マンホールの蓋でひとり言

車で動いているときには気がつかなかったが、電車で通勤するようになって気づいたことがあった。最初に見たのが西宮駅近くの歩道で、甲子園球場と酒蔵がデザインのきれいな蓋を見つけた。西宮市は金持ちでシャレてるなと思っていた。しかし、他の町へ行ってふと足元を見ると例えば新潟市ではチューリップだったし、大阪市では大阪城であったり、とにかくその土地の特徴が一目で分かるデザインがマンホールの蓋に描かれている。
これは私にとって大発見であった。知らない土地へ行っても土地柄がすぐに分かるし、歩くことが楽しくなる。それからは出張で行く土地で駅を降りると必ず蓋を探す癖がついてしまって、人と待ち合わせしていても下ばっかり見て、まるで会うのを避けているようだったに違いない。会社の周りの人にも出張に行ったら携帯で写真を撮ってきて欲しいと頼んで何枚か面白い物をもらったりして喜んでいた。
　しかし、ある日会社の部下から衝撃的な情報を聞いてしまった。「マンホールの蓋ならNetに友の会のサイトがあって、全国の蓋の写真が載っているよ！」喜んでサイトを見てしまった私は最初のうちは「これこれ！あそこにあったな」と好奇心でわくわくして見ていたのだが、すでに全国版を見てしまうとすっかり興味がなくなってしまった。
「余計なことを教えてくれたな」と部下に八つ当たりをして笑われている、マンホールにはまって蓋もしまらない私でした。