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トヨタ集団訴訟に群がる弁護士の壮絶な戦い A Bloodbath

2010-03-26 | 世界から見た日本
2010年3月26日(金)

トヨタの全世界的なリコールに伴う米国内の損害賠償訴訟を、「集団訴訟」とすることによって、絶好の儲けの好機としようとする弁護士たちの実態はこっけいでもある。

木曜日にサンディエゴの裁判所において、トヨタリコール事案が「集団訴訟」扱いとなった場合、裁判地をどこにするかについての審議が始まった。100名以上の自薦弁護士たちが集まり、集団訴訟主任弁護士指名を狙って、売り込みに余念が無い。しかし、あまりの弁護士の数の多さのため、公聴会で、個々の弁護士に、自薦「売り込み」のための弁論に与えられた時間はわずか2分間であった。

すでにトヨタの品質不良に関連して100件の訴訟が提起されているが、訴訟の理由は死傷事故の損害賠償から、リコールによって下取り価格が下がったことへの損失補償まで幅広い。

米国の制度では、同種の訴訟が全米各地で提起されたときには、いくつかの裁判所に集約して、多数の訴訟をまとめて審理することになっており、その決定は「多地区にまたがる訴訟に関する司法パネル」(the U.S. Judicial Panel on Multidistrict Litigation)がおこなう。そして、訴訟指揮に当たる主任弁護士は互選で選出されるので、弁護士間で激しい競争が繰り広げられるわけである。

現在起こされている訴訟は19の裁判管轄地区(jurisdictions)に分散しているが、弁護士側はこれを一カ所にまとめるように要請している。一方トヨタはその米国本社のあるカルフォルニア州での裁判を望んでいる。裁判地の決定権は、上述の司法パネルにあるが、今後2-6週間以内に決定されると伝えられている。

一方、担当判事の選任は、各弁護士が自分に都合の良い裁判官を推薦し、それに基づいて、上述のパネルが最終選定を行う。選考基準はどれだけの訴訟がその判事に集まっているか、過去に同様訴訟の経験があるかなどを加味して決定される。

こうして選ばれた判事は、訴訟が「集団訴訟」になじむか否かを、またそれが重要判例案件(bellwethers)と指定すべきか否かを決定する。さらに重要な意味を持つのは、人身事故の場合州によって損害賠償額の上限がある場合があるので、準拠法をどの州法とするかの決定である。

こうしたプロセスの中でも、弁護士同士での主任弁護士ポジション争いはとりわけ熾烈を極めている。水曜日に「トヨタリコール訴訟会議」("Toyota Recall Litigation Conference")が開催され、弁護士たちは、「いかに自分が適任であるか」の熱弁をふるった。そのために自己宣伝のためのパンフレットまで作成して会場で配布する弁護士も多く、弁護士間の戦いも過熱している。

「日本の自動車会社の悪行(malfeasance)を暴く絶好の機会だ」、「弁護士同士団結しよう」などの言説が飛び交い、自動車会社相手の集団訴訟の常連大物弁護士も加わって、主任弁護士の地位争いは激しい。The Wall Street Journalは、ある弁護士が漏らした、その演説とは裏腹な「これから血を見るよ」("It's going to be a bloodbath,")という言葉を引用して記事を締めくくっている。





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