折り返し点 1997-2008 / 宮崎駿

2009-01-27 22:27:58 | Books
「宮崎駿は好きですか?」そうストレートに訊かれたら、おそらく僕は返答に窮するだろう。もちろん好きには違いないのだが、それは "ファン" という括りではないからだ。理屈っぽい表現が許されるならば「一人の人間として非常に興味がある」となる。まだ単なる "ファン" であった頃、彼に関する書籍を手当たり次第読み漁った。それにつれ僕の中で彼の存在は少しずつ変化を遂げてきた。同時に今まで気付かなかった価値観についても色々と考えさせられた・・・。

ジブリ作品が好きで、宮崎駿監督のファンを自認するなら、この「折り返し点 1997-2008」と「出発点 1979-1996」の二冊は読んでおくべきだろう。本人のインタビューや講演、対談などを編纂した資料的色合いの強い構成になっているが、その一つ一つには監督の思想が凝縮されており、そのボリュームもさることながら、とにかく読み応えが十分である。巷ではこれをとってあれやこれやと議論がなされるわけだが、第三者の分析や憶測がいくら束になったところで本人の言葉に勝るものはない。映画から受ける印象でしか彼を知らない人にとっては、そのイメージを壊してしまう発言もあるだろう。しかし彼が「才能の人」である以前に「苦悩の人」であることを理解するだけでも今まで見えなかったものが見えてくるに違いない。それは映画に対しても世の中に対しても言える。

時には専門的な話に傾き、さらっと読んだだけでは到底理解できないものもある。そんなときは無理に理解しようとせず、飛ばしてしまっていいと思う。興味というものは少しずつ芽生えてくるものだし、知識や教養がついてからいつでもその話に戻ってくることができる。まずは重いテーマにとらわれず、自分が興味のあるインタビューから拾い読みしてみるのはどうだろう。映画の裏設定や制作現場の裏話など映画を観ただけでは分からない話も数多い。本人の発言はまさにトリビアの宝庫である。



デジタルメモ 「ポメラ」 / KING JIM

2009-01-26 22:08:35 | PC > Hardware
年始の挨拶で「出先で思い付いたことを手軽に書き留めておけるツールが欲しい」と書きましたが、実はそのとき念頭にあったのがこのポメラという電子メモ帳の存在。ポケット・メモ・ライター、略してポメラだそうですが、今日の多機能化の流れに逆行するかのように、出来ることといえばテキスト文書を作成するだけ。ただひたすらシンプルであることに徹しています。そんな潔さが一部の物書きたちに受け、一時はメーカーすら想定外の在庫不足に陥るほど。

新しい分野のガジェットということで現仕様に関しては賛否両論色々あるようですね。僕自身は手に入れてからまだ間もないこともあり、どういった付き合い方をしていくかはこれからというところ。ただネット上ではすでに数多くのレビューが投稿されており、それらを読めば全体像は掴めるのではないかと思います。ブログは書きたいんだけどパソコンに向かっている時間がなかなか取れないという人はチェックしてみる価値ありですぞ。


ポメラで書くポメラ日記:
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0810/22/news085.html

ポメラ勝手Wiki:
http://www28.atwiki.jp/pomera/pages/1.html



仕事道楽 / 鈴木敏夫

2009-01-18 23:42:32 | Books
 
宮崎駿氏の発言は常に独自の理論に満ちている。その思想の是非は別として、個人的には非常に惹かれるものがある。活字媒体で多くの発言に触れてきたが、いささか理屈っぽいので苦手な人は苦手だろう。一言で言えば頑固親父である(笑)。そんな個性的な監督と苦楽を共にしてきた戦友の一人がジブリ作品のプロデューサー鈴木敏夫氏である。本書では宮崎駿、高畑勲という二大監督との関係を軸として製作現場の裏話が色々と語られる(実際はインタビュー形式で行われた発言を編集者がまとめている)。巷に溢れるジブリ研究本とは異なり、当人だからこそ知りえる話も数多い。また記録よりも記憶を信条とする氏だけに過去の会話を中心とした内容は生の雰囲気をしっかりと伝えてくれる。これが本書の読みやすさにも繋がっていると思う。あわせて「映画道楽」もお奨めしたいが、手っ取り早く氏の話を聞く手段として、TOKYO FM で放送中の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」という番組がポッドキャストでも配信されているので興味のある向きはどうぞ。

ジブリ汗まみれ:
http://www.tfm.co.jp/asemamire/



China Blue / Twilight Of Destiny (2008)

2009-01-12 00:54:44 | Music > HM/HR
 
元 Shy で現 TNT の Tony Mills をヴォーカルに迎えた MHR プロジェクトのデビュー作。ネットの好意的なレビューに触発され、早速聴いてみました。第一印象としてはちょっと期待を膨らませ過ぎたかなぁという感じ(苦笑)。アルバムの出来は決して悪くないと思うんですよ。メロディにはほどよくフックがあるし、プロダクションもいいし、むしろメロディック・ロックとしてはハイレベルの部類かと。ただ楽曲に関しては Shy の "Unfinished Business" や "Sunset And Vine" のほうが好みですね("Excess All Areas" は別格として)。聴き込めばもう少し印象は違ってくるかもしれないですけど、どこか Tony Mills の声に助けられているという印象が強かったです。あくまで主観なのでメロディック・ロック・ファンは是非ご自分の耳で聴いて判断してくださいね。




類語を調べよう! (其の弐)

2009-01-11 12:18:51 | Diary

 
以前類語辞書として使っていた「シソーラス(類語)検索」というサイトがリニューアル後「類語.jp」となり有料化に踏み切ったため、代わりとなるものを探していました。そんな折に見つけたのが「Weblio 類語辞典」というサービス。正直こちらのほうが実用的で使いやすいです(笑)。

記事を書いていると、これはとくにレビューのときに多いのですが、ボキャブラリが貧弱なため、表現が単調になりがち。まあ物書きを生業としているわけではないので、殊更そこにこだわる必要もないのですが、せっかくの機会ですから、語彙を充実させたり、日本語の表現も上達したいなと思うわけです。ひいては記事の読みやすさにも繋がりますしね。そんなとき類語辞典は格好のツールになるんですよ。


Weblio 類語辞典:
http://thesaurus.weblio.jp



Ramos Hugo / The Dream (2008)

2009-01-10 14:25:27 | Music > Rock/Pops
本家があれだけの作品を送り出してきた今、Hugo Valnti と Josh Ramos が組むことはどれほどの意味を持つのだろう。そんな想いを胸にこの作品と向き合いました。言葉は悪いですが、二人には Journey の穴埋め的存在としてその代役を期待し続けてきたことは事実。それが無意識に贔屓目な評価となって表れていたような気がするんですね。ところがここに来て突然その下駄がなくなり、Journey ライクであることのアドヴァンテージは僕の中から失われつつあると。しかしそれはよりフラットな視点で彼らを見つめ直すいい機会にもなりました。

そんな動揺を隠せない書き出しではありますが(笑)、アルバムのオープニング・ナンバー "You're Not Alone" を聴いて数々の不安は吹っ飛びましたね。いきなりエッジの効いたギター・リフが炸裂、かなりの MHR 路線に顔がほころびました。そうなんですよ、きっと彼らにはコイツをやってもらいたかったんです。AOR よりもっとハードで熱いサウンドをね。本家のようなスケール感はトレードオフされた形になりましたが、小粒ながらもパワフルなサウンドは彼らの持ち味になりうるのではないでしょうか。ミックスを担当する Dennis Ward が本当にいい仕事をしてくれました。

Journey が開拓したメロディック・ロック路線を踏襲してもいいと思うんです。ただそこをベースとして据えたとき、どういった形で二人のアイデンティティを確立していくか、真価が問われるのはこれからです。今後も彼らの活動には注目していきたいですね。



環境問題はなぜウソがまかり通るのか

2009-01-09 00:19:04 | Books
 
ダイオキシンの毒性、リサイクルの必要性、急速に進む地球温暖化、どれも今まで当たり前のように受け入れてきた環境問題である。しかし著者はこれらが必ずしも正しくないことを読者に説く。そこに隠された真意とは何なのか。誰が仕掛け、誰が騙されているのか。我々はメディアから流れてくる情報をそのまま信じてしまう傾向にある。しかしそれらは果たして真実なのだろうか。一旦社会通念とみなされたことを翻すのは容易ではない。誰が天動説の時代に地動説を支持しただろう。今なら一笑に付されるような話だが、我々は本当にそれを笑っていられるのだろうか。本書では「ダイオキシンは無害に等しい」、「リサイクルを進めるほうが環境破壊だ」、「地球温暖化はウソである」といったショッキングな持論が展開されている。読み進めるにつれ何が真実なのか、それすらわからなくなってくる恐怖を感じた。大切なのは何事も鵜呑みにせず自分なりの判断基準を持つことであるが、それを痛感させてくれる一冊でもあった。決してトンデモ本の類ではないのでお間違えなきよう。ちなみに本書はシリーズ化され、現在第三弾まで刊行されている。








Jimi Jamison / Crossroads Moment (2008)

2009-01-04 11:53:03 | Music > Rock/Pops
 
Jim Peterik が全面参加したことで話題となった元 Survivor のヴォーカリスト Jimi Jamison の最新ソロ・アルバム。サウンドはまさに Peterik マジック。捨て曲などあろうはずがありません。ただ雰囲気としては Survivor というより Pride Of Lions に近いかな。ピアノは引っ込み気味でギター・リフが主導ですからね。バックのメンバーとアレンジの影響もあると思うけど、おそらくは Jim の作曲スタイルも少しずつ変化を遂げてきているのでしょう。Jimi のヴォーカルは往年のように突き抜けるような高音を前面に打ち出したものではないですが、年を重ねた分、太く厚みのある声になり、これが今の彼の魅力となっています。

Survivor ファンにとってはタイトル・トラックの "Crossroads Moment" が聴きどころでしょう。キーボードは完全に Survivor を意識しています。もろ 80年代の音ですからねぇ。Jim もファンの心理をよくわかってらっしゃる。確信犯が仕掛けたニヤリ間違いなしのキラー・チューンですぜ。そういえば Journey の新作も 80年代を意識したようなサウンドでしたね。我々の世代からすれば懐かしい音であり、グルっと回って今の若いリスナーにとっては新鮮な音なのかもしれませんね。そうそう、キラー・チューンといえば哀愁たっぷりの "Behind The Music" も本作のハイライトの一つですよ。これが本当のマジックなんだとジーンと来てしまいましたもの(またその余韻を上手いこと "Lost" が引き継ぐんだ、まったくニクイ流れだよ)。

最強の声と最強の楽曲、長らくファンが待ち望んでいたものがここにあります。本家の Survivor が混迷を極めている中、その昔、主流を成していた二つの傍流が再び出会ったことは何を意味するのでしょうか。



YouTube 民主主義

2009-01-03 11:23:53 | Books
 
本書はタイトルに YouTube という名前を冠しているものの、内容は YouTube にあらず。2007年初頭、ニューヨークはマンハッタンに滞在した著者がアメリカという国の現代そして未来を政治・経済の観点から綴ったエッセイである。YouTube という単語はネット時代の代名詞として何度か出てくるに過ぎず、それを期待していると見事に肩透かしを喰らう。読者の気を引きたいのはわかるが、やっぱり書籍のタイトルは内容を端的に表すものであって欲しい。ときに斬新あるいは奇抜なタイトルはそれ自体が強力な宣伝となり得るが、単に流行語をくっつけるという安易な発想は、せっかくの読者に対して陳腐なイメージを与えるだけだと思う。

とはいえせっかく借りた本だから読んでみた。エッセイという読みやすい形式であったこともあり、最初の悪印象に反して結構楽しめた。ああだこうだと分析が先行する内容だったら、さぞかし詰まらないものになっていただろう。それだけに著者の体験談は固くなりがちな話題に程よく柔らかさを与えている。

読み終えて益々タイトルの選択を誤っていると感じた。これはサブタイトルに用いられている "メディア革命" という言葉にも当て嵌まる。本書では殊更 IT に関して紙面を割いているわけではないからである。オリジナルのコラムは「世界の街角から」だったそう。それに倣って「ニューヨークの街角から」あるいは「マンハッタンの街角から」でも良かったのではないだろうか。そのほうが余程等身大で本書を表していると思う。ただ自分自身 "YouTube" というキーワードで見つけたのも事実。今の時代、ネット検索に迎合したタイトルの付け方が大事ということか? 何となく出版社側の思惑が見え隠れしていて後味の悪さを感じずにはいられなかった。勿体ない・・・。



明けましておめでとうございます!

2009-01-03 00:11:36 | Diary
 
明けましておめでとうございます。

去年の後半からより一層混沌を極めた時代に突入してしまいましたね。2009年はそれにめげず、何とか自分というものを保ちながら勇往邁進していきたいと思っております。

ghostwind としての今年の目標はもう少しブログの更新頻度を上げたいですね。草稿を書く時間が中々取れないのが一番の要因なんですが、これに関してはちょっとした時間の合間を縫って文章をまとめていけるような便利ツールはないかと色々調査中です。ネット環境のない場所で書く機会も増えるでしょうから電子辞書も欲しいなぁ(外出先で本を読んでいて読めない漢字に出会ったときもこれを感じます)。

昨年末は駆け込みリリースのような形になりましたが自作のプログラムをアップできました。昔のようにガリガリとプログラミングに打ち込むスタイルからは離れてしまいましたが、結構楽しみながらの二ヶ月でした。これだけスローにやっていると精神的な消耗もほとんどなく知的好奇心だけを原動力にできるのがいいですね。アイデアも枯渇せずに沸いてきましたし、九割方満足のいく仕上がりになりました。あとは幾つか手付かずのネタを残しているので、気が向いたらチョコチョコとアップデートしていきたいと思っています。

肝心の音楽に関しては iPod classic でジャンル無視の完全シャッフルで聴くことが多く、非常に雑駁でしたね(苦笑)。特定のアルバムに入れ込む心の余裕があまりなかった一年だったかもしれません。今年は CD Baby あたりで面白いバンドを色々と発掘してみたいと思っています(去年は Candlewyck が収穫でした。近いうち紹介しますね!)。

正月ボケで頭の回転もイマイチです。月並みな挨拶になってしまいますが、今年も変わらぬご愛顧をよろしくお願い申し上げます。また皆さまにおかれましても良い年でありますように・・・。


ghostwind