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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

米国の工場誘致競争 Huge Incentives and Tax Breaks

2008-09-08 | 米国・EU動向
2008-9 No.7

米国は、世界の他の地域と較べて、生産拠点として競争力がついてきたとの声が欧州のメーカーから上がっています。理由はドル安もありますが、むしろ各州が出す、工場誘致のための助成金です。

この助成金は従来の常識を破る巨額なものとなっています。いくつかの最近の例をあげてみましょう。テネシー州に約1,000億円の工場建設を決めたフォルクスワーゲンに対して、同州は約600億円の助成金を出します。またアラバマ州に製鉄工場建設を決めたティッセン・クルップに対して約900億円弱の助成金を出します。この製鉄所建設候補地として競合していたルイジアナ州は、2,200億円の助成金を申し出ていたとのことです。さらに各州は工場用の道路建設、労働者の確保と教育、法人税の減免などのパッケージも提示しています。


最近の中国や東欧の賃金上昇、またドルの低落傾向から考えて米国の生産拠点としての魅力が増しているのみならず、現在のEU域内の政府援助規制の下では不可能な巨額の助成金が出るとなると、欧州企業の米国再評価が行われるようになるのも当然です。中国やその他のアジア諸国のカントリーリスクや労働者の質も考慮にいれると、さらに魅力が増すというわけです。

一方受け入れ側の米国各州にとっても、これだけの助成をしても雇用と税収の増加を考えると十分な成算があるとの読みが成立しています。グローバリゼーションは、一方通行だけではないという好例です。ちなみに大統領選における民主党の立場は米国からの雇用の流出の原因がグローバリゼーションにあるとしています。従って北米自由貿易協定の見直しも要求していますし、雇用を海外に移転させた企業への税制上の恩典停止を訴えています。

一方共和党は自由貿易、市場経済擁護の立場を一貫させてきました。しかし、景気後退と失業率の急激な上昇が明らかとなった先週マケイン候補は、さすがに「市場経済優先政策は、労働者の再就職のための訓練支援と、グローバリゼーションの被害者救済策に裏打ちされなければならない」とブルーカラーのアンチ・グローバリゼーション感情に配慮を示しました。





助演女優名演技、Mrs. Underestimate in ‘Republican Theater’

2008-09-06 | 米国・EU動向
2008-9 No.6

本日のFTは’A star is born, but McCain fails to make his case’「スターは誕生したが、マケイン氏の政策提示はなし」と手厳しい論評を加えています。Sarah Palin氏の副大統領候補起用は「奇策」ではあったが戦略的には大成功を収め、民主党大会での上首尾によって再びリードを取り戻したObama氏に一矢を報いた感があります。しかし共和党大会の中では米国の将来に関する「政策論議」がほとんどなされなかったことはMaCain氏の弱点をさらけ出すことにもなったというわけです。

ペイリン氏の政治的立場は、マケイン氏よりも右に位置し、いわば共和党最右派と呼んでよいでしょう。全米ライフル協会の役員で、ムース撃ちに幼い頃から出かけていたという経歴を持ちます。もちろん教会に通う熱心な信徒で妊娠中絶反対論者です。(a moose-hunting, church-going mother of five from a small town on Alaska)

Mrs. Underestimatedとニックネームがつけられるほど、「無名・未経験」と過小評価されたペイリン氏が、それを共和党大会の一夜にして覆しました。しかしこれからも、その「無名・未経験」を問いただされる場面は続くことでしょう。特に民主党副大統領候補バイデン氏とのディベートが最大の山場になると予測されています。’Hockey Mom’や、’Barracuda Sarah’と言っても、厳しい米国の経済政策やイラク戦争などの外交政策の論議の場では何の役にも立たないことは当然です。

それから彼女には対処しなければならない疑惑があるのです。すでに’Troopergate’と名前までついているのですが、彼女の姉妹と離婚後係争している州警察官(trooper)を職権を乱用して「馘首せよ」と長官に指示したという疑いです。この件は現在調査中で、裁定は10月末になる模様ですが、民主党はこの点の追及を強めることは必定です。

8月の米国の失業率が、予測を遥かに上回った6.1%に跳ね上がり、景気対策が、政局舞台の中央に引き出されてきました。オバマ・マケイン両主演男優の演技がますます見ものとなってきました。



共和党女性副大統領候補 “Barracuda Sarah”

2008-09-03 | 米国・EU動向
2008-9 No.4
すでにマケイン氏から副大統領候補として選ばれた、サラ・ペイリン現アラスカ州知事とはどんな人なのか、米国ABC放送のネットとFTの記事に現われたニックネームで分析しましょう。

彼女のニックネームが三つありますが、まず最初の一つは”America’s Hottest Governor”です。32歳のときに当選した小さな田舎町の市長を足がかりにして、知事選に挑戦し現職を破って就任してから、まだ2年弱であります。しかし、現在44歳の彼女が次々と積極的な改革や腐敗の排除に取り組む姿勢は高く評価されており、州民の支持率は80%を超えています。「アメリカで最も熱い知事」というニックネームは、写真を見ればすぐに納得できます。

二つ目は、自分でつけたニックネームである、”Hockey Mom”です。この表現はアメリカ人にしか分かりませんから、FTは見出しで”Suburban Mom”に変えています。郊外に住み子どもを大切にしながら幸せな中流主婦だとアピールしているのです。もともとそうしたこどものチームの送り迎えを楽しみにいきる女性を表すSoccer Momという表現があるのですが、これをもじって、自分のために使ったようです。ちなみに彼女は5児の母親です。この子どもたちについても話題は尽きないのですが、マスコミがこれからいろいろ取り上げるでしょう。

三つ目は、”Sarah Barracuda”で、彼女が高校時代に鳴らしたバスケットボールの猛烈果敢なプレー振りを評してつけられたものだそうです。バラクーダは大型のカマスで、貪欲で毒がある猛魚で、そんなタイプの人物のたとえにも使われます。美少女についたあだ名としてはすごいものがありますがそこに彼女の真骨頂があるのかも知れません。

マケイン氏が政治的に特に外交・安全保障にまったくの素人である彼女をえらんだことは、ある種「奇策」の感を与えていて、いっせいに批判や懸念が表明されていますが、三つのニックネームがそれぞれに大きな効果を持ち始めるかもしれません。



クリントン夫妻は過去の人となった Their way into history

2008-09-02 | 米国・EU動向
(2008-9 No.2)

米国大統領選まであと2ヶ月となりましたが、民主党大会でのオバマ大統領候補・バイデン副大統領候補の正式受諾と、共和党は、マケイン氏が副大統領候補としてペイリン・アラスカ州知事を選び、ハリケーン・グスタフによって延期となった共和党大会での正式指名を待つという展開になっています。

この間にマケイン氏が、世論調査でオバマ氏を急追して支持率で逆転するという事態の中で、29日にデンバーで開催された民主党大会は、8万名の党員を集めた大スペクタクル・イベントに演出され、「変革」のオバマの政治綱領が強く打ち出されました。特にヒラリー・クリントン氏が圧倒的支持を集めていた白人労働者階級の支持取り付けのために労働者所帯への減税を行うことと、海外に雇用を移転している企業に対する税制上の優遇策の廃止を明言しました。

さて、この民主党大会前後のヒラリー・クリントンとビル・クリントンの挙動についてその意味を「深読み」(meta-analysis)するFTの2本の論評には、非常に興味深いものがあります。クリントン夫婦は、実はオバマ氏は11月の選挙でマケイン氏に敗れると見越しており、2012年に老齢に達するマケイン氏後継としてホワイトハウス入りを狙っているというのです。

周到に夫婦の間で役割分担が決められており、党大会前のヒラリーのオバマ氏に対する支持演説はどこかよそよそしいものとしておいて、それを補うかのようにビルが党大会では個人的なタッチで全面的な支持を打ち出してみせるという演出があったというのです。夫婦の間の競争意識もあったのではとの憶測も出ています。

ヒラリーは、「最終的な決選投票に持ち込むことなしに」オバマ候補を支持するという演説で喝采を受けましたが、これも計算された自己存在の誇示であり、オバマ氏に対する恩を売る行為として解釈されています。そしてビルが党大会で行ったオバマ氏への支持演説も、「自分の大統領としての経験からしてオバマ氏は大統領としての資格十分である」と表現したのは、いやみな自己顕示に充ちたものだと解釈されています。

しかし、2012年には、ヒラリーも60歳半ばに達し、「若さと変革」も「経験」も有効打とできない候補になってしまうことを考えると、どんなことを今回しても、2012年においての勝ち目は薄いのですから、ビルとヒラリーは党大会で、最後のショーを披瀝して、ともに「過去の人」(history)になったのだと締めくくられています。

パリス・ヒルトン快楽主義大統領候補?The president of hedonism

2008-08-10 | 米国・EU動向
マケイン共和党大統領候補が、オバマ候補をテレビCMで「セレブ気取り」だと攻撃した際に、「脳タリン(airhead)セレブ」のイメージとして、パリス・ヒルトン嬢の姿をバックに映し出しました。このコマーシャルは、ヒルトン嬢の事前許可を取っていなかったことから、事態は興味深い展開を見せています。

ヒルトン嬢は、インターネットサイト’Funny and Die’に水着の可愛いしぐさで登場して、高らかに宣言して見せました。「わたしはジッチャマとは年が合わないのよ。それにもう一人の男みたいに「変革」を約束なんかしないわよ。わたしはただのホット(hot)な女の子よ。」

そして、マケイン候補に極め付きのきつい一言「わたしはね、米国民の皆様に、ナンツーか、ほら、“いつでも大統領になれる”ってさ 分かってもらいたいのよ」。いつでも大統領になれる(ready to lead)はマケイン候補の宣伝文句であります。

ホテル王の孫にして、二流俳優、スキャンダラスな話題を肥やしに颯爽と生きてきた彼女は、マケイン候補になんと「頭脳プレー」で一本取った形になりました。彼女は、この出演で見事第一線カムバックを果たしましたが、サイトの創設者の一人Adam Mackay氏の脚本どおりの演出によるものであったのです。

この政治パロディは、5百万の視聴者が見たのでありますが、巨額の資金をつぎ込む両陣営のTVコマーシャルによる下品な選挙戦に、さわやかな笑いを提供したのは皮肉です。そしてなにより彼女は自分自身を笑いの対象にすることによって、「頭の良さ」を演じて見せて、好感度を急上昇させました。




オバマ候補試練の旅 Jerusalem: the undivided capital

2008-07-24 | 米国・EU動向
オバマ民主党候補の始めての中東・欧州歴訪によって、大統領選の焦点が米国の外交政策、特にイラク・アフガニスタン・イラン・パレスチナというどれをとっても極めて難しい領域に移って来ました。

特に、あえて今ミサイル発射実験に踏み切って挑発するイランに対して、イスラエルが核やミサイル施設の破壊のための攻撃を行う可能性を否定出来ない状況となっています。

オバマ候補が「エルサレムは、不可分のイスラエルの首都(the undivided capital of Israel)である」と失言し撤回したことに対して、ABC放送のアンカーマンCharles Gibbsonに現地インタビューで詰め寄られ「新米(rookie)のヘマとは言われたくない、ベテランだって失敗するのだから」とかわさざるを得ませんでした。

そんな中、オバマ候補は、「核を持ったイランは、イランとの戦争よりも悪い」とタカ派発言を続けるマケイン共和党候補に、イスラエル問題では世論支持の観点で大きく水をあけられています。米国内のユダヤ人支持を失えば選挙の勝利が危うくなりかねません。

そこで、オバマ氏は、今回「イランの核保有に対するイスラエルの懸念を共有する。米国とこのユダヤ人国家の間の長年の緊密な関係を維持したい」と発言し、イスラエル政府から暖かい歓迎を受けました。一方同氏は、パレスチナ政府のAbbas大統領とも会談し、「自分が大統領になったら、イスラエルーパレスチナ和平条約に寸暇を惜しんで取り組む」とも同時に言明しました。

そしてさらにバランスを取るため、ロケット攻撃を受けたイスラエル側の村にまでわざわざ出かけて、「誰かが自分の家にロケットを打ち込んで娘二人の命が危ないとしたら、あらん限りの力を行使してそれを阻止するのは当然」と発言しました。

世論の支援全般ではマケイン候補をしのぐオバマ候補ですが、イラク撤兵問題の扱いを含めて、この歴訪の旅が大統領選挙の行方を決定するといっても過言ではありません。

オバマ候補イラク訪問 Time table for troop withdrawal

2008-07-21 | 米国・EU動向
オバマ民主党大統領候補は、アフガニスタンに続いて最も注目されるイラクに入ります。この訪問を前にして重大な事態の展開がすでに起こっています。

まずイラクのマリク首相は「今後の米軍のイラクにおける役割を規定する条約を結ぶに当たって、米軍のイラクからの撤退の予定が含まれるべきである」との発言をすでに7月にはいってから行っているのです。

一方、撤兵問題を話すことを頑なに拒否してきたホワイトハウスも、劇的に方針を変換して先週、「ブッシュ大統領とマリク首相は更なる撤兵のための大まかな時刻表を設定することで合意に達した」と公表しています。

オバマ候補は、「大統領に就任したら月に2個旅団づつ撤兵し、16ヶ月で撤兵を完了させる」と公約してきましたが、先般「現地軍司令官と話してから自分の
方針を精緻なものにする(refine my policy)」とやや後退とも取れる発言で物議を醸しました。(7月10日「オバマ右旋回参照」)

大統領選の今後に重大な影響のある、このイラク訪問後のオバマ候補の発言に注目いたしましょう。

米国の三人の魔女 Three Witches:Blowing in the wind

2008-07-18 | 米国・EU動向
米国経済は、上半期の成長は大方の予想に反して堅調でした。しかしながら周知のごとく住宅市場・金融市場・商品市場の混乱は収拾の見通しが立っていません。

こうした状況を目の前にして、FTの解説記事は、これら三つの市場の混乱をシェークスピアの「マクベス」第一幕・第一場に登場する三人の魔女にたとえています。

さて、米国生まれの「三人の魔女」のほうは、昨年忽然と現われたのですが、一年たってもまだ米国内を徘徊しています。第一幕サブプライムの場、第二幕モノラインの場が終わり、第三幕フレディ・ファニーの場が始まりました。

この後の筋書きでは、一時的に回復した経済成長も、年末にはリセッションに引き戻されるであろうというご託宣です。すなわち住宅・金融・商品市場の混乱は、まだまだ続き、嵐の中を「風に吹かれて」(blowing in the wind)さまよう魔女たちのごとくであろうと。

さて魔女たちが別れてマクベスのところへ飛んでいくときの言葉は、「いいは悪いで悪いはいい、濁った霧空飛んでいこう」でありました。何が「いい」で、何が「悪い」のか年末にはっきりするでしょう。(注:小田島雄志氏の翻訳を借用)


EU加盟がトルコを救うか Talking Turkey

2008-07-16 | 米国・EU動向
トルコで、国家転覆を謀ったとして、極右のジャーナリスト・実業家・退役軍人のグループ86人が、逮捕・起訴されました。

このグループは故意に騒擾状態を作り出して、軍部の現イスラム政党AKP政権に対する軍事クーデータによる介入を誘発させようとしたというのが訴因です。

トルコの歴史は、建国の父アタチュルクの政教分離主義(secularism)を軸としたトルコ憲法の守護人を持って任じる軍部が、トルコの経済・政治混乱の収拾にクーデータを以って「世直し」をしてきたことの繰り返しでもあります。

現在憲法裁判所が、婦人のスカーフ着用を推進するAKPの「非合法化」の訴えを審理中です。こうした中でトルコ国内は、AKPに敵対する勢力が、暴力に走り始めて国内の政情は危機状況にあります。

EUがトルコの加盟を、従来のタイムテーブルを無視して事実上棚上げにしてからはトルコ国内には対EU失望感が蔓延していることも、国内問題に集中させている大きな理由であるとされています。

FTの論説は、「トルコの民主的制度の護持と両派の自制」を求めるとともに、「トルコのEU加盟」承認こそが、トルコにその道を歩ませる最善の選択であると主張しています。

その見出しは”Talk Turkey"であり、これは米語の”表現”Talk turkey"のturkey(七面鳥)をTurkey(トルコ)と大文字で始めて使った言葉遊びにもなっています。

"Talk turkey"とは「まじめに話す、インチキ無しに話す」という慣用句です。白人がアメリカ原住民を愚弄してだましたエピソードが下敷きにあります。見出しの意図するところは、「トルコを愚弄しないで、まじめにEU加盟を論じよ」ということです。

オバマドイツでの演説予定で悶着 Friction over speech venue

2008-07-14 | 米国・EU動向
オバマ米国大統領候補は、今週末から外遊の予定を組んでいます。訪問予定国として、独・仏・英・イスラエル・ヨルダンは固まったとみられますが、問題のイラクとアフガニスタンは調整中のようです。

欧米各国の首脳は、オバマ氏の外交政策に非常に懸念を示しており、特に先週ミサイル発射実験を行って核ミサイル保有の意図をあらわにして、中東安定化努力に挑発行動に出てきたイランにどういう政策を取るのか、確かめようとしています。

オバマ氏は、予備選挙序盤では、「イランとは無条件で交渉に入る」、また「イラクからは16ヶ月以内に全面撤退をする」と明言していました。

しかし民主党候補に決まってからは、それぞれ「イランは脅威である。国際的制裁を加えるべき」、「地上軍司令官から直接話を聞いて、対イラク政策はrefineする必要が出てきた」と軟化させています。

ところで、オバマ氏は、今度の訪独中に、ベルリンの象徴とも言うべきブランデンブルグ門の前で、選挙演説をすることを計画中であるとの意向を示したことから、メルケル首相を困惑(bewilderment)させてしまいました。

ブランデンブルグ門は、東西緊張時代の象徴でもあり、過去アメリカ人でこの前で演説を行ったのは、ケネディーとレーガン大統領のみです。メルケル首相は、オバマ氏に演説を許すことで、同氏支持を表したととられかねないことを潔しとしないのです。

メルケル首相はマケイン共和党大統領候補を、実は応援しているのだという説もありますし、ホワイトハウスから、させないようにとの圧力があったのだとも言われています。

欧州首脳からはどんな人物かまったく分からない「未知数」とされ、国内では外交は「未知数」との共和党からの攻撃を受けているオバマ氏の大きな試金石となる欧州・中東行脚となりそうです。

オバマ右旋回 'not just flip-flop but betrayal'

2008-07-10 | 米国・EU動向
米国民主党の大統領候補に正式に決定したオバマ氏が、中道から右の選挙民の票を強く意識して、主張を変節(flip-flopping)させたとの、党内外から批判が出ています。

オバマ氏はこうした批判に対して、「非難している人は、わたしの発言をきちんと聞いていない」と反論しています。

問題とされているのは、左右で意見が大きく異なる、堕胎容認・銃所有制限・令状無しの電話盗聴捜査権などです。

しかし最も注目を集めているのは、「イラク戦争の終結と16ヶ月以内の完全撤兵」方針に関わる問題です。イラクの治安強化のために行われた集中増派の効果が出ている状況を前にして、オバマ氏は「イラクへの現地視察を行い、現地駐留軍司令官と対話をすれば、方針を'refine'することになるだろう」と発言しました。

この'refine my policies'は微妙な表現で、いくらでも解釈可能な言葉でありますが、オバマ氏は非難の嵐に「撤兵問題のことを言ったのではない」と釈明しています。

撤兵するのかしないかを意味したのか、そうでなかったのかという詮索よりも、あれほどはっきりものを言って、「change-変革」を主張してきた同氏が、曖昧な物言いをする人に、「変化」したことのほうが大きな問題かもしれません。

サルコジ野次将軍: Sarkozy the heckler

2008-07-09 | 米国・EU動向
サルコジ大統領の就任後一年が経ちましたが、その挙動は激しいものがあります。

洞爺湖サミットに来日しながら、首脳の中でただひとり福田首相との指しの会談を拒否したとのことです。

いま同大統領は回りもちのEU大統領の職にありますが,EUの各機関を矢継ぎ早に批判しています。European Commisionに対しては、「globalizationの悪影響からEUを守るという役割を果たしていない。WTOとの交渉態度も納得できない」と噛み付いています。また最近利上げに踏み切った欧州中銀(ECB)には、「効果なし。マゾ的利下げだ」と批判しました。

FTは、同大統領の改革政策に賛意を表しながらも、この行儀の悪さには、顔をしかめているようで 'reckless, radical and sometimes also right'と苦しい論評を加えています。

派手な大統領も、地味な首相もいいところも悪いところもあるということなのでしょう。

大統領選挙資金 Campaign finance rules in a mess

2008-06-23 | 米国・EU動向
米国大統領選挙の選挙資金法は、大企業献金やロビーストの影響を排除をめざして1976年に大幅な改正が行われました。

この結果、企業献金は原則禁止され、個人または、政治活動委員会(PAC)を設立してそこを通した献金のみが認められています。また個々の献金の上限額も、予備選と本選に分けて厳しく遵守が求められています。

一方、選挙資金を集めることが難しい候補を支援するために、個人献金に対応した額の公的資金を注入する制度もあります。しかしこの制度を利用すると、各候補の選挙資金の総額は、約8700万ドルが上限となります。

この制度は、これまでは企業献金の少ない民主党候補の支援策と考えられえてきたのですが、インターネットを介した個人献金を大量に集めることが出来たオバマ候補には却って邪魔になってしまったのです。

オバマ候補は、潤沢な個人献金と高い支持率を背景に、公的資金の利用を断ることを表明しました。マケイン陣営の強い州で強力なTVコマーシャルを打つには、無制限に資金を使いたいというのが本音といわれています。

マケイン候補は、これを「変節」と言って、強く非難しています。

EU統合強化Lisbon条約に、Irish 'No'ー政治統合に危機

2008-06-15 | 米国・EU動向
欧州連合(EU)加盟27ヶ国の、政治的統合を強化し、意思決定の迅速化・決定プロセスの民主化などを目指したリスボン条約の批准に関して、アイルランドの国民投票結果、53.4%:46.6%で否決されてしまいました。すでに18ヶ国で批准が完了していますが、このアイルランドの否決は、推進派にとっての重大な痛手となります。

現在、好調を続けるEU経済を背景にドルを凌駕する勢いで快進撃を続けてきた通貨ユーロを盾にして、一気に勢力拡大を図りたいところでしたが、小国アイルランドの、「一票」が水を差しました。


今後他の加盟国の批准手続きは予定通り進められことは間違いないと思われますが、アイルランドの再批准をいかに引き出すかが、政治的課題になります。いずれにせよ、新体制が実現するにしても当初予定より、数年の遅れとなルのは確実です。

27ヶ国という大所帯が、整列して一気に行進するのはやはり、無理なのでしょうか?

Clintonの敗因: メッセージではない、カネだ

2008-06-13 | 米国・EU動向
クリントン民主党大統領候補の敗因について、選挙参謀であったMark Penn氏がNew York Timesに寄稿して「敗軍の将、兵を語り」ました。その見出しは;

”The Problem Wasn’t the Message ・It Was the Money ”

クリントン氏が発した「経験」(experience)、オバマ氏が発した「変革」(change)の勝負でもありましたが、オバマ氏の集金能力は、2008年に入ってからは、常にクリントン氏のそれを凌駕してきました。

草の根からの小額の寄付を大量に集めることが、大量のTVコマーシャルを打つことに通じ、さらにカネが集り、票が集るという循環に入ったわけです。そしてその集金には、インターネットが大きな力を発揮しました。

クリントン氏のワシントン政界での「経験」、ペン氏の過去の選挙運動の「経験と実績」が逆作用するほど、米国の社会は変革を求めているのでしょう。選挙戦はマケイン氏の「経験」との闘いになります。