引き続き一般質問の本文。
<代替案について>
河村市長は、事業から撤退を検討している理由として「農業用水が余っている」と挙げています。これが本当かどうかは愛知県議会でも議論になったのですが、異常渇水時に農業用水に協力要請をするルールづくりは導水路事業の代替案として検討に値すると考えます。
度々触れていますが、この890億円という莫大な経費を費やすと言われる事業には、本当に代替策がないのか改めて問わなければなりません。より経費をかけないで同等の渇水対策効果を挙げられる方法があるならば、可茂・東濃地区の渇水対策を考えたい岐阜県としても、そちらを選択するべきでしょう。財政状況厳しい折、経費がかからない代替案がないか、まず真剣に考えてから事業の協議に入ることこそが、取るべき段取りであったと言えます。
木曽川の犬山頭首工から取水している濃尾用水は毎秒51トンを水利権としています。この量は名古屋市が持っている水利権・毎秒20トンの倍以上です。愛知県の宮田用水、木津用水、そして岐阜県の羽島用水の三つの土地改良区が利用しています。報道によりますと、河村市長は異常渇水時の水の確保として、これらの農業用水に協力を求めることを検討しています。
濃尾用水の土地改良区における水田面積の推移を、私の知人のコンサルタントが調査したのが<資料1>です。濃尾用水の地区の受益面積は都市化による農地の宅地・工場・ショッピングセンターなどへの転換で著しく減っています。昭和42年に濃尾用水事業が完成してから平成17年までのおよそ40年間に宮田用水で46%の減少、木津用水で58%の減少、羽島用水でも39%の減少、全体でおよそ20500haからおよそ8600haへ、実に48%も減少しているということです。もちろん単純に、農業用水が半分しか要らなくなったというものではありません。宅地化で農地が点在するようになって、用水が末端まで行き渡りにくくなったなど、不便をしている農家もあるでしょう。しかし濃尾用水全体で受益面積が半分になっているのに、40年ほど前の水利権水量を絶対に確保せねばならないというのは疑問を持ちます。調査検討を行う余地があるでしょう。
異常渇水時に農業用水に協力を求めることは、土地改良区側もメリットがあるはずです。協力の見返りとして土地改良区に補償金支払うルールをつくれば、都市用水、工業用水を使う側とともにメリットは出てきます。財政負担という点では自治体、国にもメリットがあると考えられます。
統計的に木曽川水系も水資源の減少傾向は起きているようで、可茂・東濃地区で安定した水の供給を目指すのは当然のことです。しかし、いま挙げたような、農業用水に協力要請するルールづくりについて、導水路事業を協議するとき選択肢・代替策として県内自治体を含めた関係者に示して、よく考えてもらう必要があったはずです。
可茂・東濃の渇水対策について、知事がおとといのご答弁で触れられました。導水路事業には三つの役割があるとご説明されたなかで、▼異常渇水時の河川環境対策、▼愛知県・名古屋市の水の確保、それに▼可茂・東濃の渇水対策と述べられました。
国土交通省が示している費用負担割合<資料2>について改めて申しますと、岐阜県は治水、つまり異常渇水時の河川環境維持のためとして29億7000万円を負担するとなっています。ところが、私が個別に担当課から伺ったところでは、「可茂・東濃の渇水対策として29億7000万円を負担すると理解している」とのお話でした。この県のご見解と、国土交通省が示した費用負担の割合との間で、食い違いがあると思うのです。
このようなことを敢えて持ち出すのは、財政から負担をするには、根拠や法的・制度的な裏付けが明確であって、県民のみなさまに情報開示して、十分ご説明する必要があると考えるからです。導水路事業に関する一連の流れのなかでは、そうした点が欠けていて、理由の後付けと思える点が散見されることを指摘したいと思います。
<質問>
そこで県土整備部長にお伺いします。異常渇水時に農業用水に協力要請するルールづくりですが、導水路事業を取り組むにあたって選択肢あるいは代替案として検討し、関係者に提示したことはあるのでしょうか。ないようでしたら、それはなぜでしょう。また今後、そうした代替案を、岐阜県として農林水産省、国土交通省などと諮るお考えはお有りですか。
費用負担にの目的ついて、県は可茂・東濃の渇水対策のため、国土交通省は治水=異常渇水時の河川環境対策のためとしていて、食い違いが見られます。なぜでしょうか。どちらが正しいのですか。ご説明をお願いします。
そして、国の水資源開発基本計画や、これまで進められてきた三県一市の協議の中で、導水路事業を可茂・東濃の渇水対策として位置付ける考え方はいつから、どのようにして浮かび上がってきたのでしょうか。
また、大型公共事業については財政負担「費用」と投資効果「便益」とを秤にかけて「費用」が「便益」を上回ると判断された場合、いったん立ち止まって検討することが当たり前になっています。可茂・東濃の渇水対策として費用負担をするのなら、費用対便益比どのようなものになるのでしょうか。そうなると、国が示している河川環境対策の費用対便益比も変わってくるのでしょうか。
<後説>
水資源開発事業は莫大な経費と長い年月を要するもので、私たちはその恩恵に浴してきました。しかし、県の長期構想でも触れられているように、右肩上がりの成長の時代は去りました。人口減少時代を迎え、環境配慮から工場や家庭でも水の使用量は抑えられ、農地は宅地化や工場・ショッピングセンターなどに姿を変えています。かつては有効であると考えられていた大型事業を見直す時期を既に迎えています。
平成6年のような大渇水への対応が語られますが、「岐阜県史・通史編 続・現代 第四章」で述べられている平成6年渇水の教訓として、ダムへ依存しすぎへの緩和、木曽川に設定された水利権・水利用ルールの再吟味、水源ダム枯渇後の河川自流水利用調整ルールの必要性が挙げられているのです。
今議会では行財政改革に係る多くの議論も行われています。三県一市いずれも財政は厳しい状況ですから、財政への負担・水需要の実態を考慮して代替案を検討し、岐阜県としても、川辺川ダムを止めた熊本県、大戸川ダムを止めた大阪府や滋賀県などのように、国を地方から動かしてゆくべき、とお訴えしまして、ひとまず質問を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
<代替案について>
河村市長は、事業から撤退を検討している理由として「農業用水が余っている」と挙げています。これが本当かどうかは愛知県議会でも議論になったのですが、異常渇水時に農業用水に協力要請をするルールづくりは導水路事業の代替案として検討に値すると考えます。
度々触れていますが、この890億円という莫大な経費を費やすと言われる事業には、本当に代替策がないのか改めて問わなければなりません。より経費をかけないで同等の渇水対策効果を挙げられる方法があるならば、可茂・東濃地区の渇水対策を考えたい岐阜県としても、そちらを選択するべきでしょう。財政状況厳しい折、経費がかからない代替案がないか、まず真剣に考えてから事業の協議に入ることこそが、取るべき段取りであったと言えます。
木曽川の犬山頭首工から取水している濃尾用水は毎秒51トンを水利権としています。この量は名古屋市が持っている水利権・毎秒20トンの倍以上です。愛知県の宮田用水、木津用水、そして岐阜県の羽島用水の三つの土地改良区が利用しています。報道によりますと、河村市長は異常渇水時の水の確保として、これらの農業用水に協力を求めることを検討しています。
濃尾用水の土地改良区における水田面積の推移を、私の知人のコンサルタントが調査したのが<資料1>です。濃尾用水の地区の受益面積は都市化による農地の宅地・工場・ショッピングセンターなどへの転換で著しく減っています。昭和42年に濃尾用水事業が完成してから平成17年までのおよそ40年間に宮田用水で46%の減少、木津用水で58%の減少、羽島用水でも39%の減少、全体でおよそ20500haからおよそ8600haへ、実に48%も減少しているということです。もちろん単純に、農業用水が半分しか要らなくなったというものではありません。宅地化で農地が点在するようになって、用水が末端まで行き渡りにくくなったなど、不便をしている農家もあるでしょう。しかし濃尾用水全体で受益面積が半分になっているのに、40年ほど前の水利権水量を絶対に確保せねばならないというのは疑問を持ちます。調査検討を行う余地があるでしょう。
異常渇水時に農業用水に協力を求めることは、土地改良区側もメリットがあるはずです。協力の見返りとして土地改良区に補償金支払うルールをつくれば、都市用水、工業用水を使う側とともにメリットは出てきます。財政負担という点では自治体、国にもメリットがあると考えられます。
統計的に木曽川水系も水資源の減少傾向は起きているようで、可茂・東濃地区で安定した水の供給を目指すのは当然のことです。しかし、いま挙げたような、農業用水に協力要請するルールづくりについて、導水路事業を協議するとき選択肢・代替策として県内自治体を含めた関係者に示して、よく考えてもらう必要があったはずです。
可茂・東濃の渇水対策について、知事がおとといのご答弁で触れられました。導水路事業には三つの役割があるとご説明されたなかで、▼異常渇水時の河川環境対策、▼愛知県・名古屋市の水の確保、それに▼可茂・東濃の渇水対策と述べられました。
国土交通省が示している費用負担割合<資料2>について改めて申しますと、岐阜県は治水、つまり異常渇水時の河川環境維持のためとして29億7000万円を負担するとなっています。ところが、私が個別に担当課から伺ったところでは、「可茂・東濃の渇水対策として29億7000万円を負担すると理解している」とのお話でした。この県のご見解と、国土交通省が示した費用負担の割合との間で、食い違いがあると思うのです。
このようなことを敢えて持ち出すのは、財政から負担をするには、根拠や法的・制度的な裏付けが明確であって、県民のみなさまに情報開示して、十分ご説明する必要があると考えるからです。導水路事業に関する一連の流れのなかでは、そうした点が欠けていて、理由の後付けと思える点が散見されることを指摘したいと思います。
<質問>
そこで県土整備部長にお伺いします。異常渇水時に農業用水に協力要請するルールづくりですが、導水路事業を取り組むにあたって選択肢あるいは代替案として検討し、関係者に提示したことはあるのでしょうか。ないようでしたら、それはなぜでしょう。また今後、そうした代替案を、岐阜県として農林水産省、国土交通省などと諮るお考えはお有りですか。
費用負担にの目的ついて、県は可茂・東濃の渇水対策のため、国土交通省は治水=異常渇水時の河川環境対策のためとしていて、食い違いが見られます。なぜでしょうか。どちらが正しいのですか。ご説明をお願いします。
そして、国の水資源開発基本計画や、これまで進められてきた三県一市の協議の中で、導水路事業を可茂・東濃の渇水対策として位置付ける考え方はいつから、どのようにして浮かび上がってきたのでしょうか。
また、大型公共事業については財政負担「費用」と投資効果「便益」とを秤にかけて「費用」が「便益」を上回ると判断された場合、いったん立ち止まって検討することが当たり前になっています。可茂・東濃の渇水対策として費用負担をするのなら、費用対便益比どのようなものになるのでしょうか。そうなると、国が示している河川環境対策の費用対便益比も変わってくるのでしょうか。
<後説>
水資源開発事業は莫大な経費と長い年月を要するもので、私たちはその恩恵に浴してきました。しかし、県の長期構想でも触れられているように、右肩上がりの成長の時代は去りました。人口減少時代を迎え、環境配慮から工場や家庭でも水の使用量は抑えられ、農地は宅地化や工場・ショッピングセンターなどに姿を変えています。かつては有効であると考えられていた大型事業を見直す時期を既に迎えています。
平成6年のような大渇水への対応が語られますが、「岐阜県史・通史編 続・現代 第四章」で述べられている平成6年渇水の教訓として、ダムへ依存しすぎへの緩和、木曽川に設定された水利権・水利用ルールの再吟味、水源ダム枯渇後の河川自流水利用調整ルールの必要性が挙げられているのです。
今議会では行財政改革に係る多くの議論も行われています。三県一市いずれも財政は厳しい状況ですから、財政への負担・水需要の実態を考慮して代替案を検討し、岐阜県としても、川辺川ダムを止めた熊本県、大戸川ダムを止めた大阪府や滋賀県などのように、国を地方から動かしてゆくべき、とお訴えしまして、ひとまず質問を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。