ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

トランスアメリカ

2007-01-28 | 映画
DVDレンタルにて。
身体は男性として生まれながら、心は女性であるブリーの物語。
ひっそりと静かに暮らし、こつこつとお金を貯めて、
念願の性転換手術を受けようとしていた矢先、
大学時代にたった一度関係をもった女性に息子がいたことを知らされ、
カウンセラーの薦めで彼に会い、売春で稼ぐ息子をほおっておけなくなる。
そして、NYからロスまでの二人のアメリカ横断の旅が始まる。

これだけ書いてもすさまじいドラマです。
しかし映画は静かに淡々とやさしく二人を包み込んで進んでいきます。
これはひとえに、フェリシティ・ハフマン演じるブリーの存在に拠るものです。
普通とは違う自分を受け入れること。
苦しみもがきながらも自分に正直に生きること。
ハイヒールをはいて時々よろけそうになりながらも、
背筋をのばして、前を向いて進むこと。
苦しみの果てにたどり着いたであろう彼女の静かな佇まいが、
深く深く胸を揺さぶります。

この役を演じたフェリシティ・ハフマンにも大きく心を揺さぶられます。
彼女の勇気は並大抵のものではない。
彼女も何かを「トランス」してこの役に挑んだのだと思います。
それはこの映画が語るに足る物語だったからでしょう。
語るに足る物語を、勇気をもって挑んだ役者が更に素晴らしいものにする。
この映画はその見事なお手本のような映画です。