フィクション『同族会社を辞め、一から出直しオババが生き延びる方法』

同族会社の情けから脱出し、我が信ずる道を歩む決心をしたオババ。情報の洪水をうまく泳ぎ抜く方法を雑多な人々から教えを乞う。

私の生活

2018-06-24 22:27:17 | ショートショート

  彩佳はベッドの上で目を覚ました。

あ、私はどこにいるのだろう?

彩佳はすぐに気が付かなかった。

……そうだ、私は「あの人」と一緒にいる。

思い出した。彩佳の夫の事を。

そして、自分の息子と嫁の事を。

息子達は今夜遊びに来るらしい。そうだった、

私はそういう生活を送っていた。

 

他に私の人生があっただろうか?

と、彩佳は考えをめぐらせた。

 

私は「彼」と暮らしていたのだ。

もう長いこと、一緒に暮らしている。

残念ながら子どもは出来なかったけれど、

その分彩佳の事を大事にしてくれた。

 

一緒に買い物に行き、夕飯を作り一緒に食べる。

ワインを飲みながらテレビを見て大笑いし、

眠くなったわ、と「彼」にキスをする。

すると「彼」は彩佳を抱きしめ、好きだ、と耳元で囁く。

 

……そんなごく普通の生活を、私は「彼」と送ってきたのではなかったか?と思う。

 

彩佳はベッドから起き上がると、トイレに行き、

階段を下りて一階に向かう。

すると、これまでの生活の事を思い出したのだった。

 

私は、この家の主婦なのだ。

もう何十年も君臨しているのだ。

彩佳はため息を一つついて、

ソファでうたた寝をしていた夫に向かって声をかけた、

『そんな格好で寝てると腰に良くないわよ』

コメント (1)
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