落ちこぼれてエベレスト / 野口健

2007-01-28 11:06:14 | Books
 
本書は25才という若さで七大陸の最高峰を制し、世界最年少登頂を達成したアルピニスト野口健が波乱万丈の半生を語った自伝である。著者が人生に落ちこぼれ、自分自身を見失いかけていた若き日、一冊の本と出合うことから人生が大きく変わっていくことになる。世界に誇る冒険家、植村直己の「青春を山に賭けて」がそれであった・・・。

正直読んでいて胸が熱くなった。「誰のためでもない、自分のため」と言い聞かせ、「生きてやるんだ」と自身を鼓舞し、弱い自分と決別するために必死に生きている姿が克明に描かれているのである。自らの人生に終止符を打つ若者たちがニュースで取り沙汰される今の世の中、偉そうに正論ばかり並べている教育論者より、この本のほうがよっぽど説得力があるんじゃないかと思う。

「成功ばかりしている人の言うことには、真実味がない。失敗もしている人の言葉の方が信頼できる。」

僕が本書を読んでいて感じたこととまったく同じことを野口氏はこの本のなかで言っていた。数多くの失敗を経験した者だからこその本音だと思う。もし自分自身の存在意義に迷いや疑問を感じている人がいたら、是非この本を読んでみてほしい。這い上がるために必要なのはホンの小さなキッカケと後押しである。本書は自分の中にある小さな勇気の存在をきっと気付かせてくれるだろう。植村さんの本が野口氏の人生を変えたように、本書によって未来が大きく変わる若者がきっと出てくるに違いない。

僕のほうが野口氏より先に人生をスタートさせたはずなのに、いつしか僕の目に映るのは彼の背中だった・・・。


P.S. 彼のことをまだよく知らない頃、僕より五つくらい年上の方だとずっと思っていました(笑)。



Avalon - The Richie Zito Project / same (2006)

2007-01-27 09:50:49 | Music > Rock/Pops
 
先日 cherry さんに Joe Lynn Turner つながりでお薦めされた Avalon。Cheap Trick や Heart、Bad English など数々の大物アーティストを手掛けたプロデューサーとして知られる Richie Zito のプロジェクトです。善は急げということで早速聴きましたよ!(笑)

アルバムには Steve Perry の細胞を培養して育てたというバイオテクノロジーの結晶 Hugo や(笑) Eric Martin、Joseph Williams、Richie Kotzen、Eddie Money ら、過去に Richie と交流があったヴォーカリストが参加しています。このメンバーを見るだけで彼がどれほど多くのアーティストに信頼を寄せられているかわかる気がします。ギターとベースはギタリストでもある Richie 自身が担当。ドラムは Tommy Decker と Greg Bissonette です。Greg も本当に色々なところに顔を出しますねぇ(笑)。ピアノは Richie の幼なじみである Joey Carbone で、日本のポップス界では有名な音楽プロデューサーですから知っている人も多いでしょう。こちらのインタビュー記事のラストに Joey が邦楽アーティストに楽曲提供した作品のディスコグラフィーが掲載されているんですが、共作者に Richie Zito や Joseph Williams の名前が出てくる曲もあり面白いですよ。"Blue Monday" では Hugo と並び、コンポーザー兼プロデューサーとして名高い Giorgio Moroder の名前もフィーチャーされています。80年代に昨今のオムニバス・サントラの基盤を作った人物ですね。「フラッシュダンス」や「トップガン」は彼が手掛けた代表作で、これらのアルバムには Richie もギターで参加しています。

アルバムのサウンドはライトなメロディック・ロックで Richie のメロディ・メイカーとしての才能が遺憾なく発揮されていると思います。アレンジに関しては Sunstorm を聴いたあとだけに若干ラフさを感じますが、逆に言えば、作り込むことよりもライヴ感を重視したのかもしれませんね。個人的にはタイトル曲の "Avalon" や Joseph の唄うバラード "Oh Samantha" がお気に入りです。Eric の声も聴いていて心が落ち着くなぁ(笑)。cherry さんもご自身のブログで Avalon を取り上げていますので併せてどうぞ(こちら)。

※今頃になって気付きました。国内盤は一曲多かったんですね・・・(悲)。



House Of Lords / same (1988)

2007-01-24 00:33:30 | Music > HM/HR
 
2004年に奇跡的な復活を果たした House Of Lords が 1988年にリリースしたセルフ・タイトルのデビュー作。別段キッカケがあったわけではないんですが、何となくライブラリを眺めていたら目に付いたので久しぶりに聴いてみました(笑)。

アメリカン・ハード・プログレの要素を多分に盛り込みながらもヴォーカルを前面に押し出したポップな音作りは Giuffria 時代から受け継いだサウンドですね。そこに欧州的な湿り気も加わっているところが彼らの魅力でしょう。80年代の香りがプンプンでまた懐かしい気持ちになりました。

まずはバンドについてちょっとおさらいしておきますね(自身の備忘録も兼ねて・・・笑)。House Of Lords は元 Angel, Giuffria のキーボーディスト Gregg Giuffria が中心となり結成された HR バンドで Gregg 以外のメンバーはギターの Lanny Cordola とベースの Chuck Wright が Giuffria 組、ドラマーの Ken Mary が元Fifth Angel, そして当時は無名だったヴォーカルの James Christian となっています。James は Canata というバンドの出らしいですが、僕は詳しくは知りません。少なくとも当時はほとんど新人扱いだったように思います。しかし本作の鍵を握っているのは他ならぬその James なんですから Gregg はすでに彼の素質を見抜いていたのでしょうね。ハスキー掛かった中音域の野太い声質はバンドのサウンドに力強さを与え、まさに堂々たる唄いっぷりです。ネットに投稿されている House Of Lords に関する数々のレビューを読んでも、真っ先に言及されているのが James の歌唱力についてというのがその事実の裏付けですよね。

楽曲についてですが個人的にはちょっぴりフックが弱い気がするんです。これは Giuffria 時代からずっと感じていることなので Gregg の書くメロディと僕の相性なのかもしれませんが(笑)。ある程度聴き込めばこの違和感は解消されるので特に問題はないんですが、僕にとって一発聴きの印象が薄いのは否めません。・・・と少々ネガティヴな感想になりましたが、これはあくまで当時の話であって、今では冒頭で書いたとおり、懐かしさの方が上回っていますからね(笑)。オープニング・トラックの "Pleasure Palace" やイントロからドラマティックな盛り上がりを見せる "Hearts Of The World" はお気に入りです。あっ、それと今頃になって気付きましたが "Edge Of Your Life" でのクロマティック・スケールを主体としたギター・ソロは面白いですね。まさかモース先生を意識したのかどうかはわかりませんが・・・笑。最後にトリビアを一つ。本作は Kiss の Gene Simmons が設立した Simmons Records のレーベル第一弾としてリリースされたアルバムで、本人もエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットに名を連ねています。



Zeno / Runway To The Gods (2006)

2007-01-21 01:18:54 | Music > HM/HR
 
最近、兄の Uli 同様、ますます浮世離れしてきた Zeno Roth ですが、そんな落ち着いた雰囲気の本人とは裏腹に今回もサウンドは熱いです(笑)。2006年を振り返ると、Fair Warning 周辺アーティストということで、後発の Last Autumn's Dream に隠れてしまった感もありますが、アルバム自体の出来は中々のものだと思います。

本作から参加することになった元 Jaded Heart の Michael Bormann はハスキーな声質と中音域が魅力のヴォーカリストで、前任者の Michael Flexig とはスタイルを異にします。Zeno サウンドにはハイトーン・ヴォーカルが不可欠という想いのファンも多いでしょうし、この起用には賛否両論あるようですね。僕も Zeno というと Michael Flexsig のイメージが強いですから、彼が唄わないと聞いたときはちょっと残念な気持ちになりました。ただ実際にアルバムを聴いてみて Michael Bormann の健闘ぶりに「これならイケる!」と安心しましたね(というわけで僕は「賛」派です・・・笑)。そういえば彼は一時期 Bonfire にも在籍していたんですよね。自称 Bonfire ファンの僕ですがこの時代は未チェックでした(笑)。そのうち機会があれば聴いてみようと思います。

一曲目のソロからこれでもかというくらいの哀愁のギターが押し寄せてきます。ワウとアーミングで紡がれるメロディにはあたかも生きているかのようなウネリが感じられ、Zeno を Zeno たらしめんとする魅力になっていますね。sorapapa さんではないですが、これがノーマルのストラトだなんてにわかに信じがたいです(sorapapa さんの記事はこちら)。弘法筆を選ばず・・・彼はスカイ・ギターがなくてもメロディを飛翔させる術を知っているのでしょう。Helge がこの領域に達するのはいつになるでしょうかね(応援しているんだヨ~)。

オープニングのみならず、アルバムはどの曲も Zeno ワールドが展開されている金太郎飴状態(笑)。その中でも特にお気に入りなのが Deep Purple の "Burn" ライクな "I Feel - I Live" ですね。RABI さんもご自身のブログで同じ感想を述べてらっしゃいましたが、やっぱり似てますよね、これ(RABI さんの記事はこちら)。

何はともあれ、ジャーマン・メタルではないジャーマンの流れを強く感じさせる一枚ですね。



Jean-Luc Ponty / Cosmic Messenger (1978)

2007-01-20 10:32:37 | Music > Jazz/Fusion
 
ジャズ・ヴァイオリニスト Jean-Luc Ponty の名前を初めて聞いたのは Mark O'Connor の "Heroes" というアルバムでした。このアルバムはタイトルが示すとおり、Mark が自分のヒーローであるヴァイオリニストをゲストに迎えて共演するという、ある意味彼のルーツの総決算ともいうべき作品です。Jean-Luc も自身の "New Country" でこのアルバムに参加していました。フュージョン・カントリーとでも形容したくなるこの楽曲は "Heroes" の中でも抜きん出てカッコ良く、すっかり魅了されてしまいました。そんなわけでオリジナル作者である Jean-Luc も聴くようになったんですね。・・・とここまで書いておきながらこんなこというのもなんですが、実は今回紹介するアルバムに "New Country" は収録されていないんです。特に深い意味があってこのアルバムを選んだわけではないので・・・(笑)。

エレクトリック・ヴァイオリンを駆使したフュージョン・サウンドはアコースティックとはまったく異なる質感でとても新鮮です(ヘヴィ・メタル・ヴァイオリニストの Mark Wood までいくとやり過ぎという気がしないでもないですが・・・笑)。かなりプログレ色が強いフュージョンで、彼が Frank Zappa のバンドや Mahavishnu Orchestra に在籍していたことも頷ける内容ですね。ですから僕にとっては Mark O'Connor つながりですが、ブルーグラス畑の人にはあまりお薦めしません(笑)。そういえば一時期 Kansas に在籍していた David Ragsdale も Jean-Luc にはかなりの面で影響を受けているのではないでしょうか。余談になりますが、本作でギターを弾いている Joaquin Lievano は古くから DREGS の Andy West と交流がある人物で、彼の Zazen というバンドには Andy もちょくちょく顔を出していました。二人は現在 Fwap というバンドを組んで活動しています。



Last Autumn's Dream / Saturn Skyline (2006)

2007-01-17 00:00:02 | Music > HM/HR
 
これまた噂どおり最高の一枚! 間違いなくこれまでの中でベストの出来ですね。ちょっぴりダークなリフで始まるオープニングの "For The Young And The Wild" を聴いたときは少しだけ心配になりましたが、ちゃんと哀愁たっぷりのサビメロに展開していきますからねぇ。期待を裏切らない楽曲の仕上がりは流石としか言いようがありません(笑)。続く "After Tommorow's Gone" や "Pages" もキャッチーなメロディが抜群に美味しいですし、とにかくアルバム全体がメロディの洪水です(一曲一曲書いていったらキリが無い・・・笑)。ヒンヤリとした空気は若干後退しましたが、プロジェクト臭さが残っていた初期のアルバムに比べるとバンドらしさもより高まってきたと思います。珠玉の楽曲のみで構成されたアルバムに捨て曲なんてあるはずがございません(笑)。Sunstorm 共々、当分はヘヴィロテの仲間入りですね!



Sunstorm / same (2006)

2007-01-15 00:09:55 | Music > HM/HR
 
やっと聴けました! 素晴らしい! Dennis Ward が Place Vendome のインタビューで Joe とのプロジェクトの計画を口にしてからずっと楽しみにしていました。しかもコンポーザーに Jim Peterik を迎えているではないですか! そりゃビックリ・マークも付きまくりますよ!

Jim 好きは以前から公言していましたが、Joe Lynn Turner も大好きなヴォーカリストなんですよね。Rising Force の新ヴォーカリストになると聞いて Rainbow の "I Surrender" を聞いたのが出会いでした(実は Rainbow は完全に後追いなんです)。童顔に似合わずソウルフルな声、最初は戸惑いましたが結局そのギャップにハマりましたね(笑)。その後、"Rescue You" のアナログも手に入れてすっかり愛聴盤となりました(もちろん CD でも買い直しましたよ・・・笑)。

Rising Force 脱退後も色々なプロジェクトに参加してきた Joe ですが、僕はいつか "Rescue You" の続編とも言えるアルバムが聴きたかったんです。Joe のヴォーカルを主体としたメロディック・ハード・ロックをね。そういえば一年ほど前、そんな気持ちを込めて "Rescue You" のレヴューを書いたことを思い出しました(こちら)。本当に実現したんですねぇ(笑)。期待を裏切る要素などどこにも見つからない極上の MHR アルバムです。中には Survivor feat. Joe Lynn Turner みたいな曲もあってニヤリとしてしまいました(笑)。記事中の人名にピンと来た方は是非!!!



The Rippingtons / Black Diamond (1997)

2007-01-14 03:45:35 | Music > Jazz/Fusion
 
寒い冬ですが、ポカポカ陽気の日にはこういった心地良いスムース・ジャズが聴きたくなります。いつもながらの洗練されたアレンジと親しみやすいメロディは RIPPINGTONS の魅力の一つですね。本作ではドラムがほとんど前に出てこないため、全体的にマイルドな印象を受けます。個人的にはデビュー当時のサウンドを思わせる "Big Sky" がお気に入りですね。初期の楽曲は学生時代に組んでいたバンドのレパートリーだったので、僕の中の RIPPINGTONS というとどうしてもこの手のサウンドになるんです(笑)。

多作なだけにリリース作品すべてを追い切れているわけではありませんが、アルバムの完成度は常にハイレベルですし、どれを聴いてもハズレはないでしょう。そのうち僕自身も聴き逃しているアルバムを探してみようと思っています(笑)。



パラダイス・ロスト / 久石譲

2007-01-09 00:01:55 | Books
 
アーティストというもの、時には本業を離れ、クリエイティヴな感性にさらなる磨きを掛けたくなるものなのでしょうか。本書は作曲家として有名な久石譲氏が「エスクァイア」誌で連載していた小説を単行本化したものです(1994年刊)。物書きとしては 1992年の「I am~遥かなる音楽の道へ」に続いて二作目となります。

主人公の Ryo は映画のサントラや CM 曲などを手掛ける音楽家。作曲やレコーディングのため、日本と海外を行き来する多忙な日々を過ごしています。Ryo のキャラクタ設定は久石自身を強く連想させるもので、至るところに本職にまつわる話が出てきます。そのリアルさは一瞬ノンフィクションかと錯覚してしまうくらいです(笑)。冒頭からしばらくの間、そんな Ryo のワークスタイルについて細かな描写が続くのですが、バリ島で出会った一人の女性をキッカケに物語は少しずつ動き出します・・・。

正直、小説の面白さとしてはまだまだ本業に及ばずといったところでしょうか。特に序盤は本筋と直接関係のない話がほとんどですし、実際ストーリーに必要な部分だけを抜き出したなら短篇の尺で納まる内容です。とはいえ、その一見無用に思える話こそ、久石氏が主人公の口を借りて自らを語りたかった部分なのかもしれません。またファンならば「タレントとしても有名な某監督」や「タスマニア物語」をもじった「オーストラリア物語」など、久石氏の遊び心があちこちに散りばめられていることに気付くでしょう(笑)。そういったニヤリとする記述を見つけるのも一つの楽しみ方かもしれませんね。




Time Five / A Capella II (1992)

2007-01-08 00:02:01 | Music > Jazz/Fusion
 
日本が誇る老舗コーラス・グループ Time Five、今年で結成38周年というベテラン中のベテランです。アカペラというと今の人はゴスペラーズやラグフェアーを思い浮かべると思いますが、僕にとっては小っちゃなヒゲのおじさんがいる Time Five なんです(笑)。意識して聴くようになったのはジャズ・ヴォーカルに興味を持ち始めた学生時代からですが、それ以前にもテレビの歌番組などで度々見掛けていましたし、その存在は何となく知っていました。公式サイトによると結成以来不動の五人は同志社大学軽音楽部の先輩後輩同志ということで、1986年にはあのモントレー・ジャズ・フェスティバルに日本人ヴォーカルとして初めて参加したそうです。また彼らはメンバー全員が唄いながら楽器も演奏しますので、本来はアカペラ専門のグループではないのですが、本作は五人の歌声をメインに作り上げた彼らにとっては二枚目となるアカペラ・アルバムです。選曲は "Sweet Sue", "Ruby Baby", "My Foolish Heart" といったスタンダードから Chicago の "Hard Habit To Break", Glenn Medeiros もカヴァーした George Benson の "Nothing's Gonna Change My Love For You", Gloria Estefan & Miami Sound Machine の "Rhythm Is Gonna Get You", Stevie Wonder の "Lately" と幅広く、その親しみやすいハーモニーは一般のポップス・ファンにもお薦めです。英語の発音がかなり本格的ですからブラインドで聴くと日本人グループとは気付かないかも(笑)。





Time Five Official Website:
http://www.timefive.jp



東儀秀樹の永遠のオモチャ箱

2007-01-07 00:00:26 | Books
 
雅楽演奏家としてだけでなく人としても強く興味をひかれる東儀秀樹氏。彼の人並み外れた好奇心には感嘆せずにはいられません。溢れんばかりのバイタリティ、徹底した行動力はいつも僕の感性に刺激を与えてくれます。聴くたびに、読むたびに、見るたびに、感性の波長の重なりを感じつつもその振幅には大きな差を感じ、僕自身まだまだ増幅させる必要があると気付かせてくれる人物の一人です。

本書はそんな東儀氏の心をくすぐった様々な「モノ」についてのエッセイ集です。1997年から 2003年にかけて「MILLION」誌、「NEO」誌で連載していたものをまとめたものです。バイクが好き、時計が好き、カメラが好き、オーディオが好き、絵画が好き、海が好き、旅が好き、そして音楽が好き。それは形あるものからそうでないものまで多岐にわたり、彼の人生の幅広さ、豊かな感性を物語っています(それでもまだホンの一部とのこと)。確かにこれだけのものに接することが出来た背景には育ちの良さもあると思いますが、彼のいう「イイモノ」とは(結果的にそうなったとしても)決して高価なものやレアなものだから価値があるというわけではなく、どれだけ大切な想い出が詰まっているか、どれだけ心に語りかけてきたか、そういう物欲とは対極に位置する価値観で見定められたものばかりなんですよね。そしてそんな彼の琴線に触れることができた「モノ」たちは、すべて平等に彼のオモチャ箱にしまわれる資格を与えられるのです。だからでしょうか、どの話も彼のわくわく感や「モノ」に対する愛情が感じられ、読んでいるこちらまで幸せな気分になってきます。また幼少の頃から絵に親しんでいたという氏自身による水彩画の挿絵も彼の人柄が表れていてステキです。本エッセイをキッカケに美術館で作品が展示されたり、絵本の挿絵の仕事まで舞い込んだという話ですから、これも一見の価値ありですよ。

好奇心を原動力として生きているような人たちに是非一度読んでもらいたい一冊ですね。僕自身がこの本から感じた懐かしくも不思議な感覚を同じように味わってもらえるんじゃないかなって思うんです(笑)。

P.S. 実はこの記事を書き終わった後になるんですが、妻の実家の近くにある神社へ家族で初詣に行きました。何ともタイムリーな話、今年はそこで雅楽の生演奏を耳にすることができたんです。小さな神社への参拝ということでイベントなどは期待していませんでしたから、これは思わぬサプライズでした(笑)。三人の楽師が奏でる笙、篳篥、竜笛の音色はその厳かなる儀式と相まって独特の雰囲気を演出しており、つい僕の心はそちらへ惹きつけられてしまいました(笑)。いつか自分でも演奏してみたいと思う今日この頃です。



年始のご挨拶

2007-01-05 11:02:47 | Diary
 
月並みな表現になってしまいますが、時が経つのって本当に早いものですね。ついこの間 2006年が始まったと思ったら、もう 2007年なんですから(笑)。毎年、一年が過ぎるスピードが加速度的に増しているような気がしてなりません。子供の頃はもう少し時間の流れが緩やかだったように思うんですが・・・。

それはさておき年始のご挨拶がまだでした(笑)。改めて、新年明けましておめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。飽きっぽい僕がここまでブログを続けて来れたのはひとえに皆さんのおかげです。今年も変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします。