The Tony Rice Unit / Mar West (1980)

2005-12-15 00:25:53 | Music > Country

Tony Rice - Guitar
Richard Greene - Violin
Todd Phillips - Bass
Sam Bush - Mandlin
Mike Marshall - Mandolin

今回は Darol Anger, Mike Marshall ネタから派生して、彼らと同じく David Grisman Quintet のメンバーだった Tony Rice のアルバムを紹介したいと思います。その道では非常に有名なギタリストであり、私の『OH! MY G3』でも選出させていただきました。とにかく大好きなブルーグラス/アコースティック・ギタリストなんです(笑)。

過去から現在に至るまで、Tony Rice は常に二つの顔を持ち続けてきたギタリストだったように思います。一つはブルーグラス・アーティストとしての Tony、そしてもう一つは今回紹介する The Tony Rice Unit を始めとしたアコースティック・ギタリストとしての Tony です。TRU はブルーグラスの既成概念の打破に始まり、David Grisman 門下生であった Tony が彼のもとで学んだドーグ・ミュージックのさらなる探求に挑んだ意欲的なプロジェクト。"Mar West" はそんな TRU の誉れ高き名盤として位置付けられているアルバムで、"Still Inside" (1981) や "Backwaters" (1982) とともに私が勝手に三部作と呼んでいるアルバムの中で最もスリリングな演奏が味わえる一枚です。

ブルーグラスとは一線を画す斬新なフレーズ、ジャジーなコードやシンコペーションを多用したバッキング、『スペースグラス』と形容されるこのスウィンギーでお洒落なサウンドを初めて耳にしたとき、あまりのカッコ良さに言葉を失いました(いやホント・・・笑)。とくに表題曲の "Mar West" や "Is That So" なんて鳥肌ものです! そして Tony とともにそんな素晴らしいサウンドを作り上げているのが、ヴァイオリンの Richard Greene、マンドリンの Sam Bush, Mike Marshall、ベースの Todd Phillips といったミュージシャンたち。ブルーグラスの花形楽器であるバンジョーをあえて外した編成で繰り広げられるアコースティック・ジャズ・ミュージックに私はすっかりノックアウトされました(笑)。楽曲の構成は各々がリードをとり、テーマ・メロディや即興を織り交ぜていくというスタイルでジャズの手法に非常に近いといえるでしょう。Miles Davis 作の "Nardis" を取り上げていることからもジャズへの傾倒ぶりがうかがえます。また緊張感の高い曲がひしめく中、心和む "Waltz For Indira" やちょっぴりブルージーな "Whoa Baby, Everyday I Wake Up With The Blues" がいいアクセントになっているんですよね。DGQ 時代に Tony が書いた "Neon Tetra" も TRU ヴァージョンとして再び収録されています。

いずれの楽曲も Tony の正確無比のピッキングから生み出される珠玉のフレーズが聴きどころであることに変わりはありませんが、マンドリン界の HENDRIX こと(そう思っているのは私だけ?・・・笑)Sam Bush も相変わらず切れ味鋭いプレイを聞かせてくれます。輪郭のハッキリした力強いサウンドは彼の持ち味ですね。また "Nardis" と "Neon Tetra" には Montreux でお馴染みの Mike Marshall がもう一人のマンドリニストとして入れ替わりで参加しています。もちろん、ベテラン Richard Greene のヴァイオリン、ドラムレスのサウンドでボトムをしっかりと支える Todd Phillips のプレイも聴き逃せません!

そういえば、かなり昔の話になりますが、Night Ranger の Jeff Watson がアコースティック・ギターを大胆に取り入れたソロ・アルバム "Lone Ranger" リリース時のインタヴューで Tony Rice の素晴らしさを語っていました。当時 Jeff の口から Tony の名前が出てくるなんて意外!って思ったせいか、今でも覚えているんですよね(笑)。

本作は 2002年に日本で世界初CD化されました(初回限定盤)。これが入手困難な場合、次作 "Still Inside" の収録曲とのカップリング CD "Devlin" もあります。こちらは "Mar West" から一曲("Mar East")、"Still Inside" から二曲が割愛されていますが、手軽に聴きたい方には最適のアルバムです。





Tony Rice Official Website:
http://www.tonyrice.com/


最新の画像もっと見る