ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

題名のない子守唄

2007年10月13日 | 映画レビュー
 泣いたわ! ラストシーンでいきなり涙が噴出。トルナトーレ監督の作品ってこういう泣かせ方が上手です。

 題材は実は陳腐だ。虐げられた可哀想な女が懸命に生きるのに、苦難が襲い掛かってきて…というお話。主人公の美しい女に観客は思いっきり同情するし、「母性」がテーマということで女性客の心をつかみやすい。謎をちりばめて緊張感のあるストーリーでぐいぐい引っ張るし、子役が可愛いのですっかり画面に目が釘付けになるし、エンニオ・モリコーネの音楽は美しいし…。というわけで、かなりエンタメ性の高い作品。

 サスペンスだけれど、おそらくほとんどの観客には先が読めるし、「謎の女」の正体はわりと早くから察しがつく。それでも演出がうまいので緊迫感が最後まで持続する。モリコーネの音楽は相変らず美しい。ただちょっと、鳴らしすぎてうるさいとも感じた。あまりやるとベタベタ感が高まるのだ。



 貧しい国ウクライナからやって来た若い女イレーネが、なぜか大金を隠し持っていたり、策を弄してでもある家に家政婦としてもぐりこんだりする。彼女は誰なのか、過去に何があったのか、何を狙って金持ちの貴金属商の家にもぐりこんだのか。

 イレーネの過去はフラッシュバックで挿入される。最初のうちはほんの一こまだけのカットで、やがて過去の場面が徐々に長くなり、最後には彼女の過去の傷のすべてが露にされる。彼女が勤める家庭には4歳の愛らしい少女テアがいて、最初のうちこそテアはイレーネに打ち解けなかったが、間もなく二人は大の仲良しになる。イレーネとテアの心のふれあいがじっくり丁寧に描かれ、イレーネのテアへの並々ならぬ愛情が不可思議なものでありながら心を和ませるもものとして観客の心情にしみいってくる。

 イレーネがやって来てから、テアの家庭の周りでは次々に事件が起き、やがてイレーネの過去が観客の前にすっかり明らかにされるころには事態は悲劇へとまっしぐらに落ちていた…

 

 ラストシーンは、悲劇にもめげずに明るい希望を失わない「未来」を約束している。その一瞬の光に思わず涙した。最後の最後、イレーネのかすかな笑みを見た瞬間、劇場内では涙をすすりあげる音が蔓延した。移民と犯罪という社会問題を背景に、虐げられる女性の悲しさと強さとしたたかさを描いたスリリングな作品。お奨めです。子役の芸達者ぶりと愛らしさに感激。(R-15)

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LA SCONOSCIUTA
イタリア、2006年、上映時間 121分
監督・脚本: ジュゼッペ・トルナトーレ、製作総指揮: ラウラ・ファットーリ、音楽: エンニオ・モリコーネ
出演: クセニア・ラパポルト、ミケーレ・プラチド、クラウディア・ジェリーニ 、ピエラ・デッリ・エスポスティ、アレッサンドロ・ヘイベル、クララ・ドッセーナ、アンヘラ・モリーナ、マルゲリータ・ブイ

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2 コメント

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Unknown (パープルローズ)
2007-10-15 23:10:00
ピピさん、こんばんは。
これは私も大変おもしろく見ましたが、ただ音楽がうるさくてたまりませんでした。もっと静かに見たかったよ~。
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お久しぶりです (ピピ)
2007-10-16 21:21:36
 パープルローズさん、コメントありがとうございます。相変わらずたくさんご覧になっているようで、何よりです(^^)。
 
 そうですね、この映画を見ながらサントラがほしいと思いましたが、一方で「こんなにうるさく鳴らさなくていいのに」と思いました。せっかくの緊迫感が安っぽくなりますね。

 これから何をご覧になりますでしょうか? 秋の夜長は映画の季節。また予定を知らせてくださいませ(^.^)
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