風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

小下図 その20 フィレンツェ

2022年07月18日 | 仕事場
◆ 小下図 フィレンツェ大聖堂 4号大 ( 27 × 23 cm )


イタリア・トスカーナ州の州都フィレンツェのドゥオーモ
サンタ・マリーア・デル・フィオーレ大聖堂です。

この聖堂の最大の特徴は、やはり巨大なドームです。

二重構造のドーム内部の長い階段を
時折ドーム内側の大壁画をチラ見しつつ、ひたすら登り続けると
フィレンツェを一望できるクーポラに辿り着きます。

そこからの眺めは、まさに絶景!

まあ、確かに眺めは素晴らしいのですが、ドームは湾曲していますから
その下端が見えないのには怖さを感じました。
たとえ下端が見えたとしても、そこからさらに地上までの距離は相当なものですから
見えていようが、見えていまいが、関係ないように思うのですが
もし滑り落ちたら、どこまでも際限なく、永遠に落下して行きそうな気がしたものです。

再びフィレンツェを訪れたとしても、もう登ることはないと思います。

本番では50号で描く予定です。






ドローイングペンで形の描き起こし。
怖かったクーポラからの眺めではなく、地上から見上げた構図です。

形を描き起こすのに写真を使いましたが
写真を信用し過ぎたせいか、垂直線の傾きにやや不自然なところが見られます。
写真の写り具合と、実物を目で見た印象とが異なる場合は結構あります。
作品のコンセプトにもよりますが、自然な傾きに見せたい場合には注意が必要です。

下図には、そういう問題点を事前に見つけ出して本番に臨める利点があります。










ガッシュで彩色。

長らく描いてみたいと思いつつ、面倒そうだなぁと二の足を踏んでいたモチーフです。
その第一位はダントツでミラノ大聖堂(後陣側)なのですが、これは第二位にランクしていました。

「躊躇していると、描かずに終わってしまうぞ!」と、自分にハッパをかけ
ようやく重い腰に鞭打って始めたものです。

ただ、ミラノの方は装飾がゴチャゴチャしている分、ある程度ごまかしが効くので
むしろ、幾何学模様が整然と並ぶこちらの方が面倒かもしれません。






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本日のおまけ

天才的なマリオネット。

ちょっと古い動画で、画質も良くありませんが
この骸骨は本当に生きているよう!

いや、骸骨は本来生きていませんから
生きているようだという言い方は妙なものだと思いますが
生身の人間よりずっと”生きている感”があります。

この骸骨の動きのクオリティーの高さからすれば
YouTube の再生回数が1800万回というのは、むしろ少ないくらいです。

La calavera



------------- Ichiro Futatsugi.■



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小下図 その19 パリ (2)

2022年07月01日 | 仕事場
◆ 小下図 パリ大聖堂 4号大( 30 × 19.2 cm )


パリのノートルダム大聖堂を後陣側から眺めると、これはもうロケットだ!

身廊と翼廊の交差部にそびえる高い尖塔と、屋根も含めた身廊はロケットの胴体にそっくり。
身廊を支えるフライング・バットレス(飛び梁)は
ロケットの安定飛行を助ける尾翼「フィン」さながらの形状。
さらに、ご丁寧にもフィンの先端には補助ロケットのような小型の尖塔も備えています。

そうなると、翼廊と鐘楼は発射台ということ?
それとも、スペースシャトルが抱いているような燃料タンク? きゃはは!


本番では20号くらいで描く予定です。





ドローイングペンと鉛筆で形の描き起こし。

後陣の先、セーヌ川を渡った対岸の岸辺を通るオルレアン通りからの眺めです。

フライング・バットレスの大々的な採用により、前時代のロマネスク様式より高層化し易くなり
少しでも天界に近づこうとして生まれたゴシック聖堂のデザイン。

宗教と科学が、それぞれの手法で天に近づこうとして産み出したものが
奇しくも類似した形状を持っていることが面白いところです。









ガッシュで彩色。

う〜む、ロケットにそっくりだという意識が支配しているせいか
聖堂手前の樹木がロケットエンジンの噴煙に見えてきました。
樹木をかなり単純化しているせいでもあるでしょうから、本番では再検討します。


ゴシック聖堂は、立体的でダイナミックな後陣側の方が興味をそそられます。
数あるゴシック聖堂それぞれが独特のデザインを採っていますが
ダイナミックさと繊細さを兼ね備えている筆頭はパリ大聖堂だと思います。





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その後のパリ大聖堂

2019年4月に大火災に見舞われ、現在、大聖堂は再建の途上にあります。
新型コロナの大流行があり、聖堂に使われていた鉛が汚染を引き起こし
再建工事は一時中断を余儀なくされましたが、現在は再開されているようです。

グーグルのストリートビューを見ると
注目度が高いせいか、今月撮影されたばかりの画像に更新されていました。


(C) Google


火災直後は、焼け落ちた尖塔と屋根をモダンなデザインに変更して再建するプランが示され
コンペを開催してデザインを決めるような話も出ましたが、その話はその後出なくなりました。
結局、火災前の状態に戻すことで決着したようです。

この聖堂は、フランスのみならず、全世界に愛されてきた世界遺産です。
火災前の状態が、創建当時そのままの姿を残しているわけではありませんが
初期ゴシック建築を代表する名作です。
モダンなデザインの聖堂を建てたいのなら、別の場所に新たに建てればいいのです。

そして、当初の計画通り、2024年のパリ五輪に合わせて再建を完了させるようです。
しかし、その計画に無理はないのでしょうか。
五輪に合わせた突貫工事で後世に汚点を残すようなことはあってはならず
たとえ時間がかかっても、充分な調査・研究を積んだ上での再建であってほしいものです。


------------- Ichiro Futatsugi.■


コメント (2)
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