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モスクワ地下鉄自爆テロはなぜ To East and West

2010-03-30 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2010年3月30日(火)

モスクワの地下鉄駅2ヶ所で、女性テロリストの自爆テロにより40名近くが死亡、60名を超える重軽傷者を出すという悲惨な事件が勃発し、ロシア政府はもとより、オバマ大統領、訪米中のサルコジ大統領など世界の首脳からのテロ非難と、犠牲者に対する哀悼の意が発表されている。

ロシアの警備当局責任者は、テロ実行者が「北コーカサス地方のテロ組織」"a terrorist group from the North Caucasus region" による犯行であると声明を出しているが、この北コーカサス地域とはチェチェンヤ(Chechnya)共和国を指す。

チェチェンヤ人は、5,000年の昔から彼の地に住み着いてきたと主張する民族であり、言語的にもロシア語とは異なり、モスレム教徒が大半を占めるためロシアの正教徒とは宗教・文化的にも隔絶してきた。

このチェチェンの現状をCNNが「生活は極度に貧しく、失業者であふれかえり、乳幼児死亡率は高く」「人口約100万人はスンニ派モスレム教徒」の国であると描写している。ソ連崩壊後はロシア連邦に帰属を拒み、1991年に独立を宣言したときからモスクワとの武力対決が始まった。

始めロシアは反乱の動きに高をくくっていたが、1994年に至り時のエリツィン大統領が4万人の大軍を動員して沈静化を図った。2年後ロシア軍は大損害を出して敗退し、チェチェンに政権が誕生し、事実上の独立状態となった。

このころから、チェチェン反乱分子の活動が活発化し、1999年にモスクワなどの都市に対する爆弾テロが行われ300人の犠牲者を出した。2000年に就任したプーチン大統領は、反乱鎮圧に徹底的な作戦を開始した。

この結果、2009年までに出した両軍の犠牲者は、ロシア側15,000人、チェチェン側30万人とされている。国連は、2002年の報告書の中で首都グロズニを「この惑星上でもっとも破壊された都市」"the most destroyed city on the planet"と表現した。

この戦争状態のもとに行われたロシア軍の無差別鎮圧行動の苛烈さと、被害者の多さは国際世論の批判を招き、人権擁護団体からは、「ロシアは人権を無視する国」と非難されることとなった。

当然チェチェン側のテロによる反撃が激しさを増し、120人の犠牲者を出した2002年のモスクワの劇場襲撃、2004年の2機の航空機撃墜と330人の犠牲者を出した北オセチアの学校襲撃などが記憶に新しい。そしてこうした抑圧状況を告発した女性記者、アンナ・ポリトコフスカヤが暗殺されたのは、2004年である。

現在チェチェンでは親モスクワのRamzan Kadyrov大統領が政権を取り、強硬に反乱抑圧を実行していて、Amnesty Internationalなどの人権監視団体が、その蛮行に警告を発している。

そしてCNNのレポートは「チェチェンの反乱は、鎮圧どころか西や東に拡大している」と結んでいる。The insurgency itself has not so much ended as it has moved to the east and the west.






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