ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

学校Ⅲ

2007-01-30 | 映画
私が撰ぶ山田洋次作品ベスト3の1本。
あと2本は「遙かなる山の呼び声」と「息子」
先日観たばかりの「武士の一分」も入れたいところだが、
この3作への思いにはかなわない。

特にこの「学校Ⅲ」は、至上のラブストーリーとして不動の位置にある。
この映画は山田洋次の「学校」シリーズの3作目。
リストラや倒産で職を失った中高年の人々が通う職業訓練校が舞台。
確かに前2作同様「教えること」「学ぶこと」「学校とは」
といったテーマが根底にあるのだが、
私はこの映画、まれに見る良質なラブストーリーだと思っている。

中高年の男女の恋愛映画なんて、若い人にはうっとおしいだろうし、
同世代の者にとっても、どこかうら悲しく切ないものだ。
しかしこの映画の二人にはそれがない。
それはたぶん二人の関係が「恋愛」などという甘い響きの結びつきではなく、
もっと切実に「生きること」の上に成り立っているからだ。
しかもつつましく、つつましく、羞じらいながら惹かれあう。
お互いの人生に足を踏み入れるのを躊躇しながらもそっと求め合う。
人は支えあうことで生きることを輝かすのだと教えてくれる。

街をいけば、どこかですれ違っているかもしれない、
少しくたびれた男と女の話を、
これほど良質なラブストーリーにしてみせた山田洋次の才能に、
私はこの映画を見るたびに感嘆してしまうのだ。