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NATO軍空爆、アフガン人90人死亡 Collateral Damage

2009-09-05 | グローバル政治
2009年9月5日(土)

タリバンに強奪されたタンクローリーに、NATO軍が空爆を加えたところ、ガソリンを取ろうと群がっていた「村民」約90人を、焼殺するという結果に終わり、一般民間人への被害を回避しようとするオバマ政権の戦争方針に冷水を浴びせる重大な事件が、アフガニスタンで発生した。ゲイツ国防長官が、「市民の巻き添えを防止することが最重要課題」だと演説した数時間後のことであった。

Financial Timesは、地元古老の話として、「タリバンが、ドイツ軍のタンクローリーを奪ったが、立ち往生していたローリーに、闇の中でガソリンを取ろうとしていた村民が、爆撃によって起こった火炎の犠牲になった」と伝えている。

爆撃は、ドイツ軍によって行われたものであるが、被害者に市民が含まれていることは、アフガニスタン政府も、現地NATO軍も認める声明を出した。今回の爆撃が、ドイツ軍によるはじめての大規模戦闘行為であったために、ドイツ国内でも大きく報道されている。

一方最新の英国BBC放送は、黒焦げになった現場からの中継でこの事件を報道しているが、「死亡者のうち60人は、タリバン兵であったが、多数の市民も同時に死亡した」とする地元警察の発表を報じている。

ベトコンが、市民の中に紛れ込み、市民とベトコンの区別がつかない米軍が泥沼の戦いに陥ったベトナム戦争の例を引くまでもなく、明らかにアフガニスタンでは、典型的なゲリラ戦争の様相を呈している。

タリバンは、「市民の巻き添え(collateral damage)を増やして、市民の憎悪を、政府とNATO軍に向ける作戦」をとる。欧米では、派遣軍の戦死が急増して厭戦気分が強まる。そして市民の巻き添えの増加は、国際世論を敵に回すことになる。

米軍のマックリスタル総司令官の、「情勢は複雑(complicated)だ」という言葉に、米国の抱え込んだ問題が象徴されている。そしてアフガニスタン戦争は、「オバマの戦争」となった。



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