画燈樹

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恍惚の人

2011-10-19 22:12:29 | Weblog
この頃、よく ふっと 青い空を見たり、山の景色を見たりすると フランスの空を思い、のどかな丘を思い、そして イギリスの街並みを思います。

とても 懐かしく、つい ぼんやりしてしまいます。



私の母は、八十三歳で亡くなりましたが 父が亡くなってから すっかり痴呆が進みました。

私は、母に似て よく忘れ物をするので きっと私も母と同じようになるのでは ・・・と思いとても不安な気持ちに なっていました。

母は、何故か雪の降る日に限って 家を出ていなくなり、何度も皆で 大探しをしました。

ある時は、朝の10時頃から いなくなり、 その日は近年には珍しいぐらいの大雪で、 兄弟全員であちこち 手分けをして探しまわりました。

それでも 見付からず、警察は事件ではないので探してはくれず、 近くの山の方まで探しました。

日が暮れて、あたりは暗くなり 皆は途方にくれました。

近くの家辺りも 何度も探しましたが、もう一度と 姉と弟がでかけました。暗くなった雪道を歩いていると よその家の方から「もしもし、もしもし、」と かぼそい声が聞こえて姉が耳をすませると又声が聞こえます。その家の庭に入って見ると母が細い通路にうずくまっていました。

そして 主人の背中に負われて帰って来たのを見て全員安堵しました。まる1日中 寒い雪の中で 何を思い、何を探して歩き回っていたのか・・・。

きっと母には 何か 雪にまつわる想い出があるはずです。



私は、ずっと 母にはどの様な 雪の日があったんだろう と考えていました。


最近、私はフランスやイギリスの事を思い出すたびに 私も母の様に、プロヴァンスへ、イギリスへと行くつもりで その辺りを歩き回るかも知れない・・と 苦笑します。

そして、きっと、うっとりと恍惚とした気持ちで 空を見上げながら ふらふらと
歩き回るのでしょうか。

その時、本人は すごく幸せなんだろうなあ~ と思い、

きっと母も 幸せな気持ちになって歩いていたのに違いない。
母の想い出もきっと良いものだったんだ、
と思う様になりました。



母の想い出も 私の想い出も人生の最後に、うっとりと 恍惚とした気持ちになれるものだとしたら、それは幸せな事なんだけど・・・。


周りの人は たまったものではありません。


やっぱり、やっぱり、恍惚の人になっては
いけません。もっと しっかりと しないと一人娘が 心配します。

もう少しで 自分さえ 恍惚としてたらいいのかと思うところでした。

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