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ブロック・レスナーについて 6

2005年10月16日 | スポーツ
~ヒールターン~
復帰したカート・アングルにベルトを奪い返されたとき、彼の中の悪魔が目覚めた。
悪の権化WWEオーナーのビンス・マクマホン(本当にオーナー。オーナーで60歳だが試合に出る。悪巧みでベビーレスラーを苦しめ、結局すべてを粉砕されてボッコボコにされるのが90年代WWEの醍醐味だった)と結託し、汚い手段でベルトを獲得。パワーの化身だったレスナーはいつしか、手段を選ばない卑劣漢として花咲かせていった。
絶対的不利な状況をパワーではね返す正義のヒーロー的魅力を失い、代わりにレスラーとしての深み、ヒールとしての憎たらしさを備えた彼は、着実にトップレスラーへの階段を上がっている……はずだった。

~退団~
04年3月。レスナーは退団し、幼い頃からの夢だったNFL(アメフト)挑戦を決意する。
その最後の試合は悲惨だった。対戦相手はゴールドバーグ。(僕のHNの元ネタ)
"最強"の名を賭けた空前絶後の名勝負になるはずだった。なってもおかしくなかった。
しかし彼らを待ち受けていたのは、全てを否定する観客のブーイングだった。
レスナーもゴールドバーグも、これがWWEでの最後の試合。WWEを去る二人が"最強"の座を争うことを、ファンは決して許さなかった。
レスナーが、ゴーバーがどれだけ力を尽くそうとも、ブーイングは鳴りやまなかった。ただの一瞬も途絶えることなく「裏切り者」の罵声はつづいた。全ての技を、全ての受けを、全てのアピールを、二人がリングに立つことすらも、観衆は拒絶してみせた。試合はゴーバーのピンフォール勝ち。なんのまぎれも介入もないクリーンな試合だったが、そこにはなんらの意味もありはしなかった。
夢を追うために団体を去ったレスナーに罪はない。最強のまま団体を去ったゴーバーにも、全身全霊で試合を否定した観客にも罪はない。

後にはただ、虚しさだけが残った。

~その後~
レスナーはNFLに挑戦したが、未知の壁は分厚く、デビューはかなわなかった。
プロレスの道に戻ることになった彼に、WWEは10億とも噂される破格の契約金を提示した。
経営不振で大量解雇をくり返すWWEは、かつての「怪物」の復帰を待望した。
ファンも輝きを失いつつあるWWEに「怪物」の記憶が甦ることを熱望した。
しかしレスナーは話を蹴り、日本に渡った。
必殺技にして彼の代名詞、最も強い竜巻を表す「F5」を「バーディクト(結審)」と改め、日本上陸戦でベルトをつかんだ。
はたしてレスナーの胸に去来するものはなんなのか。レスナーは日本でなにをしようとしているのか。WWEに戻る日は来るのか。
答えは解らない。だが、レスナーがリングに戻ったことを、僕は心から喜びたい。
しかしひとつだけ心配なことがある。
来年1月4日。初の防衛戦。
レスナーと戦う藤田は、死んじゃわないだろうか。
いや、マジで。