第2次刺客選挙ボツ発in参院選?

2006-09-13 06:50:07 | Weblog

 2匹目のドジョウ狙いか
 
 安倍官房長官が9月11日の日本記者クラブ主催の公開討論会で、自民党の新総裁に選ばれた場合、来夏の参議院選挙の公認候補者を差し替えることもあり得るという考えを示したことについて、武部幹事長が理解を示したのに対し、青木参議院議員会長は疑問を呈したといったことを、昨日9月12日(06年)の午後のNHKニュースが流していた。

 武部幹事長「選挙区で、事前に負けることが確実だと思われる候補者がいれば、それを差し替えてでも当選を期すのは当然のことだ」

 青木参議院議員会長「参議院選挙の選挙区の候補者は各都道府県連が『勝てる候補』として、選んだ人だ」

 総裁選挙対立候補の谷垣財務大臣「公認候補を差し替えた例がない訳ではないが、公認は地元が決めるもので、デリケートな問題だ」

 対する同じ対立候補の麻生外務大臣「余程の理由があるならともかく、公認候補を選挙まで1年を切った段階で差し替えるのは、なかなか難しい。そんなに簡単な話ではない」

 肯定派は武部幹事長のみで、それ以外は反対、もしくは疑義派である。

参院選の結果が安倍内閣の死命を制し、短期か長期かを占う。総理総裁の夢を叶えても、参院選で敗北して短期政権で終わったなら、女性スキャンダルで2ヶ月しか持たなかった宇野内閣は別格として、歴代短期政権何位の記録を歴史として残すだけのことである。背に腹は変えられない、手段を選んではいられない、奇麗事を言ってはいられない、後がない、なり振り構ってはいられない。人が言っていることなどどうでもいい、何が何でも参院選に勝つこと――それが自分が自分に課した唯一絶対の至上命令となっているだろうことは間違いない。

 だからこそ、消費税増税問題を曖昧にしている。貧乏人だけが痛みを伴う消費税増税如きで総理大臣の地位を失ってたまるかと思い決めているかどうかは分からない。

 総裁選では楽勝境地の安倍氏にしても、来夏の参院選に思いを馳せると窮地に立たされる思いに駆られて、昨年の郵政民営化選挙で見せた小泉首相の見事に成功を収めた手法に縋りつきたくなったのでないのか。そう2匹目のドジョウを期待して。2匹目が失望成分と相場が決まっていながら。

 郵政民営化法案が参議院で否決されると衆議院の解散に打って出て、総選挙へと持っていき、法案に反対した議員を除名し、除名議員が非公認で立候補すると対立候補として刺客を放って、多くの選挙区で勝利を収めた。勝利はマスコミの力添えが何といっても大きかった。刺客候補の選挙区に各局のテレビカメラが集中して自分で勝手に大騒ぎするような熱の入れようで選挙戦を異様なまでに盛り上げ、そのような加熱した報道が選挙を過熱させ、それがまた報道を過熱させる循環をもたらし、一般の選挙区にまで波及して選挙に対する有権者の意識を自民党候補寄りに刺激して歴史的な自民党の大勝利となった。勿論小泉効果もあった。

 マスコミの取材・カメラが刺客候補に殺到したのは、刺客候補が著名人を含んでいたこと。今は見る影もなくなってしまったが、当時は飛び鳥を落とす勢いだったIT界の寵児東大卒の若きホリエモンまでゲットして、刺客のうちに加えたのである。惜しくも落選はしたが、選挙を盛り上げる広告塔としては金額には代え難い計り知れないコマーシャル効果があった。自分の選挙区の候補者が誰なのか知らない有権者がいるのに、マスコミのお陰で関係ない遠隔地の選挙区で誰と誰が戦っているのかまで知ることとなり、否応もなしに関心を高めざるを得なかったのである。

 著名人ではなくても女性でまだ若くて美人を立てたこと。女性忍者である〝くノ一〟とまで命名して面白おかしく騒ぎ立てた。政治に素人であろうと何であろうと構わない。票が目的である。票を釣るためのエサ。そのエサに最初にマスコミが飛びついてテレビ受像機を通して日本全国にエサをばら撒く。バラ撒かれたエサに今度は有権者が飛びつく。あくまでも自民党候補のエサである。有権者の関心はエサに対するのと同様に自分の選挙区の自民党候補に傾く――狙ってしたことなのか、予期しなかった結果なのか、磁石の効果のように自民党候補を有権者に惹きつけていった。

 安倍晋三が夢よ再びと郵政選挙の再現を狙ったとしても不思議ではない。候補者選考を小泉首相の手法をそっくりと踏襲して官邸主導とする。何といっても安部晋三自身が小泉チルドレン第1号なのである。そっくりに似たとしても当然の結果であろう。

 マスコミは今から手ぐすね引いて待ってるのはないか。差し替えられることとなる候補者は武部幹事長の「選挙区で事前に負けることが確実だと思われる候補者」に当たることとなり、失礼な話となるが、悔しがって意地でもと非公認で立候補すれば、当然除名と言うことになりかねないし、その騒動と袖にされて悲憤慷慨する姿を報道するだけでも価値が倍増するというのに、若い美人の刺客と野党候補の三つ巴の選挙戦ともなれば、報道のためのお膳立てとしては最高のものとなる。

 差し替えられた候補が非公認で戦わずにすごすごと舞台から降りたとしても、ピンチヒッター候補は野党候補に対する刺客であることに変りはないから、報道価値が減るわけではない。

 読売新聞のインターネット記事(「参院選候補、差し替えも検討…安倍氏が示唆」2006年9月12日0時31分)に次のようなくだりがあった

 「安倍氏は党幹事長として前回2004年参院選を指揮したが、候補者の半数以上は安倍氏の幹事長就任前に決まっていた。選挙結果は、自民党の獲得議席数は49で、民主党の50議席に及ばなかった。安倍氏は、総裁として迎える来年夏の参院選では、候補者選定の段階から関与したいという思いがあるようだ。

 だが、参院選の公認作業は、各都道府県連や支持団体が提出する公認申請を党本部が追認する形で決定している。公認を取り消した場合、県連や支持団体の強い反発が予想される。安倍氏周辺も『県連を巻き込んで大騒動になる。差し替えは難しいのではないか』と不安を漏らしている」

 しかし小泉首相は前回総選挙では強い指導力は発揮して、官邸主導を貫いた。方法が例え常識や通念、一般ルールに反していたとしても、結果がよければ、すべてを補う。いわば結果が絶対となって、差し替える場合は、結果を出すための刺客が当然のこととして絶対条件となる。そのためには前回総選挙のようにマスコミの飛び入りの協力を欠かすことはできない。勢いマスコミが飛びつくエサとなる美人・著名人を如何に用意するかが勝敗の分岐点となる。いよいよ2匹目のドジョウを狙って、第2次刺客選挙ボツ発ということになるのだろうか。

 政治家はホリエモンのことを「カネで何でもできるといったカネ万能主義を広めた」とその無節操を批判したが、自分たちは選挙に勝てさえすればいいという無節操を犯しているのだから、似た者同士、同じ穴のムジナ、両者を同列に置くべきを、何ら省みることはなく済ませている。勝てば官軍、結果がすべてを補うからだろう。ホリエモンは結果を出せなかった。尤も決定したわけではない。例え不本意にも負け組に加わることになったとしても、安倍晋三は負け組にも愛の手を差しのべて再チャレンジの機会を与える再チャレンジ政策を掲げている。マスコミ的に言えば、再チャレンジの機会に再び刺客候補の一人に加えたら、サイコロの目がどっちに出ようが、選挙戦を盛り上げ、世の中を賑わすことだろうということだけは確実に言える。

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