2010年5月2日(日)
「資本家のウッドストック」と呼ばれるウォーレン・バッフェット率いるバークシャー・ハサウェー社の年次株主総会が4万人の参加者を集めて、恒例のごとく土曜日にネブラスカ州オマハで開催された。
注目の「オマハの預言者」の発言を、The Wall Street JournalとThe New York Timesが電子版で速報している。発言の要点は二つに集約される。
まず、同社の本年第1四半期の業績が、昨年同期が1500億円の赤字から、3600億円の黒字に反転上昇したこと。「これはとりもなおさず世界経済が2009年の破綻以来始めて(significant signs of recovery for the first time)拡大基調に転じたことを示している」と自社業績と景気回復を結びつけたことである。
そして、注目の5000億円の投資先でありSECから詐欺容疑で民事提訴されているゴールドマン・サックスへの今後の方針であるが、同社への強い支持を表明し(the highest-profile defender of Goldman Sachs)、そのCEOである Lloyd C. Blankfein氏の手腕を絶賛し、返す刀で、取引で損した投資家を「だまされるほうが悪い」といわんばかりに罵倒した。
しかし、集まった大聴衆の、この「投資の神様」のゴールドマン礼賛に対しては、同氏のほかの発言に対して示した熱狂はなく、しらけたもの(tepid)ものであったとThe Wall Street Journalが伝えている。同氏のゴールドマンへの支持と礼賛に対して、聴衆は沈黙を持って応じた(His comments on Goldman were largely met with silence.)ことは、バッフェット神話の変調である。
さらに同紙は、「これまであれほど、投資家として「倫理性」にこだわって来たバッフェット氏が、手放しでゴールドマン擁護に回ったことは、非常に大きな驚きで受け止められている」との声を伝えている。
オマハに生まれ育ち、アメリカンドリームの象徴として尊敬を集めてきた同氏は、「ウォールストリートの銀行屋の、人の懐に手を突っ込み、自分さえ良ければよいというやり方(the aggressive, self-serving tactics of Wall Street's banking elite.)を非難してきた」のにというわけである。
さらには、変化が起こっている。
バッフェット氏の長年の盟友であるCharlie Munger副会長は、今週WSJに、「ゴールドマンは社会的に望ましくない行動があった」と語っていたことを翻して、壇上で「SECの提訴には反対である」と、バッフェット氏に同調したものの、壇上での二人のやり取りでは、「私は、ゴールドマンが違法行為すれすれのところまで行っていたと思っているよ。あなたが考えているよりはね(closer to the edge of suspect behavior)」とバッフェット氏とは見解が違うことも明らかにした。
バッフェット氏は、「SECが訴因としたゴールドマンの違法行為は証明されていない」との立場を取り、メディア報道が過大に取り上げていることが問題であると批判したが、同時に従来のバッフェット氏らしからぬ、「カネ」礼賛発言も出てきた。
「われわれはSEC訴追で得したのだよ。今のゴールドマンは5000億円くらいいつでも返せるのだから。10%の利払いという契約だから、年間500億円、1秒間に15ドル儲かるという勘定になっておる。チック、タック15ドルずつじゃよ。ゴールドマンにとって、信用維持のためにわれわれが投資家として残っていることがいま最も必要なんだから、返したくても返せないという寸法だ」
今バッフェット氏は、議会に掛けられているいわゆる「オバマ金融改革法案」の中のデリバティブ規制の骨抜きのために、ロビー活動に忙しいとThe New York Timesが論評している。
もし現行法案どおりであると、デリバティブ取引のためには担保を積み増さねばならなくなるからである。「いまの見通しだと一銭たりとも(“put up a dime”)だす必要はないだろう。よしんばそうなっても、問題はないけれど」と壇上から自信を示したと記事を結んでいる。
バッフェット氏は「恩義」を大切にする人でもある。ゴールドマンは50年にわたり同氏を支えてきた。そして5000億の資金導入には10%とという破格の条件で儲けさせてくれた。これが、バッフェット氏のゴールドマンへの無条件支持という「宗旨替え」の裏にあるようだ。
「資本家のウッドストック」と呼ばれるウォーレン・バッフェット率いるバークシャー・ハサウェー社の年次株主総会が4万人の参加者を集めて、恒例のごとく土曜日にネブラスカ州オマハで開催された。
注目の「オマハの預言者」の発言を、The Wall Street JournalとThe New York Timesが電子版で速報している。発言の要点は二つに集約される。
まず、同社の本年第1四半期の業績が、昨年同期が1500億円の赤字から、3600億円の黒字に反転上昇したこと。「これはとりもなおさず世界経済が2009年の破綻以来始めて(significant signs of recovery for the first time)拡大基調に転じたことを示している」と自社業績と景気回復を結びつけたことである。
そして、注目の5000億円の投資先でありSECから詐欺容疑で民事提訴されているゴールドマン・サックスへの今後の方針であるが、同社への強い支持を表明し(the highest-profile defender of Goldman Sachs)、そのCEOである Lloyd C. Blankfein氏の手腕を絶賛し、返す刀で、取引で損した投資家を「だまされるほうが悪い」といわんばかりに罵倒した。
しかし、集まった大聴衆の、この「投資の神様」のゴールドマン礼賛に対しては、同氏のほかの発言に対して示した熱狂はなく、しらけたもの(tepid)ものであったとThe Wall Street Journalが伝えている。同氏のゴールドマンへの支持と礼賛に対して、聴衆は沈黙を持って応じた(His comments on Goldman were largely met with silence.)ことは、バッフェット神話の変調である。
さらに同紙は、「これまであれほど、投資家として「倫理性」にこだわって来たバッフェット氏が、手放しでゴールドマン擁護に回ったことは、非常に大きな驚きで受け止められている」との声を伝えている。
オマハに生まれ育ち、アメリカンドリームの象徴として尊敬を集めてきた同氏は、「ウォールストリートの銀行屋の、人の懐に手を突っ込み、自分さえ良ければよいというやり方(the aggressive, self-serving tactics of Wall Street's banking elite.)を非難してきた」のにというわけである。
さらには、変化が起こっている。
バッフェット氏の長年の盟友であるCharlie Munger副会長は、今週WSJに、「ゴールドマンは社会的に望ましくない行動があった」と語っていたことを翻して、壇上で「SECの提訴には反対である」と、バッフェット氏に同調したものの、壇上での二人のやり取りでは、「私は、ゴールドマンが違法行為すれすれのところまで行っていたと思っているよ。あなたが考えているよりはね(closer to the edge of suspect behavior)」とバッフェット氏とは見解が違うことも明らかにした。
バッフェット氏は、「SECが訴因としたゴールドマンの違法行為は証明されていない」との立場を取り、メディア報道が過大に取り上げていることが問題であると批判したが、同時に従来のバッフェット氏らしからぬ、「カネ」礼賛発言も出てきた。
「われわれはSEC訴追で得したのだよ。今のゴールドマンは5000億円くらいいつでも返せるのだから。10%の利払いという契約だから、年間500億円、1秒間に15ドル儲かるという勘定になっておる。チック、タック15ドルずつじゃよ。ゴールドマンにとって、信用維持のためにわれわれが投資家として残っていることがいま最も必要なんだから、返したくても返せないという寸法だ」
今バッフェット氏は、議会に掛けられているいわゆる「オバマ金融改革法案」の中のデリバティブ規制の骨抜きのために、ロビー活動に忙しいとThe New York Timesが論評している。
もし現行法案どおりであると、デリバティブ取引のためには担保を積み増さねばならなくなるからである。「いまの見通しだと一銭たりとも(“put up a dime”)だす必要はないだろう。よしんばそうなっても、問題はないけれど」と壇上から自信を示したと記事を結んでいる。
バッフェット氏は「恩義」を大切にする人でもある。ゴールドマンは50年にわたり同氏を支えてきた。そして5000億の資金導入には10%とという破格の条件で儲けさせてくれた。これが、バッフェット氏のゴールドマンへの無条件支持という「宗旨替え」の裏にあるようだ。