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メキシコ湾油汚染拡大、さらにBP窮地に Unknown Unknowns

2010-05-26 | グローバル企業
2010年5月26日(水)


ルイジアナ州沖66kmの洋上で4月21日に発生した1500mの深海底油田爆発事故による原油の流出は現在もまだ止まらない。

油田の探査・掘削事業者であるBPは、事故発生以来懸命に流出防止策を講じてきたが、これまでのいくつかの試みは失敗に終わっており、環境破壊や漁業の操業停止の問題が深刻になるにつれ、米国政府と関係4州から厳しくその責任を追及されている。

そんな中FinancialTimesは、その株式欄LEX COLUMNで、イラク戦争の際に当時の米国のDonald Rumsfeld国防長官はその傲慢な物言いで数々の物議をかもしたが、その有名な言葉を借りてBPの苦境を株価の面から論じている。

『アナリストというものは、「既知の知見(known knowns)と、既知の未知見(known unknowns)」を定量化することに長けているが、その能力をBPのメキシコ湾岸事故という「未知の未知見(unknown unknowns)」に適用して投資家に何かを言うとすれば、「もう危険は去ったから安心していいよ」と誤った安心感を与えるようなものだ。

それはあたかも、まだ油がいっぱい漂う海に、「もう飛び込んでも大丈夫だよ」ということに等しい』

『すでに、事故以来BP株は時価総額で5.5兆円を失ったが、これだけの株価下落の後だから、BPの株を買って失敗しても、ポートフォリオで投資する投資家に対して、奥さんや投資委員会で叱られることを耐え忍ぶだけの心の準備を提供してくれているようなものだ。

しかし高値から30%も下げたとはいえ、いまからBP株を買いに出動するのは、大向こうをうならせるようなパーフォーマンス(a slam dunk)とは言い難い』

『ほかのオイルメジャーは、事故翌日以来率にしてBPの半分くらい下げたので、業界全体の下げからみると、BPの事故の影響による時価総額の喪失は、約2,6兆円と算定できる。

一方、今後発生する事故の直接損害と損害賠償の合計試算はいろいろと出されているが、1989年のExxon Valdezの原油流出事故をベースに算定されたものでは約8兆円となる。この場合、無税化できる罰金分を差し引いて、約5兆円がネットの損失総額と見込まれる』

『しかし、この算定はBPが早い時期に原油の噴出を封じることができた場合であり、対策が奏功しない場合には損害はもっと増えることは確実である。

そして今年の米国は中間選挙の年であり、政治的な圧力から、懲罰的損害賠償(punitive damages)が膨らむ可能性も高い』

『BPの株価は事故前には業界では比較的高く評価されたレベルにあったが、景気の先行き不安が高まる中、BP株に今後プレミアムが付いていくことは考えにくい。

ラムズフェルド流に、投資家に言うとすれば、「BP事故の影響は、われわれが知らないということも知らない類のことだ」(“These are things we do not know we don’t know.”)』

BPとBPから海上油田のリグの操業を請け負った会社が被る損害が計り知れないことが今回の事故が今までとは違うところである。深海底採掘のリスクを業界が初めて経験しているといえる。




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