貴重な?小田急電鉄のCI更新前のマークだ。ビルの反対側の同じ位置にもあと二つが残されている。ビル本体に型取りして作られたから遺されたのだろうか、このマークを眺めるとこの町に住みだした学生時代を思い出す、記憶のシンボルのようなものだ。

 そして隣のビルは、小田急に先行して1971年に開業したかつての大丸百貨店町田店で、東京駅店舗につぐ関東進出第二号店だった。もし、これらのデパートが存在しなかったら、この郊外において都心に行かずして得ることのできた東京体験は、相当異なっていたことは確かだろう。そのくらいに当時のデパートは、ひとびとの憧れの存在だったと思う。
 大学生時代、地下食品売り場や配送センターでアルバイトをして、サンプラ時代は人事部付で研修をさせてもらったりとすっかりお世話になった場所。当時の職場の方々の顔がいまでも懐かしく浮かぶ。