安倍晋三 欧州訪問とG20ハンブルク・サミット出席空港会見、「改革だ」、「改革だ」と言うだけの改革

2017-07-06 10:28:30 | 政治

 安倍晋三が7月5日(2017年)、欧州訪問とG20ハンブルク・サミットに出席のため羽田空港から飛び立つ際、午後2時少し前に記者会見を行った。

 「首相官邸」   

 「まず、日EU・EPA(経済連携協定)は、アベノミクスの重要な柱の一つです。また、世界の自由貿易を推進していく上においても大きな意味をもちます。

 現在、岸田外務大臣が全力で交渉に当たってくれていると思いますが、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、この際、大枠合意を実現させたいと考えています。

 また、G20の機会を生かして、トランプ大統領、習近平国家主席、プーチン大統領、文在寅大統領を始め、世界のリーダーたちに、昨日の弾道ミサイルの発射によって脅威を増した北朝鮮に対して国際社会が緊密に連携して対応していく、その必要性について強く訴えていきたいと思っています。」
 
 「国政に一時(いっとき)の停滞も許されません。内外に課題が山積する中、より一層身を引き締め、反省するべきは反省し、謙虚に、しかし改革すべきことについては大胆に、政治を前に進めていきたいと思います。

 政権奪還時の初心に立ち返り、高い緊張感をもって一つ一つ結果を出していくことによって国民の皆様の信頼回復に努めていきたいと考えています。」

 カギ括弧が二個所ある。二度目の発言の前に記者が都議選惨敗について聞いたのだろう。

 北朝鮮が7月4日に行った「弾道ミサイルの発射によって脅威を増した北朝鮮に対して国際社会が緊密に連携して対応していく、その必要性について強く訴えていきたいと思っています」と力強く発言しているが、国際社会は金正恩にミサイル開発と核開発を思いとどまらせる有効な手段を思いつくことができていないのだから、単なる言葉の儀式で終わるだろう。

 但し安倍晋三はどこそこの首脳と北朝鮮問題について話し合い、両国が国際社会と共に連携して北朝鮮抑止の具体的な行動を取っていくことで意見が一致したと、例の如くにさも外交成果のように吹聴するのは目に見えている。

 中国もロシアも北朝鮮という隣国が核を保有していることは一つのリスクではあるが、中国の共産党一党独裁及びロシアの、少なくともプーチンの強権主義とアメリカの民主主義とが水と油の関係にあることを前提に考えると、このような関係によって両国が万が一アメリカと一触即発の状態で決定的に対立したとき、両国の友好国であり、アメリカとは敵対国である北朝鮮が核を保有していることは強い味方となることから、前者のリスクよりも後者の危険性に備えることのメリットを選択肢として視野に入れているとしたら、北朝鮮の核保有を望んでいることになる。

 中国とロシアが北朝鮮のミサイル開発・核開発阻止の行動に決定的に出なかったこれまでの対北朝鮮政策も参考材料とすることができる。

 安倍晋三は「国政に一時(いっとき)の停滞も許されません」と言って、都議選の惨敗と国政を別扱いしている。「政権奪還時の初心に立ち返る」とは言っているが、あくまでも自民党の一部議員や政権内の一部閣僚の問題であって、安倍晋三自身の問題とはしていない。

 当然、「反省するべきは反省し」と言っていることは自身を入れていない反省と言うことになる。

 そして「改革すべきことについては大胆に、政治を前に進めていきたい」と言って、「改革」の意欲とそれを成し遂げる自らの能力を示している。

 但し一つ一つの制度改正を成し遂げたとしても、全体として国民の暮らしに利便性と豊かさを与える形で世の中を前進させていかなければ、改革とは言えない。

 なぜなら、人間の利害の基本は経済――暮らしにあるからだ。かつて日本と日本国民について「豊かな国の貧しい国民」と言われた、国と国民の暮らし自体に大きな格差があった。今日、国の豊かさと国民生活の豊かさは相関性を保ち得ているだろうか。

 だが、安倍晋三の始めたアベノミクスで「企業業績の改善」→「投資の拡大・賃金の増加」→「消費の拡大」をサイクル上の各構成要素として最初の項目に戻る経済の好循環が日銀金融緩和による円安と株高で大企業の業績を改善させ、高額所得者の収入を増やしたが、目に見える程の賃上げと賃上げに応じた消費の拡大を実現させていないのだから、自律的な循環性を与えることができずに最初の項目止まりで終わる看板倒れとなっている。

 要するに大幅に賃金が上がることによって自律的な国民生活改革の性格を併せ持つことになる安倍政治の1丁目1番地であるアベノミクス経済改革が国民の生活の豊かさに繋がらがないままに頓挫している。いわば改革の意欲はあったものの、アベノミクス経済改革を成し遂げるだけの能力を持ち合わせていなかった。

 にも関わらず、「改革すべきことについては大胆に、政治を前に進めていきたい」と改革の意欲と成し遂げる能力があるかのようなことを口にする。

 自分自身が設定した最優先課題のアベノミクス経済改革が行き詰まっていながら、「改革」を口にするのは言うだけの改革に等しい。

 既に触れたように一つ一つの制度改正を成し遂げたとしても、全体として国民の暮らしに利便性と豊かさを与える形で世の中を前進させていかなければ、改革とは言えないからだ。

 アベノミクス経済改革の頓挫と伝えている2017年7月5日付「NHK NEWS WEB」記事がある。    

 記事は昨年度・平成28年度の国の一般会計の税収が前年度を8167億円余り減少の55兆4686億円となったということを主な内容としている。

 理由を幾つか挙げている。

 一般会計の税収として法人税が年度前半の円高の影響で企業収益が伸び悩んだことなどから前年度より約5000億円の減。所得税と消費税がそれぞれ約2000億円の減。

 企業活動が自律性を欠いているから、為替変動がそのまま企業業績に影響を与える。所得税と消費税合わせた各約2000億円の税収減は企業や個人の収入減と消費額の減少を示していることになって、アベノミクスの好循環が停止したままの状態になっていることを示している。

 記事が〈税収が前の年度を下回ったのは、リーマン・ショックの影響で景気が悪化した平成21年度以来7年ぶり〉と書いている。

 今回の税収減は2009年のリーマン・ショック時のような重大かつ深刻な外的要因は見当たらないから、殆どが円安から円高への振れが主原因となったのだろう。如何に他律性に頼った他力本願のアベノミクスかが分かる。

 記事は経済の専門家の発言を伝えている。

 宮前耕也SMBC日興証券シニアエコノミストアベノミクスが始まって以来、円安で企業収益を上げて、法人税収を増やしてきたが、円安をこれ以上進めることは難しく、中長期的に税収がどんどん増えていくことは考えづらい。

 これまでは、税収の増加を前提に経済成長と財政健全化を両立できてきたが、それが難しい局面になり、アベノミクスは岐路に立たされている。両立が難しくなれば、政権は今後、経済成長を優先して、財政健全化を犠牲にしかねない。

 これまでのような円安頼みの成長ではなく、痛みがあっても、構造改革を進めることで生産性を高めていくことが求められる」

 要するにアベノミクスは円安による企業収益の改善を起爆剤とした企業活動への転換とその転換を受けて円安に頼らない企業収益の形に持っていくことができず、最初から最後まで円安頼みのアベノミクス経済改革であり、企業活動だったことになる。

 と言うことは、安倍晋三という一国の首相としての経済政策能力は何ら関わっていなかった。

 だから、為替が円高に触れると、円高に応じたしっぺ返しをたちまち受けることになる。

 安倍政治の1丁目1番地のアベノミクス経済改革が円安頼みの上に目指した経済の好循環が頓挫したままの貧相な状況に陥っている。安倍晋三がいくら「改革だ」、「改革だ」と改革の意欲を見せ、改革を成し遂げる能力があるかのように見せかけたとしても、言うだけの改革で終わるのはアベノミクス経済改革そのものが示している。

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