ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ナンバー23

2007年12月09日 | 映画レビュー
 見ている間はそれなりにドキドキもしたけれど、見終わって数日経つと早くも印象が薄れている作品。シューマカー監督作は面白いものが多いから期待したんだけど、その割にはいまいちか。ただ、脚本を書いたファーンリー・フィリップスは本作がデビューというから、その割には大変凝った作品を書いたと評価できるだろう。これは「23」という数字に異様にこだわりとらわれていく男のサスペンス。

 世の中には数字に拘る人間がけっこういて、すぐに験を担ぎたがる。結婚式に渡す祝儀は絶対に奇数だしね、それも9万円とかはダメで、1,3,5,と相場が決まっている。4は不吉だとかいって嫌がるし、わたしなんて誕生日が4月4日だからわたしにとっては4はラッキーナンバーだと思っているのに、東アジアに住む多くの人はこの数字を忌み嫌い、病院なんて4号室がなかったりするもんね。

 こじつければいくらでも数字には拘ることができる。平凡な生活を送っていた動物管理局の職員ウォルターはある日、偶然古書店で妻が見つけた自費出版小説『ナンバー23』を読み、自分の人生と酷似していることに恐怖する。作者は誰か? 小説の中にちりばめられた「23」という数字の謎は? 22章で終わっている小説の23章はどこにあるのか? 23に拘り神経衰弱に陥るウォルター。やがて彼の周りには過去の殺人事件の匂いがまとわりつく…

 小説世界と現実世界が交互に描かれ、どちらの主人公もジム・キャリーが演じる。登場人物は小説も「現実」も同じ役者が演じていて、その差異がまた印象的。

 この映画を見ながら思い浮かんだのはつい最近読んだ、松島恵介著『記憶の持続 自己の持続』だ。「過去の私」と「現在の私」との関係としての記憶と忘却をめぐるたいへん興味深い本で、あまり書くと映画のネタバレになるのでやめるけれど、松島さんの本を理解する応用問題としても見ることができる、と感じた。

 人は自分の責任を引き受けることによって倫理的存在として自我を存立させることができるのではないか。本作はそのことを強く印象づけるラストになっている。この映画は、人間とは何か、「私」とは何か、「私」とは誰かを深く問いかける示唆に満ちた作品であり、そういう深みを秘めているのだが、残念ながらできあがった作品は安易にサスペンスに流れた嫌いがある。 

 でもまあ、面白かったです。賛否両論が分かれそうな作品。期待せずに見ましょう。(R-15)


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THE NUMBER 23
アメリカ、2007年、上映時間 99分
監督: ジョエル・シューマカー、製作総指揮: リチャード・ブレナーほか、脚本: ファーンリー・フィリップス、音楽: ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演: ジム・キャリー、ヴァージニア・マドセン、ローガン・ラーマン、ダニー・ヒューストン、リン・コリンズ、ローナ・ミトラ

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