~概要~
何者かの手により、ビルから突き落とされた天才検事・芳川樹。
肉体を現世に残し、意識だけが冥界へと送られた彼は、閻魔大王ヤマ・ラージャにの依頼で、地上の全ての出来事が書かれた「アカシャ」を読み未解決事件を解き明かすことに。
原作者はいずれ劣らぬ本格ミステリ作家7人――綾辻行人(もちろん共作のみ)、有栖川有栖(綾辻との共作のみ)、我孫子武丸(どっちが本業だ)、大山誠一郎、(もっと働け)竹本健治、黒田研二、そしてまさかの麻耶雄嵩。
~感想~
僕のようなうるさいマニアでも納得する人選の本格作家が一堂に会したミステリゲーム。
この手のゲームでは類を見ないほど「ガチ」なシステムで、コマンド総当たりでの解決はまず無理。真相に全く見当がつかなくても推理を進めるごとに、露骨なヒントをもらうことはできるのだが、一度でもヒントを見た時点で、最高評価は得られなくなるドSっぷり。
その難易度と来たらもう「お前が探偵役をやれ」と言わんばかりの無茶さ加減で、おそらく三話目以降をヒント無しで解けるプレイヤーは全体の10%以下だろう。
かく言う僕も二話目のトリックまでは自力で解けたのだが、どの手掛かりを組み合わせれば正解が出てくるのかわからない始末で、結局のところコマンド総当たり状態に。三話目以降は推理の取っ掛かりすら見つからずもはやお手上げとなった。ガチすぎる……。
だがそれは欠点でもなんでもなく、ガチな推理を楽しみたい奇特なマニアにとっては格好の作品であり、収録作は今のところ刊行されていないようなので、本格マニアはぜひぜひ挑んでいただきたい。
難点は「ダンガンロンパ」の後だと一層きつい主人公と女探偵の棒読みっぷりくらいかな……。
各作品の簡単な感想を以下に。
「指さす死体」作者不詳 ☆ 1
これは練習問題。迷うことなく解けるだろう。逆に言うとこれが解けない人は買ってはいけない。
「盗まれたフィギュア」我孫子武丸 ★★☆ 5
そういえば我孫子が正統派のミステリを書いたのってずいぶん久しぶりのことではなかろうか。
さすがはゲームやマンガの原作を多く手掛け、もはやミステリ作家と原作者のどちらが本業かわからないことになっている氏だけはあり(?)冒頭を飾るにふさわしい、ほどほどに難しくほどほどに悩める入門編にしあがっている。
「明かりの消えた部屋で」竹本健治 ★★★☆ 7
一目で竹本健治とわかる文体。(※褒め言葉ではない)なかなかのバカトリックで、どうにか僕でも真相にたどり着くことは可能だった。単純なトリックをうまいこと不可能状況に仕立て上げた好編。
「雪降る女子寮にて」麻耶雄嵩 ★★★★★ 10
これは大傑作ではなかろうか。普通に短編集に載っていたら「よくできてるね」程度で片付けられそうだが、推理ゲームとして隅から隅まで目を通し、さんざっぱら頭を悩ませてから答えを見せられると、一から十まで論理でひも解ける、一分の隙も無駄もない生粋の本格ミステリだと味わえる。
また(超ネタバレ→)名指しされた人物が死んでいる というダイイング・メッセージのひねくれ方が非常に麻耶作品らしく、その一点からすいすいと謎が解けていく様が実にお見事。ゲーム原作として狙って書いたわけではないだろうが、このゲームシステムにぴったりのすばらしい作品である。
これまで密室、叙述トリック、交換殺人などミステリの定番ネタを、ひとつ視点をずらすことで誰も見たことのないネタに変えてみせた麻耶雄嵩による、ダイイング・メッセージの変奏曲として挙げられるだろう。
「切断された五つの首」大山誠一郎 ★★★ 6
参加作家の中で不覚にも僕が唯一、一作も読んでいない作家がこの人。ガッチガチの本格作家というイメージを抱いていたのだが、開けてびっくりバカミステリ。
西澤保彦はバラバラ殺人ばかりのデビュー作「解体諸因」を「こんな理由で死体をバラバラにするヤツがいるか!」と批判されたらしいが、その批判がそっくりそのまま当てはまる。
そのため意表だけはついているのだが、真相に全く納得がいかない。しかも真相を導き出すためのキーワードの組み合わせが、ものすごく理不尽なことになっており、自力で解決できる人がいるとは思えないのだが……。
麻耶雄嵩の完成度の高さと比べるとあまりにも落差が大きすぎる。これを最後に持ってくるのはいかがなものか。バカミスとしては十分アリなのだが推理ゲームとしては無しだろ……。
「亡霊ハムレット」黒田研二
は、シーズン2を買うか絶賛個人情報流出中のPSSからダウンロードしない限り解決編に進めないという親切設計なので未読。
シーズン2はそのうち買う予定。
総合評価:★★★ 6
何者かの手により、ビルから突き落とされた天才検事・芳川樹。
肉体を現世に残し、意識だけが冥界へと送られた彼は、閻魔大王ヤマ・ラージャにの依頼で、地上の全ての出来事が書かれた「アカシャ」を読み未解決事件を解き明かすことに。
原作者はいずれ劣らぬ本格ミステリ作家7人――綾辻行人(もちろん共作のみ)、有栖川有栖(綾辻との共作のみ)、我孫子武丸(どっちが本業だ)、大山誠一郎、(もっと働け)竹本健治、黒田研二、そしてまさかの麻耶雄嵩。
~感想~
僕のようなうるさいマニアでも納得する人選の本格作家が一堂に会したミステリゲーム。
この手のゲームでは類を見ないほど「ガチ」なシステムで、コマンド総当たりでの解決はまず無理。真相に全く見当がつかなくても推理を進めるごとに、露骨なヒントをもらうことはできるのだが、一度でもヒントを見た時点で、最高評価は得られなくなるドSっぷり。
その難易度と来たらもう「お前が探偵役をやれ」と言わんばかりの無茶さ加減で、おそらく三話目以降をヒント無しで解けるプレイヤーは全体の10%以下だろう。
かく言う僕も二話目のトリックまでは自力で解けたのだが、どの手掛かりを組み合わせれば正解が出てくるのかわからない始末で、結局のところコマンド総当たり状態に。三話目以降は推理の取っ掛かりすら見つからずもはやお手上げとなった。ガチすぎる……。
だがそれは欠点でもなんでもなく、ガチな推理を楽しみたい奇特なマニアにとっては格好の作品であり、収録作は今のところ刊行されていないようなので、本格マニアはぜひぜひ挑んでいただきたい。
難点は「ダンガンロンパ」の後だと一層きつい主人公と女探偵の棒読みっぷりくらいかな……。
各作品の簡単な感想を以下に。
「指さす死体」作者不詳 ☆ 1
これは練習問題。迷うことなく解けるだろう。逆に言うとこれが解けない人は買ってはいけない。
「盗まれたフィギュア」我孫子武丸 ★★☆ 5
そういえば我孫子が正統派のミステリを書いたのってずいぶん久しぶりのことではなかろうか。
さすがはゲームやマンガの原作を多く手掛け、もはやミステリ作家と原作者のどちらが本業かわからないことになっている氏だけはあり(?)冒頭を飾るにふさわしい、ほどほどに難しくほどほどに悩める入門編にしあがっている。
「明かりの消えた部屋で」竹本健治 ★★★☆ 7
一目で竹本健治とわかる文体。(※褒め言葉ではない)なかなかのバカトリックで、どうにか僕でも真相にたどり着くことは可能だった。単純なトリックをうまいこと不可能状況に仕立て上げた好編。
「雪降る女子寮にて」麻耶雄嵩 ★★★★★ 10
これは大傑作ではなかろうか。普通に短編集に載っていたら「よくできてるね」程度で片付けられそうだが、推理ゲームとして隅から隅まで目を通し、さんざっぱら頭を悩ませてから答えを見せられると、一から十まで論理でひも解ける、一分の隙も無駄もない生粋の本格ミステリだと味わえる。
また(超ネタバレ→)名指しされた人物が死んでいる というダイイング・メッセージのひねくれ方が非常に麻耶作品らしく、その一点からすいすいと謎が解けていく様が実にお見事。ゲーム原作として狙って書いたわけではないだろうが、このゲームシステムにぴったりのすばらしい作品である。
これまで密室、叙述トリック、交換殺人などミステリの定番ネタを、ひとつ視点をずらすことで誰も見たことのないネタに変えてみせた麻耶雄嵩による、ダイイング・メッセージの変奏曲として挙げられるだろう。
「切断された五つの首」大山誠一郎 ★★★ 6
参加作家の中で不覚にも僕が唯一、一作も読んでいない作家がこの人。ガッチガチの本格作家というイメージを抱いていたのだが、開けてびっくりバカミステリ。
西澤保彦はバラバラ殺人ばかりのデビュー作「解体諸因」を「こんな理由で死体をバラバラにするヤツがいるか!」と批判されたらしいが、その批判がそっくりそのまま当てはまる。
そのため意表だけはついているのだが、真相に全く納得がいかない。しかも真相を導き出すためのキーワードの組み合わせが、ものすごく理不尽なことになっており、自力で解決できる人がいるとは思えないのだが……。
麻耶雄嵩の完成度の高さと比べるとあまりにも落差が大きすぎる。これを最後に持ってくるのはいかがなものか。バカミスとしては十分アリなのだが推理ゲームとしては無しだろ……。
「亡霊ハムレット」黒田研二
は、シーズン2を買うか絶賛個人情報流出中のPSSからダウンロードしない限り解決編に進めないという親切設計なので未読。
シーズン2はそのうち買う予定。
総合評価:★★★ 6