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ゲーム感想―『トリックロジック シーズン1』

2011年06月30日 | ゲーム
~概要~
何者かの手により、ビルから突き落とされた天才検事・芳川樹。
肉体を現世に残し、意識だけが冥界へと送られた彼は、閻魔大王ヤマ・ラージャにの依頼で、地上の全ての出来事が書かれた「アカシャ」を読み未解決事件を解き明かすことに。

原作者はいずれ劣らぬ本格ミステリ作家7人――綾辻行人(もちろん共作のみ)、有栖川有栖(綾辻との共作のみ)、我孫子武丸(どっちが本業だ)、大山誠一郎、(もっと働け)竹本健治、黒田研二、そしてまさかの麻耶雄嵩。


~感想~
僕のようなうるさいマニアでも納得する人選の本格作家が一堂に会したミステリゲーム。
この手のゲームでは類を見ないほど「ガチ」なシステムで、コマンド総当たりでの解決はまず無理。真相に全く見当がつかなくても推理を進めるごとに、露骨なヒントをもらうことはできるのだが、一度でもヒントを見た時点で、最高評価は得られなくなるドSっぷり。
その難易度と来たらもう「お前が探偵役をやれ」と言わんばかりの無茶さ加減で、おそらく三話目以降をヒント無しで解けるプレイヤーは全体の10%以下だろう。
かく言う僕も二話目のトリックまでは自力で解けたのだが、どの手掛かりを組み合わせれば正解が出てくるのかわからない始末で、結局のところコマンド総当たり状態に。三話目以降は推理の取っ掛かりすら見つからずもはやお手上げとなった。ガチすぎる……。
だがそれは欠点でもなんでもなく、ガチな推理を楽しみたい奇特なマニアにとっては格好の作品であり、収録作は今のところ刊行されていないようなので、本格マニアはぜひぜひ挑んでいただきたい。
難点は「ダンガンロンパ」の後だと一層きつい主人公と女探偵の棒読みっぷりくらいかな……。
各作品の簡単な感想を以下に。


「指さす死体」作者不詳 ☆ 1
これは練習問題。迷うことなく解けるだろう。逆に言うとこれが解けない人は買ってはいけない。


「盗まれたフィギュア」我孫子武丸 ★★☆ 5
そういえば我孫子が正統派のミステリを書いたのってずいぶん久しぶりのことではなかろうか。
さすがはゲームやマンガの原作を多く手掛け、もはやミステリ作家と原作者のどちらが本業かわからないことになっている氏だけはあり(?)冒頭を飾るにふさわしい、ほどほどに難しくほどほどに悩める入門編にしあがっている。


「明かりの消えた部屋で」竹本健治 ★★★☆ 7
一目で竹本健治とわかる文体。(※褒め言葉ではない)なかなかのバカトリックで、どうにか僕でも真相にたどり着くことは可能だった。単純なトリックをうまいこと不可能状況に仕立て上げた好編。


「雪降る女子寮にて」麻耶雄嵩 ★★★★★ 10
これは大傑作ではなかろうか。普通に短編集に載っていたら「よくできてるね」程度で片付けられそうだが、推理ゲームとして隅から隅まで目を通し、さんざっぱら頭を悩ませてから答えを見せられると、一から十まで論理でひも解ける、一分の隙も無駄もない生粋の本格ミステリだと味わえる。
また(超ネタバレ→)名指しされた人物が死んでいる というダイイング・メッセージのひねくれ方が非常に麻耶作品らしく、その一点からすいすいと謎が解けていく様が実にお見事。ゲーム原作として狙って書いたわけではないだろうが、このゲームシステムにぴったりのすばらしい作品である。
これまで密室、叙述トリック、交換殺人などミステリの定番ネタを、ひとつ視点をずらすことで誰も見たことのないネタに変えてみせた麻耶雄嵩による、ダイイング・メッセージの変奏曲として挙げられるだろう。


「切断された五つの首」大山誠一郎 ★★★ 6
参加作家の中で不覚にも僕が唯一、一作も読んでいない作家がこの人。ガッチガチの本格作家というイメージを抱いていたのだが、開けてびっくりバカミステリ。
西澤保彦はバラバラ殺人ばかりのデビュー作「解体諸因」を「こんな理由で死体をバラバラにするヤツがいるか!」と批判されたらしいが、その批判がそっくりそのまま当てはまる。
そのため意表だけはついているのだが、真相に全く納得がいかない。しかも真相を導き出すためのキーワードの組み合わせが、ものすごく理不尽なことになっており、自力で解決できる人がいるとは思えないのだが……。
麻耶雄嵩の完成度の高さと比べるとあまりにも落差が大きすぎる。これを最後に持ってくるのはいかがなものか。バカミスとしては十分アリなのだが推理ゲームとしては無しだろ……。


「亡霊ハムレット」黒田研二
は、シーズン2を買うか絶賛個人情報流出中のPSSからダウンロードしない限り解決編に進めないという親切設計なので未読。
シーズン2はそのうち買う予定。


総合評価:★★★ 6

ゲーム感想―『ダンガンロンパ』

2011年06月25日 | ゲーム
~概要~
推理アドベンチャー×アクション=「ハイスピード推理アクション」ゲーム。
超高校級の生徒達が集う私立希望ヶ峰学園。ある日謎の人物「モノクマ」の登場により学園は、恐怖と絶望のるつぼと化してしまった。
次々に起こる殺人事件の真相を解明すべく、様々な証言・証拠を収集する「捜査パート」。
そして得られた情報をピストルの弾丸のようにトリガーにセットし、誰が犯人なのかを追及する「学級裁判パート」。
会話の中で発生する矛盾点を見つけて、情報の弾丸である「言弾(コトダマ)」を発射し、矛盾を撃ち抜き論破しろ!

~感想~
えくすとりいむう~~

推理ではなく議論、謎解きではなく論破に重点を置いた、異色のアクション・ミステリ。
あくまでもアクションゲームのため、露骨なヒントが多く謎解き自体は簡単。だが密室や死体移動トリックなど本格ミステリ的な意匠がかなりよくできている。そのまま謎解きゲームの傑作シリーズ「逆転裁判」の事件として転用しても遜色ない出来で、論理性もなかなかのもの。
登場人物は一人残らずキャラが立ち、日常パートも議論パートも軽快なやりとりが繰り広げられるのだが、特筆すべきは声優たちの熱演ぶり。
本作を一躍有名にした、黒幕役の大山のぶ代御大が想定以上にドラえもん丸出しでゲスいセリフをまくし立てるのを筆頭に、気弱な主人公のシンジ君、嫌味なライバル役のカヲル君、暴走族の総長にゾロ、だから起用されたのかと納得のあの人、収録後に「やりすぎた」と述懐したあの人や、まさに八面六臂の怪演をしたあの人など、僕ですら名前を知っているほどの有名声優たちが、学級裁判パートはほぼフルボイスで、ただでさえ個性的なキャラたちを一層際立たせる。ここまで「スーパーロボット大戦」とは別の意味で声優を活かしたゲームは初めてではないだろうか。
また謎解きは見え見えだが、誰が生き残り、誰が犯人になるかの予想はことごとく外れることだろう。難易度的に詰まるところはまずないので、ネタバレを避けるためにも攻略サイトなどは見ずにプレイすることをおすすめする。
ミステリファンはもちろんのこと、声優ファン(どうしてもネタバレになるので伏字にするが、沢城みゆきのファンなら必聴!)、大山のぶ代が人生初の悪役に挑戦というそれ自体がもう「事件」になっている配役に注目した方も、少しでも興味があればぜひ手に取っていただきたい。


評価:★★★★☆ 9

6月の新刊情報 ※6/21更新

2011年06月21日 | 発売予定
2日 光文社
大沢在昌 新宿鮫X 絆回廊

6日 講談社ノベルス
高田崇史 毒草師 白蛇の洗礼
篠田真由美 魔女の死んだ家
本格ミステリ作家クラブ ベスト本格ミステリ2011

6日 文藝春秋
東野圭吾 真夏の方程式
※ガリレオシリーズ長編

7日 南雲堂
門前典之 灰王家の怪人

10日 文春文庫
辻村深月 太陽の坐る場所 ★★☆ 5
※痛いキャラが目白押しの痛さの饗宴。

有栖川有栖 火村英生に捧げる犯罪

11日 創元推理文庫
北山猛邦 踊るジョーカー

14日 光文社文庫
我孫子武丸 警視庁特捜班ドットジェイピー

15日 講談社文庫
折原一 天井裏の散歩者<幸福荘殺人日記(一)> ★★ 4
※あいかわらずの新装版商法。リメイクするほどの作品だろうか。

大沢在昌 暗黒旅人
汀こるもの まごころを、君に THANATOS

17日 朝日ノベルズ
石持浅海 リスの窒息

21日 創元推理文庫
都筑道夫著 宇宙大密室

23日 角川文庫
柳広司 ジョーカー・ゲーム ★☆ 3
※08年このミス2位、文春3位。個人的には楽しめず。

恩田陸 チョコレートコスモス

25日 中公文庫
今邑彩 繭の密室

29日 創元推理文庫
高城高 函館水上警察
※09年このミス12位

山口芳宏 蒼志馬博士の不可思議な犯罪



自力で調べましたので抜けが多々あるかと思われます。