風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

2014年 7月29日 火曜日

2014年07月29日 | 仕事場

暑中お見舞い申し上げます!


暑い!! とにかく暑い!!

暑い!! 暑い!! 暑い!! 暑い!! 暑い!! あ、つ、いぃぃぃぃぃぃ~!!!

どないなっとるんじゃぁ、地球はぁ~!!



うぎゃぁぁぁ~~おぉぉ~~え~~~、あ、あ、ぐわぁ~~~~~~ 壊れた…





イタリア・トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂 50号 (最終回)





前回の状態です。



そして、ようやく一応の仕上がりとなりました。
完成画面です。




 「黙する古堂」 50号 116.7 x 75 cm


前回と今回では際立った違いは感じられないだろうと予想されたことから
今回は完成画面だけを掲載するつもりでした。
しかし、比べてみると、ずいぶん印象が違うのに自分でも驚いています。

一見して画面のプロポーションが違って見えますね。
今回の方が細長く、横長に見えます。
しかし、その差は縦が1ピクセル短いだけです。

空はかなり暗くしており、建物のハイライトも若干暗くしています。
その他は、ひたすら細部の微調整に終始していました。
こうして前回と今回を比較してみると、前回の画面は明らかに軽く浅く見えます。
大勢に影響がなさそうな細部の微調整でも、それらが積み重なって行くと大きな影響となって現れるのですねぇ。
こんなに差ができていることは、撮影して比較してみて、初めて気がついたのです。
前回より横長に感じられるのも、密度が上がり、建物と空間の存在感が増し、画面が締まったからだと思います。

薔薇窓の歪みは完全には修正できませんでしたし、他にも部分的に多少気になるところはありますが
それらは愛嬌の範囲内にあり、大筋で抑えるべきところは抑えられたと判断しましたので、これで終了とします。


この作品から「土佐麻紙の裏使い」に全面的に切り替えることを決めたわけですが
当然のことながら、この1点だけでは紙の性質を掴み切るまでには至りません。
しかし、やはり私にとって、この紙が現時点では最適であるという想いは変わっていません。

それでは、土佐麻紙の裏を使ったことでディティールがどうなっているのかをご覧いただきます。







土佐麻紙の裏が凸凹でザラザラだということはご紹介しました。
そのため、絵の具を含んだ筆が少し乾いてくると、凸凹の凸にしか絵の具がつかなくなるのです。
その結果、斑点のような調子が全面にできてきます。
画面を寝かせて水分の多い絵の具を使えば、凹んだところにも絵の具は入って行くのですが
この作品は立てて描くことが多かったために尚更ザラザラな質感になっています。

もちろん、それが土佐麻紙の裏を選んだ私の狙いの一つでした。
以前は絵の具で凸凹を作っていたのです。
私はこういう肌合い・質感が好きで、自分のイメージを表現しやすいと考えています。
この作品は、一応私の狙った雰囲気に近いものにはなったと思っています。

しかし、今回は50号という比較的大きな画面でしたが
これが10号以下の小品でしたら凸凹の影響は当然大きくなります。
しかも、今回は乾いた古い石ばかりのモチーフでしたから絵肌の質感と石の質感が合っていましたが
みずみずしい花や安曇野の風景を描いたら果たしてどうなるのか…。

それは描いてみないと分かりません。
試してみないことには、何事も前には進みません。
やってみて、何か問題が起こったら対処法を考えればいいのです。
もちろん、私には多少の予測と、それに合うであろう技法は考えているのですが
絵は考えているだけでは出来ません!
手を動かすことが、絵描きにとっては何よりも優先なのです!
この紙では、いろいろ試したいことがありますが、それはまた次の作品で。




さて、今回から作品の撮影をデジタルカメラのRAW(ロウ)で行うことにしました。
今までは無圧縮のTIFFで撮影して、これを保存用・印刷原稿用とし
ブログなどのために適宜JPGに変換するという方法を用いていました。
イタリア在住の友人shinkaiさんから「RAWが良さそうでございますわよ」とのご報告をいただき、ぎゃはは!
それなら私も…と、試してみることにしたのです。

デジタル画像についての詳しい説明は省きますが
RAWは、TIFFやJPGなどの一般的な画像形式に変換する以前の生のデータです。
特にホワイトバランスを撮影後にも調整できるのが利点だと思います。
以前は撮影時のホワイトバランスはオートに設定し、撮影後に色調補正をしていたのですが
どうしても出にくい色があって苦慮することが多かったのです。
ホワイトバランスを調整できるだけでも、かなり楽になった気がします。
ただ、これもまだ始めたばかりですので、しばらく試してみないと確かなことは言えません。






イタリア・アッシジのサント・ステーファノ聖堂 8号 (第?回)

天災と、サント・ステーファノは忘れた頃にやって来る! ぎゃはは!
約8ヶ月ぶりの登場となります。
描き始めてからは、すでに3年以上が経過しています。




昨年の11月19日掲載の状態。
この時も約1年ぶりの登場でした。
今見ると、何だ?こりゃ、としか言いようがありませんね。
混迷を極めているという状況がビシビシと伝わってくる画面ですねぇ。

久しぶりの登場ですので、先にモチーフについての説明を少々。
この聖堂は、イタリア・ウンブリア州の古都アッシジの一角にあり
有名なサン・フランチェスコ聖堂やサンタ・キアーラ聖堂などと比べると小屋のような規模ですが
アッシジ最古級といわれる由緒正しい愛すべき教会なのです。
ロマネスク様式の建築には、これと言った特徴はないのですが
鐘楼脇の中庭に1本のモミの木が生えているのが、特徴と言えば特徴でしょうか。



今日まで30年以上絵を描き続けてきましたが
作品を没にしたのは、若い頃に2点あっただけでした。
絶対に諦めないことをモットーとしてきましたが、ついにその信念も崩れ去る時が来たか…と
この作品を半ば諦めかけたのが今月の上旬でした。

没にするのは悔しいけれど、長い人生、そういうこともあるんだと思いかけて
ふと懐かしい画家の絵を思い出しました。
アーノルド・ベックリンの「死の島」です。
そう、以前にもご紹介しましたが、私が「暗い絵好き」になった元凶の2人の画家がいます。
1人はカスパー・ダービド・フリードリヒ、そしてベックリンです。
フリードリヒの作品には不気味なモミの木がよく登場します。
そしてベックリンの代表作「死の島」の連作には、これまた不気味な糸杉が登場します。
作品が没になるかもしれないという瀬戸際に、何とも縁起の悪い絵を思い出したものです。

2人を知ったのは高校生の時だったと記憶しています。
最初に興味を持ったのはフリードリヒの方なのですが
長野県松本市郊外の山裾にある、私が生まれ育った小さな集落の一角に
モミの木に取り囲まれた民家があって、物心つく前から毎日のように目にし
高校生の時には30号の油絵に描いたことがありました。
モミの木のある風景というのは、言わば私の原風景でもあるのです。

完全に行き詰まって壊れかけた脳味噌がベックリンを思い出して考えたことは
ああ、いよいよサント・ステーファノが没になりそうだから、あんな縁起でもない絵を思い出したのかなぁ。
「死の島」で、この作品の葬式をやれってことか?
う~ん、「死の島」といえば印象的なのが糸杉。
この教会はイタリアのウンブリア州にあるのだし、ウンブリア・トスカーナと言えば糸杉が名物。
葬式をする前に、糸杉や他の木でも入れて遊んでみるかなぁ…。





本日の状態です。

元々、木はモミの木が一本あるだけでしたが
糸杉や広葉樹を、鐘楼を取り囲むように何本か追加することにしました。
糸杉は3~5本入れる予定ですが、まだ形と位置を探っている状況です。
満天の星空にするという方針は一貫して変えていません。
左右の暗くした部分はカットする予定です。

やれやれ、何とか息を吹き返し、没にせずに済みそうなのですが
それにしても…なぜこんなに時間がかかっても出来ないのか、自分でも不思議です。
おそらく、私の最大の欠点である決断力のなさ・思い切りの悪さが
何らかの要因によって、この1点に集中して出てしまったということなのでしょう。
それ以外には考えられないのです。
他のモチーフより特別難しいとも思えませんし…。

ですから、この作品が仕上がれば
私も精神的に少しは成長できるのではないかと、密かに楽しみにしているので~す、きゃはは!

-------------- Ichiro Futatsugi.■
コメント (4)
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2014年 7月3日 木曜日

2014年07月03日 | 仕事場
まずは、昨日終了しました長野市ながの東急での個展にご来場いただきました皆様
並びに素敵な花をお贈りくださいました方々へ、心より御礼を申し上げます。
今後の展覧会にも是非ご来場いただけますよう謹んでお願い申し上げます。




昨年の12月以降中断していましたイタリア・シエナのドゥオーモの夜景(20号)
そして3月末以来中断していましたイタリア・トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂(50号)
両作品は、共に6月より再開しています。

シエナのドゥオーモは半年間中断した間に問題点がいろいろ見えてきて
再開後は概ね順調に筆が進みました。

トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂は、中断した時点で大筋はできているように思えましたので
再開後は、粛々と細部の調整に終始しています。



イタリア・シエナのドゥオーモの夜景 20号 (最終回)





2013年11月下旬の状態。

スッキリしない印象があり、絵の強さ・決め手に欠けるという想いがありました。
一本筋が通ったと言いますか、すべての物が渾然一体となった統一感が弱いように思うのです。
薔薇窓のほぼ全面に映り込んだ月と、聖堂の壁一面に散り嵌められた彫刻などの装飾が煩雑に見え
壁面の表情・厚みなどが弱く感じられます。

まず最初に気づいたことは、薔薇窓に映り込んだ雲の量が多過ぎること。
そこで雲の量を減らすことから始めました。
そして薔薇窓以外の壁面は、細部の描写よりも月光が染み込んだような空気感をより優先すべく
聖母像の周囲の聖人たちの彫刻は、より暗く落とし、コントラストを下げるなどして作業を進め
制作開始から約1年を経て、ようやく仕上がったところです。





 「月のファサード」 72.7 x 57 cm








イタリア・トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂 50号 (第6回)





中断する直前の3月20日頃の状態です。

絵の骨格というべきものは大筋でできているように思っていましたので
再開後の仕事は細部の詰め、そして最も留意しているのは質感表現です。
質感というのは材質である石の質感だけではなく、絵肌の質感、築後700年あまりを経た時間の厚みというものも含まれます。

中断する少し前から、描きながら常に傍らに置いて参考にしていたのは、この聖堂の洗浄前の画像でした。
比較的近年だろうと思いますが、この聖堂は洗浄を施されて綺麗に甦っています。
対して、洗浄前は白い大理石でさえ黒ずみ、所々には鉄錆色も見え、建物の部材には欠損が目立つような状態でした。
時間の厚みを表現するには、単に古色を加えればいいというものではありませんが
一日にしては成らない古色が大きなヒントになることは確かです。






現在の状態です。

一目で分かるほどの大きな変化はありません。
前回までは黒に近い濃いグレーまでしか使っていませんでしたが
再開後は黒を使って画面を締めながら、細部の調整を主体に続けています。
しかし、細部の調整だけで済むとは限りませんので
場合によっては大きな調子の流れを見直す必要が出てくるかもしれません。
いよいよ大詰めです。



今年も早半年が過ぎ、相変わらずのスローペースで仕事が続いています。
好き好んでスローペースにしているわけではありませんが、決断力の乏しい性格では致し方ないところです。
が、間もなくトゥスカーニアも仕上がると思いますので、そろそろ次作の準備もしないといけません。

次作の一つは「滝」を50号で描くことが決まっています。

滝? 何とも古風な題材だねぇ。鯉の滝登りでも描くの? ぎゃはは! などと笑ってくださいますな。
古いヤツだとお思いでしょうが、題材に古いも新しいもないので~す。

-------------- Ichiro Futatsugi.■

コメント (3)
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