「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?

2009-05-31 11:41:42 | Books
今の社会を襲う世界的な不況や日本の年金問題についてその仕組みを分かりやすく解いた本。手描きの挿絵をふんだんに用い、平易な文体で書かれているところは好感が持てた。内容はニュースや新聞の記事などを理解するための予備知識といったところ。掘り下げない分、客観性が維持できていると思う。ただ最低限の理解を優先しているがゆえ、諸問題に対して自分なりの見解を持つには至らないだろう。

ちょっと気になったのが、著者の持論である「数学的思考力」がことあるごとに持ち出される点。穿った見方かもしれないが、それを宣伝するための実例として経済や年金問題が使われていると思える節さえある(他の書評などを読むと元々そういう位置付けの本でもあるようだが・・・)。著者自身、文章を書くのは不得手と告白しているのだから、そこは割り切ってほしかった。自説の論証というよりキャッチセールスの口説き文句に近い文章は読んでいてちょっと萎えてしまう。

ただ世間一般の評価はかなり高く、自分の感覚とはズレがあるのも事実。おそらく自分の思考回路は著者に近いのだろう。論理的に考えるの好きだしね。それゆえ「数学的思考力」云々については「言われなくてもわかってる」という拒否反応が働いてしまうのかもしれない(苦笑)。

少々辛口トークになってしまったが「理解と習得は違う」という言葉は心に沁みた。好奇心だけで動いていると理解した時点で満足してしまうことが多い。これは昔からの悪いクセで、実際時が経つとかなりの部分を忘れている(苦笑)。最近は自分の記憶力をあてにせず、できるだけ記録を残しておくようになったが、本書でそういった自分の行為を的確に表現する言葉に出会い、目からウロコの気分であった。


Customer Reviews

最新の画像もっと見る