ひとり言

日記のように、出かけた事や思った事をひとり言で書いてみます。

大遣唐使展にてひとり言

2010年05月13日 | Weblog
今年は遷都1300年祭で奈良は大いに盛り上がっているはずだが、連休まであまりTVなどの放送がなく、そこそこぐらいの人出と思い込み2日の日曜日に出かけた。目当ては国立博物館で開催している大遣唐使展である。奈良に近づく前から人は多く、電車は満員で、車窓から見えた平城宮跡イベント会場の混み具合は尋常じゃない。こんな人出は見た事がない。人の列、列…、まさに跡地に都が蘇ったようだ。
 真夏のような日差しを浴びながら、あの阿修羅に再会するために真っ先に興福寺に向かった。ぎょ…!境内に入る前から宝物殿への行列、最後尾から1時間半です…!次の機会にしよう!迷うことはないほど長い列だった。急遽予定変更で早めに昼食を取る事にした。興福寺を通り抜け猿沢の池の一筋向こうに、「季のせ」と言う蕎麦屋が雑誌に紹介されていたのでそっちへ向かった。細い十割そばで、辛み大根のおろしそばは予想以上においしかった。食べている間に、みるみる行列ができた。
 奈良公園から春日大社へ足を運び、東大寺へ抜け博物館へ帰るコースで2時間ほど歩いた。東大寺では聖武天皇祭の法要が行われており、大仏さんの正面は法要中で入れない。多くの高僧が高座に陣取り、その目線の正面には何故かミス奈良や他のきれいどころが鎮座していた…?この盧舎那大仏をどの様にして造ったかを知って、あらためて大仏さんを見ると、つくづく大変な事業だったと思う。
 やっと人出が空いていたところは、お目当ての博物館だった。もっぱら正倉院展の時しかこないので比較にはならないけど、他の場所と違って待つこともなく入場できた。入ってすぐ正面にあの観音菩薩立像と聖観音菩薩立像が並んで展示されている。光背もないので後姿も見られるが、聖観音菩薩立像は顔もスタイルも完璧だ。一方の観音菩薩立像はちょっとけだるい感じの立像で、顔はふっくらとして親しみが湧く。どちらも見飽きないほどの美しさがある。さて、楽しみにしていた吉備真備の絵巻はと言うと、その絵より描かれている物語の内容が面白くって、当時のヒーローを称えるのにこんな滑稽な話でよかったのかと思ってしまう。吉備真備に難問を突きつけ殺そうとするが、囲碁対局で相手の碁石を飲み込むズルをして勝つ真備、まるで魔術師か超能力者の様に描かれており、当時との善悪感や英雄感の違いが少し分かるような気がする。昨年吉備路を訪れた時、井原鉄道に吉備真備駅があったのを見て吉備真備に興味があった。遣唐使としてその命がけの航海で入唐し、18年の長期留学で日本に大量の書籍を持ち帰り、最先端の知識で学問の進歩に大いに寄与した。自身は当時の藤原家に対抗し、聖武天皇を支える。しかし、一旦は藤原仲麻呂に左遷され九州に送られるが、2度目の遣唐使として帰国し恵美押勝の乱で勝利し、仲麻呂を追討する。晩年は結局藤原氏の専横政治に対抗できずに引退した。「長生の弊、この恥にあう」と言い残して政界を去った。天武系の王統がこれで絶えた