Jerry のドブロは秋晴れの朝によく似合う
グラミー賞アーティスト Alison Krauss 率いる Union Station に加入後、ドブロという聞きれない名前の楽器を操る Jerry のプレイは多くの人の目に触れる機会を得ました。スライド・ギターを寝かせて弾いているかのような姿に「あの楽器は何だ?」と興味を持った方も少なくないでしょう。確かにブルーズではスライド・ギターのようにプレイされるドブロですが、ブルーグラスでは水平に寝かせ、金属製のバーを上から被せるようにして演奏するのが一般的です。カントリーやハワイアン・ミュージックでお馴染みのペダル・スティールをアコースティック化したイメージというとわかりやすいでしょうか。ロック・シーンで例えを探すなら、ギタリストの Jeff Healey がこれによく似た構えで演奏していますね。ブルーグラス界で見られるこの独特な奏法はネックを握り込む必要がないため、ドブロによってはネックのラウンドを無くし、ほぼ四角にカットしたものもあります。これはスクウェア・ネックと呼ばれ Jerry のモデルもこのタイプです(
Fig.1,
Fig.2)。
そんなドブロですが、実はブルーグラス・スタイルの演奏法をマスターするのはとても困難で、そのためプレーヤー人口が非常に少ないと聞きます(以下「ドブロ」はブルーグラス・スタイルのドブロを指します)。ブルーグラス・バンドでも専属のドブロ・プレーヤーがいることは稀です。そんな前途多難な楽器を果敢にも選び、自らのスタイルを確立したアーティスト、それが今回の主役 Jerry Douglas です。他を圧倒するセンスとテクニックはドブロ界の頂点に立つといっても過言ではないでしょう。僕自身、最近のシーンにはちょっと疎いので、もしかすると彼に肉薄する若手ドブロ・プレーヤーが台頭し始めているかもしれません。しかしブルーグラスという、ある種限られた世界で使われてきたドブロという楽器を、臆する事無く広い世界に持ち出し、他のリード楽器と対等に渡り合えることを証明した功績はパイオニアと呼ぶに相応しいのではないでしょうか。四桁を越える数のアルバムにセッション参加している Jerry ですから皆さんのライブラリの中にも一枚くらいは彼の名前が入ったアルバムがあるかもしれませんね(笑)。
さあ前置きはこれくらいにして本題に入ります(笑)。Jerry Douglas についてはいずれじっくり紹介したいと思っていました。先日、Hank 西村さんからバトンを受けたことに刺激されて、カントリーやブルーグラスのアルバムをあれこれと引っ張り出してきたんですが、その中に Jerry のアルバムもあったんですよね。久しぶりに聴いてみて「やっぱりいいなぁ」と・・・結局これがキッカケで今回の記事を書くに至るわけです(笑)。せっかくですから彼の名前をガッチリ宣伝しておこうと思いまして、以降何回かに渡って Jerry のソロ・アルバムをリリース順に取り上げる予定です。よろしくお付き合いくださいませ(笑)。
僕の薄っぺらな知識では時代背景などを絡めて体系的に語るということはできませんが、ghostwind らしい角度から彼を紹介できればと思っています。Jerry Douglas というアーティストに、そしてドブロという楽器に少しでも興味を持ってくれたら、嬉しいことこの上ありません。
to be continued...
Jerry Douglas Official Website:
http://www.jerrydouglas.com
Jerry Douglas / Passing The Bar