ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

「ソラリスの陽のもとに」

2003年07月30日 | 読書
 映画「惑星ソラリス」、そのリメイクの「ソラリス」、そして原作の「ソラリスの陽のもとに」

 この3作はいずれもよかったが、なかでも一番感動したのはタルコフスキーの「惑星ソラリス」だ。映像も美しく、心の奥底を震わせる深い内容をもっていた。タルコフスキーの映画は、原作が持つ科学小説らしさをそっくり削ぎ落としてしまっている。そこが賛否両論を生みそうだが、わたしはむしろタルコフスキー作品のほうが人間心理の襞を深く描いた良品だと思う。

 原作を読んで初めてわかったが、ソダーバーグは原作を映画化したのではなく、タルコフスキーの作品をリメイクしたのだ。タルコフスキー作品の細部は忘れてしまったので、再度見てみたい。DVDも買ったことだし。

 原作でもやはりソラリスが生んだ「妄想の産物」の正体は詳しく描かれていない。妄想のうち、登場するのはハリーという美しい娘だけだ。映画ではもっと歳くってるように見えたが、原作では19歳だった! 主人公クリス以外の科学者たちがどんな妄想を無意識世界に住まわせていたのか、そしてそれがどのように物体化したのか、それは謎のままであった。であるからして、余計に読者の興味をそそってしまう。ソラリスの海は結局謎のまま残された。


 原作者の意図を大きく変えてタルコフスキーは映画化していたことも本書を読んで判明した。映画は原作を超えたね、この作品に関して言えば。


書誌情報

 ソラリスの陽のもとに
  スタニスワフ・レム著 ; 飯田規和訳. -- 早川書房 1977. -- (ハヤカワ文庫 ; SF237)


映画の感想はHPに掲載。「惑星ソラリス」。 「ソラリス」