岐阜県議会議員 太田維久(おおた・まさひさ)のblog

再生、飛躍、「政策維新」
生活を支え、生命を守る政治を実現する。

一般質問(2)

2009年07月03日 20時35分21秒 | 県政全般
引き続き一般質問の本文。

<代替案について>

河村市長は、事業から撤退を検討している理由として「農業用水が余っている」と挙げています。これが本当かどうかは愛知県議会でも議論になったのですが、異常渇水時に農業用水に協力要請をするルールづくりは導水路事業の代替案として検討に値すると考えます。
度々触れていますが、この890億円という莫大な経費を費やすと言われる事業には、本当に代替策がないのか改めて問わなければなりません。より経費をかけないで同等の渇水対策効果を挙げられる方法があるならば、可茂・東濃地区の渇水対策を考えたい岐阜県としても、そちらを選択するべきでしょう。財政状況厳しい折、経費がかからない代替案がないか、まず真剣に考えてから事業の協議に入ることこそが、取るべき段取りであったと言えます。
木曽川の犬山頭首工から取水している濃尾用水は毎秒51トンを水利権としています。この量は名古屋市が持っている水利権・毎秒20トンの倍以上です。愛知県の宮田用水、木津用水、そして岐阜県の羽島用水の三つの土地改良区が利用しています。報道によりますと、河村市長は異常渇水時の水の確保として、これらの農業用水に協力を求めることを検討しています。
濃尾用水の土地改良区における水田面積の推移を、私の知人のコンサルタントが調査したのが<資料1>です。濃尾用水の地区の受益面積は都市化による農地の宅地・工場・ショッピングセンターなどへの転換で著しく減っています。昭和42年に濃尾用水事業が完成してから平成17年までのおよそ40年間に宮田用水で46%の減少、木津用水で58%の減少、羽島用水でも39%の減少、全体でおよそ20500haからおよそ8600haへ、実に48%も減少しているということです。もちろん単純に、農業用水が半分しか要らなくなったというものではありません。宅地化で農地が点在するようになって、用水が末端まで行き渡りにくくなったなど、不便をしている農家もあるでしょう。しかし濃尾用水全体で受益面積が半分になっているのに、40年ほど前の水利権水量を絶対に確保せねばならないというのは疑問を持ちます。調査検討を行う余地があるでしょう。
異常渇水時に農業用水に協力を求めることは、土地改良区側もメリットがあるはずです。協力の見返りとして土地改良区に補償金支払うルールをつくれば、都市用水、工業用水を使う側とともにメリットは出てきます。財政負担という点では自治体、国にもメリットがあると考えられます。

統計的に木曽川水系も水資源の減少傾向は起きているようで、可茂・東濃地区で安定した水の供給を目指すのは当然のことです。しかし、いま挙げたような、農業用水に協力要請するルールづくりについて、導水路事業を協議するとき選択肢・代替策として県内自治体を含めた関係者に示して、よく考えてもらう必要があったはずです。
可茂・東濃の渇水対策について、知事がおとといのご答弁で触れられました。導水路事業には三つの役割があるとご説明されたなかで、▼異常渇水時の河川環境対策、▼愛知県・名古屋市の水の確保、それに▼可茂・東濃の渇水対策と述べられました。
国土交通省が示している費用負担割合<資料2>について改めて申しますと、岐阜県は治水、つまり異常渇水時の河川環境維持のためとして29億7000万円を負担するとなっています。ところが、私が個別に担当課から伺ったところでは、「可茂・東濃の渇水対策として29億7000万円を負担すると理解している」とのお話でした。この県のご見解と、国土交通省が示した費用負担の割合との間で、食い違いがあると思うのです。
このようなことを敢えて持ち出すのは、財政から負担をするには、根拠や法的・制度的な裏付けが明確であって、県民のみなさまに情報開示して、十分ご説明する必要があると考えるからです。導水路事業に関する一連の流れのなかでは、そうした点が欠けていて、理由の後付けと思える点が散見されることを指摘したいと思います。

<質問>
 そこで県土整備部長にお伺いします。異常渇水時に農業用水に協力要請するルールづくりですが、導水路事業を取り組むにあたって選択肢あるいは代替案として検討し、関係者に提示したことはあるのでしょうか。ないようでしたら、それはなぜでしょう。また今後、そうした代替案を、岐阜県として農林水産省、国土交通省などと諮るお考えはお有りですか。
費用負担にの目的ついて、県は可茂・東濃の渇水対策のため、国土交通省は治水=異常渇水時の河川環境対策のためとしていて、食い違いが見られます。なぜでしょうか。どちらが正しいのですか。ご説明をお願いします。
そして、国の水資源開発基本計画や、これまで進められてきた三県一市の協議の中で、導水路事業を可茂・東濃の渇水対策として位置付ける考え方はいつから、どのようにして浮かび上がってきたのでしょうか。
また、大型公共事業については財政負担「費用」と投資効果「便益」とを秤にかけて「費用」が「便益」を上回ると判断された場合、いったん立ち止まって検討することが当たり前になっています。可茂・東濃の渇水対策として費用負担をするのなら、費用対便益比どのようなものになるのでしょうか。そうなると、国が示している河川環境対策の費用対便益比も変わってくるのでしょうか。

<後説>
 水資源開発事業は莫大な経費と長い年月を要するもので、私たちはその恩恵に浴してきました。しかし、県の長期構想でも触れられているように、右肩上がりの成長の時代は去りました。人口減少時代を迎え、環境配慮から工場や家庭でも水の使用量は抑えられ、農地は宅地化や工場・ショッピングセンターなどに姿を変えています。かつては有効であると考えられていた大型事業を見直す時期を既に迎えています。
 平成6年のような大渇水への対応が語られますが、「岐阜県史・通史編 続・現代 第四章」で述べられている平成6年渇水の教訓として、ダムへ依存しすぎへの緩和、木曽川に設定された水利権・水利用ルールの再吟味、水源ダム枯渇後の河川自流水利用調整ルールの必要性が挙げられているのです。
今議会では行財政改革に係る多くの議論も行われています。三県一市いずれも財政は厳しい状況ですから、財政への負担・水需要の実態を考慮して代替案を検討し、岐阜県としても、川辺川ダムを止めた熊本県、大戸川ダムを止めた大阪府や滋賀県などのように、国を地方から動かしてゆくべき、とお訴えしまして、ひとまず質問を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

一般質問(1)

2009年07月03日 20時34分26秒 | Weblog
 本日、一般質問最終日で「木曽川水系連絡導水路事業について」として登壇した。質問本文と答弁をご紹介する。

<前説>
議長のお許しをいただきましたので通告に従いご質問いたします。今議会では木曽川水系連絡導水路事業について、様々な立場から活発な議論が行われており、知事はじめ執行部の皆様に置かれましては、推進・慎重、それぞれのご意見を重く受け止めて、今後に反映していただければと思います。
私は行財政改革の視点と水需要、代替案、そして費用負担の点を考えまして、岐阜県にとってもいったん事業を凍結し、関係県市と国でしっかり再検討をすることが望ましいと論駁いたします。

<行財政改革>
まず、行財政改革の視点です。
今年3月に行財政改革指針が策定されました。このなかでは諸々(もろもろ)の事業について「優先順位をつけながら抜本的見直しを行う」としており、「特に重点的に行政資源を投入して取り組む」のは「長期構想の重点プロジェクトに位置づけられた事務事業」としています。
ところが木曽川水系連絡導水路事業は「長期構想重点プロジェクト」のなかに挙げられていません。長期構想第五章「県が取り組む政策の方向性」のなかに「(5)異常渇水に備えた対策を進める」とあり、「◇ダムに確保された水資源を有効活用し、水の安定的な供給を図る」とだけ記載されています。
長期構想の策定の趣旨は、本格的な人口減少など、時代の変化を真摯に受け止め、これまでの政策を検証し、何に力を注ぐのか県民の皆様に正しくお示しをすること、のはずです。県の負担金29億7千万円、国の負担もあわせれば全体で890億円もの巨額をかける事業ならば、なぜ長期構想のなかに盛り込まれないのでしょう。
県債総額およそ1兆3000億円、県財政は危機的な状況です。公共事業・基盤整備にかける予算も減り続けています。全てがよしとは思いませんが道路網の整備の方が、地域活性化・経済浮揚効果には有効でしょう。一方で、事務事業経費を切り詰め、職員の給与さえ抑制せざるを得ない状況にまで追い込まれている状況では、国が進めようとする事業であっても必要性・緊急性を厳しく問い直す必要があります。長期構想に明記されていない事業、経済浮揚効果も乏しく、代替案が考えられる事業に、いま手をつけるためには十分に納得がいく説明が必要です。

<名古屋市撤退表明の対応>
今年5月、名古屋市の河村市長が「事業から撤退したい」という方針を明らかにしました。これに対し、木曽川水系連絡導水路事業監理検討会で岐阜県を含む各県からは「三県一市を始めとする関係者が連携・協力して進めてきた経緯を踏まえない」などの意見が出たと報告されています。名古屋市の正式な出方を待っている状況ですが、名古屋市だけが事業から抜けた場合、その分の事業費負担を誰が被るのかという点を真剣に考慮すべきと思います。私は事業から岐阜県も撤退するべきという立場ですが、名古屋市だけが事業から撤退して、岐阜県の負担が増えることにも、もちろん反対です。
仮に名古屋市が撤退したあとは、残った県と国との間で事業実施計画の協議と費用負担の同意が図られます。協議が成立しなかった場合、いままでの事業実施計画は続けられず、規模を縮小した事業実施計画への変更も出来なくなり、木曽川水系連絡導水路事業は止まるしかないと考えられます。

<質問>
そこで知事にお伺いします。
以前からご指摘していますが、連絡導水路事業が本格的に着手された場合、岐阜県の負担は最も多い年度で数億円になると考えられます。これほどの事業が、あぜ重点プロジェクトに盛り込まれていないのでしょうか。行政改革指針で言う緊急財政再建期間のなかで、どうしても進めなければならない事業なのでしょうか。行財政改革の方向性との整合性はどう考えるのでしょうか。ご見解を尋ねします。
また、仮定の話はしにくいのですが、近い将来、名古屋市の態度ははっきりすると思います。撤退を正式に表明する可能性もある訳です。そのケースを踏まえ、岐阜県としては、今後どのような態度・方針で協議に臨むのでしょうか。