小さい頃親が事務所に入れてくれた。
お芝居をしてドラマに出るのが私の日常だった。
学校生活もあったけど、子役としての活動は面白かった。
中学校や高校の時はあまり目立つといじめに遭いそうだったから、
クラスの中ではかなり大人しくしていた。
大人になって、いろんなドラマに出た。
芝居は面白い。自分で工夫したり、先輩たちにいろんなことを教えてもらった。
テレビだけではなく舞台の仕事もあって、
世間を驚かせるような役もやってのけた。
それをやり遂げるのが私の役目だから。
と思っていたし、頑張れば世間の評価が上がって、期待された。
だけど、芝居って、何だろう。
カメラが回っているとき、みんなが期待しているような演技をする。
表情を作る。
舞台でもそう、自分じゃない自分を演じるとみんな拍手をしてくれた。
舞台を降りれば、素の自分に戻れる。
そのはずだった。
いつの間にか、プライベートでも友達と会うときでも芝居をしていた。
大げさな表情、明るい笑顔、彼らが私に求めるものを、私は見せるようになった。
無理して。
暗い顔は似合わない。
らしくない。
と言われそうで。
ひどく疲れるようになった。
本当はこんなことしたくないと思うようになった。
だけど、親は、「普通の人ができないことをしているの、すごいことよ」という。
私だって、その世界にいる自分のことをすごいと思う。
でも、友達にさえ作り笑顔を見せ続けなければならないことが続くと、
やめたくなる。
ああ、世間に期待されているのに、やめるわけにはいかない。
このまま演技を続けるしかないのか。
時々誰もいないところで、動物のように吠えた。
そして我に返って、自分の今のことを思い出した。
ああ、もうやめたい。
どこかに逃げたい。
逃げたい。
ここからいなくなりたい。
どうしたらいいだろう。
私はロープに手をかけた……