
Tony Rice - lead & rhythm guitar
Wyatt Rice - rhythm guitar
John Reischman - mandolin
Fred Carpenter - violin
Richard Greene - violin
Todd Phillips - bass
The Tony Rice Unit 『私の勝手に三部作』シリーズの第三弾(笑)。一曲目の "Common Ground" から八分近くにわたる強烈なインプロヴィゼーションが繰り広げられています。アルバム全体を通して即興演奏の占める割合が増したジャズ色の濃い作品に仕上がっており、前作では控えめに感じた Tony のギターも本作ではかなりアグレッシヴな印象を受けます。またサウンド面の問題もかなり改善されており、"Mar West" とまではいきませんが繊細なタッチも失われることなく再現されています。タイトル曲の "Backwaters" はイントロの複音フレーズがクールなスペースグラス・サウンドの曲で Tony のフィーチャー度もかなり高いです。"My Favourite Things" は今やミュージカルの名曲という以上にジャズのスタンダードとして定着した感のある Rodgers & Hammerstein の曲。おそらく参考にしたのは COLTRANE のヴァージョンだと思いますが、大好きな Julie Andrews がミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中で唄ったこの曲を TRU がカヴァーしてくれるなんて! 本作の中でも一、二を争う珠玉の出来で、かの "Mar West" がアレンジの妙を味わえる名曲だとすれば、"My Favourite Things" は究極のインプロヴィゼーションを味わえる名曲といえるのではないでしょうか。"On Green Dolphin Street" も多くのジャズ・ミュージシャンにカヴァーされているスタンダードですね。アコースティック・サウンドによるスウィンギー感がたまりません。Richard (L) と Fred (R) の二人のヴァイオリニストが左右のチャンネルに別れてそれぞれソロをとっています。音色としては Richard の方が好みだなぁ(笑)。"A Child Is Born" は Dave Gruisin のカヴァー。カリブの香りが漂う "Mobius Mambo" はマンボのリズムと TRU サウンドの調和が見事です。
このアルバムを最後に TRU としての活動は休止状態に入ります。2000年になって 18年振りに The Tony Rice Unit 名義の "Unit Of Measure" というアルバムがリリースされましたが、ジャズ的要素は薄く『スペースグラス』サウンドは後退したように感じました。個人的には TRU 名義である必要性があまり感じられなかったですね。いつの日かまた "Mar West", "Still Inside", "Backwaters" のような『スペースグラス』サウンド全開のアルバムを聴いてみたいものです。
Tony Rice Official Website:
http://www.tonyrice.com/
"Backwaters" アルバム試聴(cd Universe)
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1002547