風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

2015年 9月30日 水曜日 + 第2回 新開志保展のお知らせ

2015年09月30日 | 仕事場
今回から、また新たな試みを始めました。
ペンによる輪郭線です。

今まで筆や鉛筆で輪郭線を試したことはありましたが
いずれも一長一短、と言うよりも「短」の方が大きいように感じて
それを継続しようという気にはならなかったのです。

私は線描きに関しては、柔らかい筆よりも硬い鉛筆の描き味が好みです。
鉛筆は最も自在にコントロールし易く、一番好きな画材なのです。
正直に告白すると、30年以上絵を描いてきたにも関わらず
穂先の湾曲する毛筆には、いまだに違和感を感じているのです。
そして、もっと正直に言えば、自分の作品の中で好きなものは
タブローではなく、スケッチ・デッサンの類なのです。

思い起こせば、小学生の頃、鉛筆で落書きをしていると時を忘れたものです。
水彩は大の苦手で、担任の先生を心配させるほどだったのですが
鉛筆を握ると心穏やかに没頭できたものでした。

ならば原点に戻れ!

ということでペンを試してみることにしたのです。
鉛筆でないのは、パステルに負けない強さとシャープさが欲しかったからです。
使っているのは手軽に使えるドローイングペンです。
製図用・イラスト用など、多彩なペンが市販されています。

とりあえず、黒と茶のペンで、芯の太さの異なるものを3種類。
そして製図用のシャープペンシルも準備しました。

今回掲載した全ての作品はペンを使用しています。
私が使用する土佐麻紙は繊維が粗く凸凹で、細いペン先が引っかかることもあったり
油断するとインクがベタッとついたり、使いづらさは多少あるのですが、概ね良い感触を得ています。



◆ 改作 「暮色」 3号 パステル





イタリア・トスカーナ州の古都ルッカをモデルにしたものです。
古代ローマの円形闘技場の形をそのまま利用した楕円形の広場を囲む、ルッカでも特に知られた一角です。

元々の画面は建物のみで、花と鳥はありませんでした。
アーチ型の門から夕暮れの街並みを覗き込む構図でしたが
門を小窓に変更して花と鳥を追加してみました。

元の画面に輪郭線はほとんどありませんでしたので
建物の輪郭を0.1mmのペンで、花と鳥の輪郭を0.05mmのペンで
窓の輪郭をパステル鉛筆で描き起こしてから彩色しています。

輪郭線が入ると、スケッチやデッサンのような雰囲気が加わりますので
いつもより少し軽やかな印象になる気がします。
少しでも軽やかな画面にしたい!というのが目標の一つですので
そのためには有効な手段の一つだと思っています。
もちろん、輪郭線だけで解決できる問題でないことは重々承知しています。





◆ 新作 ジークレー下地のパステル 5点 サムホール




 「雨の聖堂」 イタリア・アッシジ  作品ベース








「花の路地」 イタリア・アッシジ  作品ベース








「黄冠」 黄バラ  作品ベース








「銀河」 イタリア・トゥレーヴィ  作品ベース








「残月」 イタリア・アッシジ  作品ベース







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第2回 新開志保展のお知らせ

長野県長野市出身で、イタリア・ヴェネト州コネリアーノにお住まいの
友人の画家 新開志保さんの個展が長野県諏訪市で開催されます。


移ろいゆく光と影の中に、薫る緑と眩い秋葉、瑠璃の夜空と茜さす朝陽など、折々の風情が激しく交錯するイタリア。
20年以上イタリアに暮らし、それらを貪欲に吸収し、生まれながらに持つ日本人のDNAで紡ぎ出す。
ペンと水彩と色鉛筆による透明感溢れる画面は、丹念に織り込まれた綴れ織りのようでもあります。

好評を博した2年前の第1回展から更に磨きをかけ、イタリアの風景を中心とした34点を展示する予定です。
何卒ご高覧いただけますよう、私からも謹んでご案内申し上げます。

新開さんは毎日会場にいらっしゃいます。



10月10日(土)~18日(日)
 AM 10 : 00 ~ PM 6 : 00

ギャラリー橋田
長野県諏訪市城南1-2550
TEL 0266-52-3420 FAX 0266-52-3653













次の画像は、ご来場いただいた方に差し上げるために作ったチラシです。
新作の内、DMに使用した2点を含めた6点をピックアップして掲載してあります。





上左 「船出 ヴェネツィア」 32.5 x 24cm 4号相当
上右 「サン・レオの教会 サンタ・マリーア・アッスンタ」 51 x 37cm 10号相当

中左 「5月のトスカーナ 雨上がり」 44.5 x 28cm 8号相当
中右 「忘れられた自転車 アーゾロ」 45 x 34cm 8号

下左 「雲海の朝 サン・ジミニャーノ」 42.7 x 27.5cm 6号相当
下右 「藁山の猫」 29 x 25cm 4号相当




これら以外の新作は、すでに新開さんご自身のブログに掲載されています。
事前に知りたい方、個展をご覧になれない方は、どうぞこちらを!

水彩+色鉛筆画分室 イタリア・絵に描ける珠玉の町、村


そして、新開さんのもう一つのブログはこちら。
イタリアを中心とした各地を、ご自身の素敵な写真で紹介する人気ブログです!

イタリア・絵に描ける珠玉の町・村 ・ そしてもろもろ!


個展会場となるギャラリー橋田のホームページには「現在活躍中の応援作家 新開志保」のコーナーがあり
前回の個展の出品作を中心とした過去の作品を掲載してあります。

ギャラリー橋田ホームページ



…という具合に、私はいたって真面目にご案内記事を書いているのですが
おそらく今頃ご本人は、日本で何を食べるか、そのリスト作りで頭が一杯だろうと思います。
イタリアに戻って最初のブログは「日本で食べた旨い物」だと容易に想像がつきます。

2年ぶりですけど、一人で飛行機に乗れる? きゃはは!
ニャンコに気を取られて、躓いて骨折しないようにね!

長い道中、お気をつけて!!


-------------- Ichiro Futatsugi.■

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2015年 9月1日 火曜日

2015年09月01日 | 仕事場
◆ ヴェネツィアの運河 4号 パステル 第2回




前回の状態です。


さて、私がパステルを重点的に描き始めたのが約1年前でした。
それ以前から持っていた日本のゴンドラというソフトパステルをメインに使ってきたのですが
先日、新たにオランダのレンブラントというブランドを導入してみたのです。

ゴンドラに慣れた身には、レンブラントはまるでハードパステルのようです。
ずっと硬くて、表面はローソクのように艶々としています。
ゴンドラは黒板用のチョークのような粉っぽい質感なのですが
おそらく顔料を固める粘着剤が、両者で大きく異なるのだと思います。
私が購入したレンブラントはハーフサイズなのですが、それでもゴンドラの倍ほどの長さがあり
顔料の比重にもよりますが、ずしっとした重さを感じます。




上からゴンドラ、レンブラントのハーフサイズ、レンブラントのフルサイズ。
長さはゴンドラが2cm、レンブラントのハーフサイズが3.5cmで、フルサイズが7cmあります。


発色は、ゴンドラはやや粉っぽくて軽めの色合いで、レンブラントの方が鮮やかで重厚です。

紙への定着性は、混ぜ込まれている粘着剤の性質によるところが大きいと思いますが
レンブラントの方がゴンドラより落ちにくいようです。
ですから、色の伸び(擦った場合の広がり具合)は、逆にゴンドラの方が良いです。
もちろん粘着剤はメディウムではありませんので、最終的な定着にはフィキサチーフなどの定着剤を使うことになります。

フィキサチーフによる色調の変化も、粉っぽいゴンドラの方が大きいようです。

レンブラントのような硬めのパステルの利点として、エッジ(角)で描きやすいということが挙げられます。
尖らせたパステル鉛筆ほどには緻密な描写に適していませんが、髪の毛のような細い線も比較的楽に引けます。

半月ほど使ってみてレンブラントのパステルからは好感触を得ましたが
では今後は全面的にレンブラントに移行した方が良いかと言うと、そうとも言い切れません。
ゴンドラにはゴンドラの利点があり、状況によってはゴンドラの方が使いやすいと感じる場合もあるのです。
両者の描き味はかなり異なりますので、適材適所で使い分けるべきだと思います。





8月中旬頃の状態です。

縦横に張り巡らされたヴェネツィアの運河の中でも、このような小さな運河は
他の一般の街で言えば、裏通りの細い路地のようなものです。
観光客の目に触れる大通りなどは整備されて綺麗になっていますが
地元の人しか行き交うことのないような路地は、その街の辿って来た時間が生々しく現れて息づいています。
そのようなものが少しでも描けたらと思っています。





8月末の状態です。

仕上がりに近づき、そろそろ最終的な微調整に入る段階に来ていると思います。
しかし、前回と比べると絵の主題・狙いが、やや弱くなっているようにも感じます。
画面の密度や厚味は上がってきましたが、ここで1度原点に立ち返る必要があると思います。








◆新作  ジークレー下地のパステル 4点 サムホール





 「白妙」 白いシクラメン  作品ベース








 「杜の館」 長野県安曇野・碌山美術館  作品ベース








 「窓辺」 イタリア・トゥレーヴィ  作品ベース








 「花の城趾」 長野県・高遠城趾公園  作品ベース


-------------- Ichiro Futatsugi.■

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