風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

小下図 その28 スペッロ (描き直し)

2022年12月19日 | 仕事場
◆ 小下図 スペッロの門 4号大 ( 30 × 22 cm )


イタリア中部ウンブリア州スペッロの正面玄関と言えるコンソラーレ門です。
2021年12月に一度描いていますが、納得がいかずに描き直しました。

この門のことは、2021年12月5日の記事 を参照してください。







ドローイングペンでの描き起こし。

前回とほぼ同じ構図ですが、下端を少し切りましたので
3体の彫像が前回よりやや下がっています。











ガッシュで彩色。

この門で最も印象的だったのは、3体の彫像です。
前作では、それを目立たせるために白さを強調し、周囲の漆喰壁を暗く落としたのですが
後から振り返ってみると短絡的に過ぎました。

今回は、その反省を基にして描いています。
漆喰壁は実際より赤くしましたが、明るくし、彩度を上げています。

門の向こうに見える空は、前回は最初から青空と決めていました。
これが全体のバランスを崩した一因であるように思え
今回は、ギリギリまで色を決めずに様子を見て
最終的に、赤味がかったグレーをごく薄く乗せているだけにしています。

一通り描き終えてから気になったのは、左の彫像の周囲にある石組みです。
16世紀の修理で彫像を取り付ける際に積み直されたもののようで
下半分の古代ローマの石組みより石が小さく、規則的に積み過ぎています。
これは本画では古代ローマのものに似せて直そうと思っています。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本日のおまけ

YouTube より『神秘「動く木のアート」に魅了された男 | WIRED.jp』を。

動く彫刻というと
その創始者といわれるアレクサンダー・カルダー ( 1898 - 1976 ) を思い浮かべます。

その後も多くの作家が動く彫刻を制作していると思いますが
この動画で紹介されている現代作家デビッド・C・ロイもその一人。

デザイン・設計はPCで行うそうですが、実物の制作はアナログに徹していて
動力は機械仕掛けで、電子機器は使っていないとのこと。

因みに、私もイメージ・原案はPCで作ることが多く
本画は完全な手作業ですので、なんとなく親近感を覚えます。




------------- Ichiro Futatsugi.■
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小下図 その27 ギリシャ

2022年12月12日 | 仕事場
◆ 小下図 メテオラ 4号大 ( 31 × 18.8 cm )


東洋には、深山幽谷に仙人が住むという思想があります。
ギリシャでは、東洋の深山幽谷とは趣が違いますが
俗世を捨てて神に仕える修道士たちが、険しい岩山の上に暮らしています。

ギリシャの首都アテネから北西へ270Km ほど。
人が容易に登れない巨大な奇岩の頂上に大小の修道院が点在するメテオラ修道院群です。
かつては24の修道院があったそうですが、現在も存続しているのは6ヶ所です。

この作品は、2つある女子修道院の一つ「ルサヌ修道院」から少し登った道路脇からの眺望。
他の2、3の修道院が見渡せ、巨岩の背後には麓の街や山地が広がっています。


本番では15〜20号で描く予定です。






ドローイングペンでの描き起こし。
巨岩の右下がルサヌ修道院です。

構図としては、全体にもっと右に寄せた方が収まりはいいと思うのですが
この特異な空間の印象を描くためには、あえて左に寄せるのも良い気がしました。

修道院の手前側には、真新しく見える階段が設置されていますが
この景観にはそぐわないので省略しました。











ガッシュで彩色。

メテオラというと、背後にそびえるような巨岩の頂上に修道院が建つという印象があります。
ルサヌ修道院も岩の上に築かれていますが、この位置からではよく分かりません。

修道院の左の方へ平坦な岩塊が連なり、その上に樹木が群生していて
岩の上の修道院という印象が希薄になっているようです。

本画では、その印象を強調するために
修道院周辺の岩の形・樹木の数などを見直すことにしています。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本日のおまけ

YouTube より「大阪伊丹空港 千里川堤防からの夜景 Night Landing at Osaka Itami Airport Japan」を。

伊丹空港こと、大阪国際空港のB滑走路の南東端は
脇を流れる千里川の岸辺から70mほどしか離れていません。
そのため、川の土手から大迫力の離着陸シーンが眺められ
航空ファンのみならず、絶好の展望・撮影ポイントとなっています。

特に夜は、空港の北西方向に丘陵地帯が位置することもあり
幻想的でダイナミックな夜景が展開します。




------------- Ichiro Futatsugi.■
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小下図 その26 ランス (2)

2022年12月02日 | 仕事場
◆ 小下図 ランス大聖堂 4号大 ( 29 × 24 cm )


「ゴート風な、野蛮で奇怪な代物」

12世紀後半に、パリ郊外のサン・ドニ修道院付属礼拝堂の改修から始まった”ゴシック”は
侮蔑の意味を込めてそう呼ばれたことが語源です。
言い出したのは、ルネサンス時代のイタリアの知識人だそうです。

それぞれの時代の建築様式には、それぞれの良さがあると思うのですが
古代ギリシャ・ローマを金科玉条としていた当時は
そこから外れるものは認めないという風潮があったのでしょう。


この作品のモチーフは、ゴシック建築の名作の一つ、フランスのランス大聖堂です。
数あるゴシック教会の中でも、私の好きなもの上位5位以内に入ります。
昨年は、玄関の中央柱にある聖母子像の下図を描いています。

2021年7月18日「小下図 その3 ランス」


本番では20〜30号で描く予定です。






ドローイングペンで形の描き起こし。

翼廊の方から正面にある鐘楼を眺めた構図です。
地上から見上げた様子も素晴らしいですが
こういう屋根に近い位置からの眺めも意外に面白いものです。

ゴシックを貶したルネサンス時代の建築に比べると、確かに装飾過多に見えますが
神の住まう天界を目指した強い上昇志向の中に
どこか間の抜けたようなコミカルな要素も多く含んでおり
大人びて少々冷静過ぎるように思えるルネサンス建築より、ずっと人間味があるように感じます。











ガッシュで彩色。

予想通り、装飾の多いゴシック建築を描くのはなかなかの手間です。
本画は20〜30号にする予定ですので、一層手間がかかります。

見えたままを正確・精密に描写するつもりはないのですが
今後の自分の作品には、ある種の”緻密さ”が、より必要だと思っています。
描写の緻密さではなく、存在感や雰囲気などを醸し出すための緻密さとでも言えばいいでしょうか。

その具体策は一連の下図でいろいろ試していて、気づいたことも多いですが
紙も絵の具も本画とは異なることもあり、今のところは何とも言えません。

絵は、描いてみなけりゃ分からない!





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本日のおまけ

歳をとると、悲しいことに、注意力・観察力の低下を感じてきます。
前期高齢者である私も、脳細胞の老朽化に危機感が募る今日この頃です。

その対策の一環として、テレビのクイズ番組などを見ています。
正解が出なくても、考えるだけで脳が活性化するそうです。

ネットでは、様々な話題を提供するサイト「ねとらぼ」 に掲載されている
隠し絵クイズを毎回楽しみにしています。


【隠し絵クイズ】この中に「ネズミ」が隠れています
将棋を楽しむ猫に見つかる前に助けてあげよう!


https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2211/06/news017.html


このクイズは11月上旬に掲載されたもので、すでに新しいものもアップされています。
異なるイラストレーターによる別の種類のクイズもあります。


------------- Ichiro Futatsugi.■
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする