安倍晋三都議選大敗原因の一つ:景気の実感なしにも関わらずアベノミクス好調宣伝の各統計に聞き飽きたこと

2017-07-03 12:01:50 | 政治

 安倍晋三の自民党都議選大敗は安倍晋三自身の森友学園国有地格安売却に於ける政治的関与疑惑、国家戦略特区を使った加計学園獣医学部新設に関わる政治的関与疑惑と、これらの疑惑に対して自分たちの方から積極的に説明責任を果たそうとする姿勢を取るのではなく、逆に不誠実な姿勢に終始したこと、国民の多くが反対しているにも関わらず新安保法制やテロ等準備罪の採決を強行した国民に対しての不誠実な姿勢、さらには自民党議員や閣僚の立場・役目を弁えない非常識で認識外れな言動が数多く見られたことが影響していることは明らかだろう。

 そしてもう一つ。国民の多くがアベノミクス景気を実感できていないことに反して野党議員との国会論戦や記者会見で景気に関わる好調な各統計を持ち出してアベノミクスが好調に推移しているかのように宣伝に相務めていることが既に耳にタコができて聞き飽き、うんざりしていることが原因しているように思えてならない。

 仏の顔も三度までである。

 国民の多くが知ってしまった実際の景気と乖離しているアベノミクスの現実を安倍晋三自身が気づかずにアベノミクス好調の宣伝に相務めているとしたら、相当に鈍感な話となるが、気づいていながら、そうしているのだとしたら、アベノミクスの現実を認めたくないことからの、あるいはアベノミクスの現実を覆い隠すための強気の言い繕い――偽装工作となる。

 安倍晋三が国会で野党の都合の悪い質問にはまともに答えない誤魔化しの姿勢を常套手段としていることからすると、どうも後者に思える。

 もし後者だとしたら、国民に対してこれ以上ない不誠実な姿勢となる。

 国民の多くがアベノミクス景気に実感が持てないでいることは第2次安倍政権が発足した12012年12月に始まったアベノミクス景気が1990年前後のバブル経済期を抜いて戦後3番目の長さになったと伝えている2017年4月6日付日経新聞電子版」《アベノミクス景気、戦後3位の52カ月 実感乏しい回復》記事が証明してくれる。    

 記事は国内要因として円安を受けた企業の収益増や公共事業の好調さを挙げている。海外要因として世界経済の金融危機からの回復と米国経済が2009年7月から長期の回復局面を迎えたこと、海外景気が比較的安定していたことを挙げている。

 要するに日本の我が安倍晋三のアベノミクス戦後3番目の最長景気の主原因は自律性を内部構造としているのではなく、他律性に依存した景気ということを表している。

 このことはアメリカの何らかの景気指数が悪化するか、何らかの政治的要因でアメリカの株価が下がると、日本の株価も下落、為替は円高に振れて、アメリカが逆の動きを取ってアメリカの株価が上がると、日本の株価も上がり、円安に振れる相関性が既に証明している。

 いわばアベノミクスは自律的勢いを持つに至っていない。このことがアベノミクスが好循環の軌道性を持ち得ない原因であると同時に実質賃金が満足に増えないことと個人消費が活発化しないことの原因なのだろう。

 記事はこのことを、〈これまでの回復は緩やかで「低温」だ。戦後最長の回復期だった2000年代の輸出は8割伸びたが、今回は2割増。設備投資も1割増と2000年代の伸びの半分だ。賃金の伸びは乏しく、個人消費は横ばい圏を脱しきれない。〉と解説している。

 アベノミクス公共事業の好調さは東日本大震災復興事業から始まった。土木関係の人員が被災地に集中、人手不足が起こり、人材確保のための賃上げ現象が起きた。経済の好循環を受けた積極的な賃上げではなく、止むを得ない消極的な賃上げであったために、全体的な賃金抑制の傾向は本質的には変わらなかった。

 結果、アベノミクスが好調に推移していることの宣伝に熱心な安倍晋三一人だけがアベノミクスの現実から遊離して浮き立つことになった。

 安倍晋三は6月30日の小金井市での都議選自民党候補応援演説でも、選挙戦最終日の7月1日のJR秋葉原駅前での同じく自民党候補応援演説でも、好調な統計を持ち出して、その好調さを以ってアベノミクスが好調に推移しているかのように宣伝に言葉の多くを費やしている。

 「我々は政権を取って4年間で185万人雇用をつくりました」

 「正規の雇用をマイナスからプラスに増やすことができました」

 「正規雇用が79万人増えたんです」

 「間違いなくこのように私たちの経済政策の果実は行き渡りつつあります」

 「みんなが仕事につけて、給料も上がってきた結果、今まで貧困ラインの下にいた方々もしっかりと、自分で所得を得ることができるようになった」

 もう耳にタコができる程に聞き飽きた、現実の景気に反映されていない例の如くのアベノミクス自画自賛である。二度消費税増税を延期し、公共投資事業に多額の国家予算をつぎ込みながら、景気に自律的な活動性を注ぎ込むことができなかった。

 消費税増税延期にも関わらずアベノミクスがこの程度の貧相さなのだから、もし消費税を上げていたなら、円安物価高のみならず消費税増税物価高を受けてアベノミクスは壊滅、安倍晋三は早々に退陣していたに違いない。

 秋葉原の都議選応援演説では国会論戦で頻繁に利用している民主党政権時代の景気動向を持ち出して、それをアベノミクスが如何に改善したかの例示にいつもの如くの展開で利用している。

 「経済。皆さん、民主党政権下を思い出していただきたい。どんなに頑張って、どんなに汗を流しても、なかなか仕事を守れない。『連鎖倒産』という言葉が日本中を覆っていた。学生さんたちはなかなか仕事を得ることができなかった」

 「われわれは185万人の雇用を作った。正規雇用はずっと減ってきた、しかし一昨年、マイナスだったこの正規雇用は8年ぶりにプラスに転じ、昨年も増えた。とうとう79万人も正規雇用は増えたんです。

 前政権(旧民主党政権)時代はマイナス55万人だった。マイナス55万人からプラス79万人に劇的に変えることができたんです。

 そして給料も賃金も上がっている。賃上げはこの4年連続、今世紀に入って最も高い水準で、賃上げはまさに成功しています」――

 既にお馴染みとなった発言光景でしかない。

 民主党政権時代の結果を出すことができなかった景気政策をダシに使って、それとの比較でアベノミクスの各景気指標が上向いていることの根拠にしているが、多くの国民が景気を実感できないでいる以上、各指標上昇の目安とし得ても、アベノミクス景気が現実のものとなっていない事実を打ち消す証明とはならない。

 第2次安倍政権発足から4年半経過している。いつまでの民主党政権下の景気動向と比較して、自分の景気政策の方が良い結果を出していると自慢してどうなるというのだろうか。

 安倍晋三がそのようになっていることはスポーツの世界記録で日本の記録が劣っているにも関わらず、日本の記録でトップのアスリートが2位のアスリートよりも自分の方の記録が優れていると誇るのに似ている。

 いわばアベノミクスという景気政策の結果自体を評価の対象としなければならないのにいつまでもそこに到達できずに民主党政権下の景気動向との比較でしかアベノミクスの評価ができない。

 比較で以ってアベノミクスの姿をよく見せるだけのためにいつまでも民主党政権をダシに使うことはもうやめた方がいい。

 比較でしか優秀さを証明できないのはその優秀さが比較の範囲内でとどまっているからで、個別の理由でその優秀さを自慢できる領域にまで達していないからだろう。

 その領域とは勿論、安倍晋三が謳った景気の好循環が十分に機能している場面を指すが、その場面を実現できていないから、結果的に比較法でアベノミクスの好調さを宣伝しなければならない。

 それがいつまで経っても現実世界に反映されず、都合の良い統計だけを使ってアベノミクスが好調に推移しているかのような宣伝に相務めているから、耳にタコができて聞き飽きることになる。

 国民はこのことにようやく気づいたのではないだろうか。気づいて、他の要因と共に都議選で自民党に鉄槌を与える一因とした。

 民主党政権の満足に結果を出すことができなかった景気政策をダシに比較法でアベノミクスの好調宣伝に利用することと併せて好調な景気指標を同じ目的に使って、多くの国民に景気の実感を与えることができていないアベノミクスの現実を覆い隠すための強気の言い繕い――偽装工作そのものであったとしたら、余りにも卑怯と言うことになり、もはや一国のトップリーダーを務める資格を失うことになるが、アベノミクスが現実の景気と乖離していることに気づかないままの同じ行為であるとしても、認識能力が余りにも鈍感ということになって、やはりトップリーダーとしての資格を失う。

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