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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

英首相、オバマ詣での旅へ Preparation for G20 in April

2009-03-02 | 米国・EU動向
2002年3月2日(月)

オバマ首相が招いた、欧州各国の首脳の一番手は、ブラウン英首相である。麻生首相に対しては、共同声明もなく、特別の宿所を提供するという配慮もなく、「日本の首相と会談」したなどという、失礼な表現による報道官のブリーフィングが行われたのは、先週のことである。

一方、経済政策も後手に回り、昨年来ずっと国内の人気が低迷し,野党に遅れをとっているブラウン首相は、今回のホワイト・ハウス招待を最大限に活用して、一挙に英国内と、欧州での存在感を挽回して、4月2日からロンドンで開催されるG20の主催国首脳としての、面目を立て直しておきたいところである。

オバマ政権の、政策チームは、経済のいっそうの悪化がはっきりしてくるにつれ、「国内優先」の経済再建への注力姿勢を強めているが、バイアメリカンなどに象徴される自閉症的政策に陥るのではないかと心配されるこのごろである。

G20を成功させたいブラウン首相としては、IMFの強化や、金融システムの国際的な監視と規制強化に向けて、米国の同意の確認を取りたいところであろう。また同盟国としての英国としては、アフガニスタンへ、すでに8,000人の軍隊を派遣しているので、オバマ大統領からは同盟国としてしかるべき、敬意を払って欲しいところであるが、これ以上の犠牲は国民の反発を買う危険もあるので、バランスのとり方が難しい。ブラウン首相はこれ以上の義務を負って帰国は出来ないのである。

しかし、好むと好まざるにかかわらず、「平和のための戦争」がもたらす経済効果を期待する勢力がいることも事実であろう。米軍はイラクからは、来年撤退するが、アフガニスタンで大攻勢を掛けることは、軍産複合体の期待するところとなりつつある。兵器と弾薬と、食料など戦争用品の一方的消費ほど経済不要効果の大きいものはないので、この大不況の中、パレスチナからチベットまで、戦乱の年になることが懸念される。

ここで、1930年代のニューディール政策の成功の本当の理由は、第二次世界大戦の戦争特需によって、米国が不況を脱すすることが出来たからだという解説も存在する。戦争経済で経済恐慌を脱出することは繰り返されてはならないので、われわれは、歴史から学ぶべき時である。

オバマ大統領一般教書演説 The day of reckoning

2009-02-27 | 米国・EU動向
2009年2月27日(金)

米国大統領は毎年2月の最終火曜日に、上下両院議員を前に、施政方針演説を行うが、今年は経済対策をめぐって、特に上院との調整が難航したため最後まで、日程の確定が遅れた。しかし、予算も確定し24日に予定通り、「一般教書」演説は行われた。

さて「一般教書」は、原語では、State of the Union と呼ばれている。誰がこれを「教書」と訳したのか不明であるが、原義をそのまま訳すと、「1789年に独立戦争の結果成立した連邦(union)の状況を憲法に従って、大統領が議会に報告することである。そのstate of the Unionとは、連邦すなわち国の「状態」の報告であり、正確な訳語は「国勢報告」となる。

ところで、今年の「国勢報告」の論調は、オバマ大統領による、「金権亡者」批判に満ちており、資本主義内部の規律(regulation)再構築を、唱導しようとする意欲に溢れている。

「規制(regulation)は、健全な市場運営を阻害しつつ短期的な利益(a quick profit)を求める人々によってないがしろにされてきた。」しかし、「最後の審判の日は(That Day of Reckoning)来たのだ」と、キリスト教徒なら誰でも知っている有名な言葉を引用して、改悛を迫っているのである。高額報酬と、役得をむさぼった大企業幹部や、金融界の面々よ、心せよというmessageである。




コンサルタント使用禁止令 A Ban on Consultants

2009-02-14 | 米国・EU動向
2002年2月14日(土)

コンサルタント受難の時代となったようである。

ドイツ産業界の代名詞ともいえる重電・通信・鉄道車両メーカー、シーメンス(Siemens)は、外部コンサルタントとの契約を徐々に解除し、いずれ例外を除いて全廃すると発表している。これで節約される支出は,約3億ユーロ(360億円)にたっするという。

対象となるのは、数百に及ぶMcKinseyや、Accentureなどの”management consultant”と分類されている会社との契約である。これは、シーメンス社内間接経費から12億ユーロ(1,500億円)を節約しようとのプロジェクトの一環であると発表されている。

この動きが、広がればただでさえ、不急の支出として削減の対象となっているコンサルタント起用に、ドライブがかかってくると、業界では警戒感を強めているのも理解できる話である。

ところで、シーメンスは、ここ数年海外プロジェクト商談に絡んで贈賄を摘発され、2代のCEOが辞任に追い込まれ、中堅幹部も大量に訴追された上、EU当局からは、1200億円の罰金を課されたことは記憶にあたらしい。

今回のコンサルタント契約全廃措置とこのスキャンダルは、直接の関係がないとのことであるが、こうした不正支出に関しては、Fixerが、ConsultantやAdviserと言い換えられてきたのも事実である。シーメンスにおいても、この際一気にコストダウンとコンプライアンス強化を図るというのが狙いであると考えられる。

そういえば、わが国では、某県で、「コンサルタント業」が栄えていると連日報道されている。

オバマ路線またも打撃 Deliberate Haste

2009-02-13 | 米国・EU動向
2009年2月13日(金)

オバマ大統領は、当選後から,この未曾有の金融・経済危機への対応のため、対策の早期打ち出しとあわせて、一瀉千里に、重要人事を発表してきた。その過程で使われた言葉が、「計算された拙速」(deliberate haste)であったが、この自家撞着表現(Oxymoron)は、まさにオバマ大統領の清真さと、改革のスピードの象徴であった。

しかし、ここのところこの言葉は、後半部分のhasteだけが、クローズ・アップされる事態が相次いで出てきた。まず、緊急経済対策については、経済刺激策の具体性が欠落しているとして、ウォール・ストリートから株価の大幅下落という形で、その評価を示されてしまったことがあげられる。

そして、重要閣僚ポジションである商務長官の二人目の候補であった、Gregg共和党議員が、「政策の不一致」を理由に辞退してしまったのである。昨日取り上げた「超党派運営」(bipartisanship)へのきわめて大きい打撃となった上に、オバマ大統領が失った閣僚級の候補者はこれで4人となった。

日本の政党が、自党議員に課しているような党議拘束は米国では存在していないので、自由意志で個々の法案審議に、賛成反対の票決を行う。したがって先般の渡辺議員のようなことは、米国では日常茶飯でもあるのである。(ちなみに商務長官指名受諾後に行われた、上述の緊急経済対策法案の表決に、Greg議員は、賛成票を入れず、棄権という形で苦渋の意思表明をしていたのである) 

いずれにせよ、オバマ大統領が提示した重要法案に同調する共和党議員が3人しか出てこなかったことも驚きであり、今後この「超党派運営」の難渋問題は尾を引くことになろう。どうやらGregg議員に対して、共和党内部や、地元選挙民から加えられた圧力は相当強かったと見えるので、今後同議員は、共和党精神を内外に示すべく強力なオバマ反対の姿勢を打ち出すかもしれない。

ホワイト・ハウスはGregg議員の突然の辞退に対して「変心(change of heart)は残念の極み」との声明を出した。このChangeは、オバマ氏にとって好ましくないchangeであることは、間違いない。


オバマ大統領政局運営難渋 Obama’s Bipartisan Ambitions

2009-02-12 | 米国・EU動向
2009年2月12日(木)

オバマ大統領は、選挙中から共和党に対して議会の超党派運営(bipartisanship)を呼びかけ、閣僚にも要職に3人の共和党出身者を配して、その精神を体現しようと努力してきた。(民主・共和の二大政党政治を、政治的伝統の基盤とする米国政治における「超党派的」とは、二党間の協調ということを意味するので、「2」を意味するbi-という接頭辞を持つbipartisanという言葉が使用されているのである。)

現在、民主党は上院・下院ともに、多数を占めているので、日本の参議院のようないわゆる「ねじれ現象」は無いと思われがちであるが、法案可決をゆるぎないものにするためには、上院議席100のうち60票を抑えなければならないというルールになっている。

したがって、現在上院民主党勢力は、58人であるため、共和党は制度上法案阻止の潜在的な力を保持しているのである。共和党は、2年後の中間選挙での巻き返しを図るために、この力をフルに使ってくるので、この点がオバマ大統領にとって、今後の政局運営の大きな障害となるのは、予想に難くない。

今回の緊急経済対策法案(8,380億ドル)の表決に際しては、共和党議員3人の賛成を得て、61票でかろうじて可決に持ち込んだのであるが、今後上院決議内容と下院決議内容の調整が残されていて、必ずしも簡単ではない状況である。この3票の共和党議員票も流動的である。また共和党との妥協には、民主党の中核勢力が抵抗することが予想され、オバマ政権は内部からの圧力も懐柔する必要があるからである。

健康保険法改正という、オバマ氏の選挙公約も、今後大きな争点となることが予想されるので、先行きの海面の波は高い。






米国外交政策基軸転換 Soft Power & Return to the fold

2009-02-07 | 米国・EU動向
2009年2月7日(土)

オバマ政権の閣僚以下の、米国外交政策を実質的に企画し、大統領に具申する次官・補佐官級の人事が進行中である。米国では、高級官僚は、大統領選挙後に、高級官僚ポストのいわば総とっかえが行われ、大統領の政策に合致する主張を持った政治家や学者を中心に重職が埋められていくのである。

このように選ばれる人々のことはpolitical appointeeと呼ばれ、選挙中の論功行賞でもある一方、自薦・他薦の候補者が大挙してワシントンに向けて求職活動をおこなうのがこの季節の「国民的行事」である。米国には、わが国のように官僚による政治支配や、官僚の既得権益をまもるために総理大臣の権威に挑戦する「人事院」総裁は存在しない。

さてFinancial Times(2月6日)の特集記事は、外交ポストを中心にオバマ外交政策の特徴を、8人の重要な候補者の出版した本や、言説をもとに面白い分析を試みている。まず、見出しは”Return to the fold”(仲間のところに戻る)としている。すなわちブッシュ政権の軍事力を楯にした唯我独尊・一極専横の姿勢から転換し、「世界の一員」として国際社会に復帰し、そして「欧州の親戚と友」のもとに戻る政策をとるであろうとの予測である。

そして、具体的な政策としては、ブッシュの金科玉条である「テロとの戦い」(the war on terror)を再考して、「外交」の重視、とくに従来の「国連敵視」政策をやめて国連の場への回帰が重要な政策転換が起こるとしている。この政策の重奏低音として流れるのは、Joseph Nyeハーバード大学教授が長年にわたって主張してきた「力の行使」から”soft power”の行使への転換という考え方である。

さて、上に述べた8人のうち3人が女性であることは注目してよい。その3人とは:

①外交政策立案最高責任者として上げられているAnne-Marie Slaughterプリンストン大学教授(ブッシュの二項対立的軍事対決政策への強力な反対論者、ベルギー出身),

②Susan Rice新国連大使(オバマ氏の選挙参謀。貧困がテロの温床であるとし、貧困対策への重視を主張。オクスフォード大学出身), 

③国家安全保障会議議長候補のSamantha Power(カンボジア・ルアンダなどでの虐殺に米国が座視政策をとったことの強力な批判者、アイルランド出身)である。

3人ともに欧州につながる人々である。この長文の記事に、日本はNye氏が駐日大使として擬せられていると触れらた個所で、Japanという単語としてのみ一回だけ登場していることも注目しておこう。仲間(the fold)には、日本は含まれていないのである。


オバマ大統領の怒り shameful and disgusting

2009-02-06 | 米国・EU動向
2009年2月6日(金)

オバマ大統領は、ウォールストリートの銀行家が、自行を破綻させながら、「契約に則って」高額報酬を平気でもらい続けている現状に、怒りを爆発させて、「政府の支援を受けた銀行のトップの報酬を50万ドル以下に制限する」と記者会見で発表したが、その際使われた言葉は、shameful(恥知らず)であり、disgust(唾棄すべきもの、原義からすれば“むかつく所業”)であった。

銀行家側の反応は、「これで優秀な人材は、大銀行のトップを目指さなくなるだろう。なぜなら彼らの動機付けはカネのみだから」というのが大方のものである。ウォールストリートという場所は、「強欲の好循環」(the virtuous circle of greed)が行われ、「カネをもっとも稼ぎ出した」という意味での優秀な人間が「ダーウィンの適者生存の法則」(Darwin selection process)によって出世階段を駆け上る仕掛けが機能する場所だからというわけである。

米国の銀行家は、高額の報酬と退職金、そして各種の役得(これは一般的にperks、そして遊びの出張はjunketと呼ばれている)のみに支えられて激職に喜びを感じて生きる人たちであると、銀行家自身も認めるような社会に生きているのである。さて、銀行家という「職業」はそのようなものであってはならないとオバマ大統領は言っているのであろうか?オバマ大統領の言葉を注意深く読めば、「政府支援を受けながら高給をむさぼることを禁止する」とだけいっているのである。米国資本主義の基本を否定しているわけではないので、間違えないほうが良い。

さて職業という日本語には、英語の二系統の単語が対応する。ひとつは、occupationであり、いまひとつはprofessionとcallingである。Occupationは、 ‘生計を立てるために、自らの時間を占有(occupy)させるもの’が原義である。一方Professionの動詞professの原義は、’declare publicly’ となっていて、もともと神の道に仕えることを宣誓することを意味したのである。

そして神学・法学・医学の深い造詣を身につけた人たちのいわば、「天職」という意味に転じ、現在では意味が広がって、「専門的知識を必要とする職業」のことを指しているのである。その生い立ちから、「職業倫理と社会的責任」が要請される位置づけが強くなるのは当然である。「米国の銀行家」はこの意味でprofessionとは呼べないのは当然である。


オバマ予算メタボ肥大化 Boondoggles and Pork

2009-02-05 | 米国・EU動向
2009年2月5日

緊急経済対策のために、財政出動を行い、景気刺激を図るという名分のもと、オバマ大統領は、現在予算案の議会承認に全力を挙げているが、共和党の抵抗にあって難航している。争点は、まことに米国の伝統的な意見対立に集約されている。

ルーズベルト大統領以来の赤字財政支出によって景気と雇用の浮揚を図るとする民主党の「大きな政府」の主張と、レーガン大統領に代表される減税と政府支出削減による民間投資・消費を誘発させようとする共和党の「小さな政府」の主張の対立である。ここには特段の’change’はない。

このような中、オバマ大統領は大きな政治的妥協を行った。問題の商務長官候補に、筋金入りの共和党保守主義者である、Judd Greggニューハンプシャー州上院議員を選択したのである。承認されれば3人目の共和党閣僚となり、「超党派」体制となるというのが、ふれこみであるが、同氏後任の上院議員に共和党員を推薦することが取引条件となっており、共和党の上院における勢力地図に変更をおこさせないことまで譲歩したことはあとあと禍根を残す可能性がある。

そして、議会の中で予算案が審議しているうちに、その総額は肥大化して9,000億ドルに達し、共和党の反対を勢いづかせているのである。議員が地元への利益誘導のために、個別プロジェクトへの支出を政治取引の材料にして、予算案に強引に入れ込むのは、米国政治の「常道」であるが、それによって増額されたものをpork barrelとか、公共工事の場合boondoggleと呼ばれる。今回もそのような「常道」に’change’はなく、メタボ状態になっていることが、批判されているのである。




オバマ人事、税金につまずく  Geithner on steroids

2009-02-04 | 米国・EU動向
2009年2月4日(水)

オバマ大統領の、高官人事が、立て続けにつまずいている。財務長官の指名を受けガイトナー氏が議会公聴会で、納税問題で痛いところを突かれ、ようやく承認を得た直後、あらたに二人の高官候補が、同じく税金問題で辞退せざるを得なくなったのである。

その二人とは、厚生省の長官に指名されていたトム・ダシュル元上院院内総務と、オバマ大統領が新設した「政府機能監視官」に指名されていた経営コンサルタント会社幹部のナンシー・キルファー氏である。これで、辞退者は、商務長官に指名されていたニューメキシコ州知事のリチャードソン氏に続いて三人となり、オバマ氏の「クリーン」イメージに打撃となった。

キルファー氏の場合は、950ドルの未納問題、ガイトナー氏は4万ドル、ダシェル氏は12万ドルが、問題とされたのである。なぜガイトナー氏が公聴会をクレアできて、ダシェル氏は辞退となったのかを、説明する言葉が、「ダシュル氏の問題はガイトナー氏の問題の比ではない」 という表現“Geithner on steroids”である。(これは筋肉増強剤ステロイドを打って、肥大した筋肉マンの姿を借りた米語である。)

緊急経済政策法案の議会通過の予定が立たず、一般教書演説の日取りを発表できないオバマ大統領にとっては、選挙勝利の美酒を味わう間も瞬く間に過ぎ、悪戦苦闘の政治の現実に巻き込まれていく毎日となった。

ブッシュ大統領はA型 A-type personality

2009-01-18 | 米国・EU動向
2009年1月18日

ブッシュ大統領のお別れ記者会見の模様をABC放送が報じています。大統領は、去来する胸のうちを、記者団と世間話をするノリで気楽に語りかけていました。

『表舞台は、もう十分楽しんだとはいえ、一線を退いても、「ハワイの浜辺で余生を楽しむ」自分は想像できない。なぜなら、自分はA型人間(Type A personality)だから』といいました。つまり、本心は、これからも、カーターやクリントンのように話題の中心にいたいということです。

米国でいう「A型人間」は、血液型と関係はありません。活動的で、攻撃的で、片時もじっとしていられない性格のヒトを指します。その逆はType Bです。

そして大統領が最後に付け加えた言葉は印象的でした:「とくに酒をやめてからはね」。これをストレートに言い変えると、「アル中を克服してからはね」ということです。

言葉の幼稚ないい間違えで、ギャグの対象となってきた同大統領は今後もわれわれを楽しませてくれるということです。いまのわが国には、この手の国産のギャグで充満していますから必要ありませんけれども。


「2010年米国は内戦後6地域に分裂」 a Russian prophet

2009-01-04 | 米国・EU動向
2009年1月4日

Igor Panarinなる元KGBで、外務省外交官研修所長を務める人物は、10年来、「米国の内部分裂」を唱えてきましたが、このところロシアの国営メディアで引っ張りだこで、テレビに出てこない日はないくらいということです。

経済・金融情勢が最悪の状況下で、米国の景気回復を待つしか有効な手立てを持たないロシアは国内の反プーチンデモも活発となっています。そんな中、ロシア人の鬱憤を晴らし、旧ソ連の分解がもたらした「喪失感」を慰めるにはもってこいの話題というわけです。

この御仁の主張に従えば、来年半ばには、米国に内戦(civil war)が勃発し、年末には6カ国に分解するというのです。6つとは、Alaska(ロシア領)、Hawaii(日本か中国領)、The California Republic(中国の支配)、The Texas Republic(Mexico), The Central North-American Republic(カナダ)、Atlantic America(EUに)です。

分解の理由は、大量移民(mass immigration)、経済衰退 (economic decline)、道徳的退廃(moral degradation)だそうです。

年末にWall Street Journalが一面で報じてから、全米のメディアが取り上げて、百家争鳴状態の議論になっています。



ユーロ10歳、強い通貨へ Stronger amid the crisis

2009-01-01 | 米国・EU動向
2009年1月1日

ユーロが誕生して今日で10年になります。世界の最悪の経済危機の中での誕生日ですが、現在のユーロは、その誕生のころの「虚弱体質」を克服して、いまや世界の「基軸通貨」のひとつとしての地位を獲得しています。フランスのサルコジ大統領に言わせれば、「ドルの一極支配は終わった」のです。

欧州の「地域通貨」が、グローバル性を徐々に獲得してきた歴史を振り返ると、まず2006年に、発行通貨量でドルを追い抜いています。また各国の準備通貨として保有される割合が、この10年で、18%から27%に上伸しました。この間にドルは71%から63%に比率を落としているのとは対照的です

また、EU加盟27カ国のうち16カ国がユーロを通貨として採用するにいたっていますが、毎年徐々にユーロへの転換が進んでいます。英国がポンドを捨ててユーロを採用する可能性は低いのですが、デンマーク・ハンガリー・ポーランドの加盟は時間の問題です。

現在のユーロの大きな問題点は二つ。ひとつは、今回の経済危機・金融危機に際して、欧州全体として、金融政策や金融機関への規制措置で同一歩調が取れなかったことに象徴されています。今後も、各国主権と欧州中央銀行の間のせめぎあいは随所で出てくるでしょう。そして二つ目は、弱小国の加盟によって、ユーロ圏内の各国の経済力格差に、一人当たりのGNPで測って7倍の差ができてしまっていることです。

EU内部では、統一の力と、分解の圧力が同時進行しています。



いやいやながら Reluctant president’s bail-out

2008-12-20 | 米国・EU動向
2008-12 No.017

米国上院による救済案否決を受けて、ブッシュ大統領は、1.5兆円の緊急低利融資をGMとFordの2社に対し行うことを、金融界救済法を超法規的に援用して決定しました。FTの見出しに使われた言葉は、ブッシュが私企業救済に公的資金の使用に反対していることを表現した「いやがる大統領”reluctant president’」です。

記者会見では、「自由市場の赴くところに委ねれば、自動車会社は破産し、解体されて、混乱の極みとなるのは疑いない。そうなれば、ただでさえ弱った経済は、ますます長くて深刻な景気後退の奈落の底だ。新大統領就任初日を自動車産業の葬式にするわけにいかない」というのがブッシュ大統領の公式の弁です。

FTが引用するあるアナリストの論評は:「これしきじゃあ、バンド・エードですよ。とても2009年は乗り切れません。たとえていえば174億ドルのアメフトボールをオバマ新大統領に向けてパントキックをあげたというところですよ」

事実、2月17日までに、両社の再建ビジネスモデルを提出させ、3月末までに承認できなければ、融資返済を迫ることになります。それに待遇の大幅切り下げを迫られる全米自動車労組と対決する局面は、目に見えるようです。 ブッシュ大統領は「オバマ新大統領は、パントを受けても、落としてもピンチ」というシナリオを書いて、あとはお手前拝見としたのかどうか。


オバマのニュー・ニュー・ディール We are all Keyensians.

2008-12-09 | 米国・EU動向
2008-12 No.008


オバマ次期大統領は先週末に、ブッシュ大統領が経済危機対策の第2弾を迅速に繰り出さないこと(Bush vacuum)に業を煮やして、就任前の次期大統領としては異例の詳細な経済対策を打ち出しました。

基本的には、大恐慌の対策としてフランクリン・D・ローズベルト大統領が実行したニューディール政策の再来となるNew “New Deal”政策です。すなわち今回オバマ氏が明確にしたのは、「赤字財政政策」に支えられた「大きな政府」の「公共投資による景気浮揚」であり、まさにケインジアン経済学教科書の忠実な実践ということです。

経済はよくなるどころかますます悪くなっている(Things are getting worse before they getting better)と現状認識した上で、オバマ氏はこの対策を、「病状を安定化させるための輸血」(blood transfusion)と呼びます。そして米国の財政赤字が膨張することに今はかまっておれない緊急事態であるとして、赤字財政政策をとることを宣言しました。

具体的な公共工事として、50年代以来とされる超大型の道路プロジェクト、学校校舎の改修、建物の省エネ化、インターネットのブロードバンド化、医療インフラ整備がふくまれています。

この巨額赤字予算を、休暇明けの第111議会で通過させたうえで、1月20日の就任直後に大統領署名をするという段取りとなっているようですが、オバマ氏は巨額予算の中には、選挙区への利益誘導案件(pork)をもぐりこませないと決意を表明しています。「議員の選挙対策予算の時代は終わったのだ」と。


オバマ閣僚 The very best of the American Example

2008-12-03 | 米国・EU動向
2008-12 No.003


オバマ次期大統領は、民主党の宿敵クリントン氏の国務長官への任用と共和党現政権の戦争政策遂行責任者ゲイツ国防長官の留任という、その決定のためには熟慮と決意を要したと見られる人事を発表して組閣を事実上完了しました。

オバマ氏の、その陣容を評した言葉は、「アメリカの模範となるべき人々のなかでも最高の人々」(The very best of the American Example)であります。そして党派、信条、人種、女性といった多様な出自のために意見が相違してくることを予想して、「米国の歴史を見れば、反対意見が出ず全員一致の状況になったときに政策を誤った」ことがわかるとその多様性を擁護しました。民主党内部にある今回の人事に対する不安と不満に対する回答でもあります。

また注目すべきは、国家安全保障補佐官(National security adviser)には、退役海兵隊将軍であり、ブッシュ政権のイラク政策に批判的であったジム・ジョーンズ氏が就任したことであります。

この国家安全保障補佐官はきわめて重要な地位でありますが、本人の政治的手腕の政権内部での実力と大統領との親密性によって存在感がまったく変わったものとなるのは過去の例が示しています。FTの歴代の有名補佐官の寸評を引用してみましょう:

ヘンリー・キッシンジャー(1968-75) 「最高権力者」(The supreme power)
ブレント・スコーフィールド(1989-93) 「誠実な仲介者」(The honest broker)
コンドレッサ・ライス(2001-05)「蚊帳の外」(Sidelined)
ジム・ジョーンズ(2009-) 「タフな海兵隊員」(The tough marine)

今後の米国の軍事・外交政策はクリントン・ゲーツ・ジョーンズの3人で立案されていきますが、この三人の間の力関係が米国の世界戦略に非常に重大な影響を持ちます。大統領にあれほど近かったライス氏でもその補佐官時代、上記に「蚊帳の外」と酷評されているごとく、ラムズフェルド・チェイニー・パウウェルという大物にまったくなすすべがなかったことからもそれがわかります。