風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

5月29日木曜日

2008年05月29日 | 仕事場
また新たな作品の制作が始まっています。
現在制作中の作品は8点。
例によって、その日の気分で選んで描いていきます。



まだどれも下描きの段階です。
私は一般の日本画のように原寸大の下図を作って本紙に転写すると言う作業をほとんどしません。
直接本紙に鉛筆で下描きをしていきます。



手前のは安曇野の水車小屋で15号の大きさ。
後ろはイタリア・シエナの街並みで40号です。


私は作品のイメージを固めるためにパソコンをよく使います。
画像ソフトを使って作ったイメージ画像をプリントして下図代わりに使うのです。
最初の写真の左下の床に散らばっているのがプリントしたものです。

画像ソフトにイメージ画像を表示し、その上に自作の構図決定補助ソフトを重ねて構図を決めます。
構図決定補助ソフトには画面に16分割線を入れる機能があります。



黒い枠の部分が自作の構図決定補助ソフトで16分割線が表示されています。
枠の内側は透けていて下の画像ソフトの画像が見えています。
枠の大きさを変えればリアルタイムに16分割線の位置も変化します。
そうして構図が決定したらキャプチャして必要な部分をトリミングしてプリントします。



この構図決定補助ソフトはなかなか便利です。
私はデルファイという開発ソフトで作っていますが、プログラミングの経験者なら簡単に作れる程度のソフトです。
世はパソコン全盛の時代なのですから、絵描きだって使えるものは親でも使えばいいのです。
しかし、便利なものに依存し過ぎないようには戒めています。
制作過程でどのような手法を使おうとも、最後は手仕事にこだわる…というのが現在の私のスタンスだからです。


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まずは裏打ち

2008年05月13日 | 仕事場
5月17日から始まる個展の準備もようやく終わりました。
額縁屋さんに作品を引き渡してしまうと、仕事場がガランとしてホッとするやら拍子抜けするやら…。
それでも、遅筆の私は一息つく暇もなく次の制作に取り掛からないとなりません。
今年は秋に2回展覧会があり、私には結構過酷なスケジュールなのです。
私は常に複数の作品を並行して描いていきますので、ガランとした仕事場もすぐに賑やかさを取り戻すことになります。


さて、私が絵を描き始める際に必ずすること…それは裏打ちです。
裏打ちとは絵を描く和紙の裏に更に和紙を糊で貼って補強することです。
必ずしも必要ではないので裏打ちをしない人も多いのですが、技法上濃い目のニカワを使う私は”お守り”の意味もあって必ず行います。

私たちが作品を描くために使用する代表的な紙は雲肌麻紙(くもはだまし)と言って、かなり厚い和紙です。
裏に貼る紙は丈夫な楮(こうぞ)紙を使用します。
補強するためのものですから、安価な質の落ちる紙では意味がありません。

裏打ちするための糊は、本来は生麩糊(しょうふのり)と言って小麦粉から作る粉末を煮て糊にするのですが
現在では表具師向けの良質の合成糊がありますので私もそれを使っています。



左が絵を描く紙である本紙です。
その上に乗っかっているのが貼り付けた裏打ち紙を撫でつけるための撫刷毛というものです。
よく撫でつけないと裏打ち紙が本紙に密着しないために使用します。
右のタッパーに入っているのが糊と糊刷毛です。



パネル・本紙・裏打ち紙の大きさを比較するために重ねて置いています。
一番上がパネルです。
その下の一回り大きい白いものが本紙です。
さらに本紙の周囲にはみ出して薄く見えているのが裏打ち紙です。
裏打ち紙は本紙より広く切り分けておきます。
私は慣れているのでギリギリの大きさでも大丈夫なのですが
慣れない人は、裏打ち紙が曲がってしまってもいいように多めの余裕をとっておいたほうが安心です。



糊は少しトロッと刷毛から落下するくらいの濃さにします。
写真ではちょっと判りづらいかもしれませんが。



本紙を裏返して糊をひきます。
裏打ち紙に糊をつけて打つ方法と、本紙の裏に糊をつけて打つ方法があるのですが、絵を描く前ならこちらの方が楽です。



本紙の上に裏打ち紙を置いたら、撫刷毛でよ~く撫でつけます。
雲肌麻紙のような楮系の厚い紙は裏打ちが容易で、初心者でもすぐにマスターできます。
本紙が薄くなればなるほど難しくなります。
雁皮紙(がんぴし)や画仙紙(がせんし)などの場合は高度な技術が必要になります。



打ち終わりました。
このように裏打ち紙が少し曲がっても余裕があれば大丈夫なのです。



後は、毛布やカーペットなどの布の上に敷いて乾かします。
パネルや木製の机などに置いてしまうと貼り付いてしまうからです。
扇風機を使えば早く乾きます。
しっかりと乾いたらパネルに貼って…さあ、いよいよ制作開始です。
また新たな作品が生まれようとしています。
どんなものが出来上がるのか、絵は描いてみないことには判りませんので自分でも楽しみです。

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個展のご案内①

2008年05月11日 | 展覧会案内
この度、長野県諏訪市のギャラリー橋田で個展を開催することになりました。
同ギャラリーでは2度目、通算18回目の個展となり、新作を中心に50点ほど展示する予定です。



このDMの作品写真も印刷ですから仕方ないのですが、だいぶ色合いもニュアンスも違います。
是非一度実物をご覧いただきたくご案内申し上げます。
私は17日・18日(夕方まで)のみ会場におります。

*************************************************

     記

会期:5月17日(土)~25日(日)
会場:ギャラリー橋田
時間:午前10時~午後7時



長野県諏訪市城南1-2550
TEL:0266-52-3420
FAX:0266-52-3653


アクセス
自動車:中央自動車道・諏訪ICより約15分
鉄道:JR中央東線・上諏訪駅より車で約10分

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なお、今後の展覧会の情報は間近になりましたら逐次掲載していきますが、現在決定している分は私のホームページにまとめて掲載してあります。

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続・筆がなくなる!

2008年05月09日 | 仕事場
以前、私の好みの平筆を作ってくれた職人さんが引退してしまって途方に暮れた話をしました。
使いやすい筆がなくなるのは絵描きにとっては大問題です。
既成の筆でも描けないわけではないのですが、余計な作業を強いられることになり、気分は明らかに減退してしまいます。
残された手段は、既成の筆を自分で改造するしかありません。
しかし、例えば厚い平筆を削って薄くすることはできますが、逆は不可能です。
改造と言ってもその程度であり、新たに毛を加えるなどの必要が起これば専門技術なしでは実現できません。
手先が器用であったとしても、とても素人の手に負える作業ではないのです。

そんな折、筆屋さんに新しく入った職人さんが作った筆を何本か見せてもらう機会がありました。
どうやら研究熱心な人らしく、早速何種類か試用してみてから刷毛を作ってもらうことにしました。
しかし、こちらの希望を正確に伝えることはなかなか難しいものです。
はたして私の好みに近いものができるのか、待っている間は期待と不安が交錯していました。

一回目は、少々硬すぎるものが出来上がってきました。
私は硬めの筆が好きなのですが、予想以上に硬く仕上がっていました。

そして二度目…。
出来上がってきた刷毛に触れた瞬間、思わず顔がほころんでしまいました。
乾いている時の硬さ、水を含んだときの硬さ、どちらも理想に近いものでした。
今の私にとって「極品」と言えるものです。
引退した職人さんが作った愛用の平筆より良いくらいでした。



一番左は一般的な羊毛の刷毛です。
左から二番目は羊毛で穂先を長くしたものですが、それ以外は既成と同じです。
右の二本が今回特注した刷毛です。
夏毛系を使用した硬めで長めの穂先で、先端を薄くするという特殊な作り方をしています。


助かった!

それが率直な私の心情です。
一度は「もう作れない」と言われて断念せざるを得なかったものが蘇ってくれたのです。
私にとっては、正に救世主の出現と言えます。

今回の出来事は私にとって大きな教訓になりました。
いい道具はいつでも手に入るとは限らないということ。
そして、道具を使う側が作る人を育てることにもなるのだということです。
これからは多少無理をしてでも筆を特注していこうと考えています。
筆がなくなる!…なんて危機感を二度と味わいたくないものです。

「いつまでもあると思うな親と”筆”」


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ごちそうさま!

2008年05月02日 | 日常雑記
今年も嬉しい春の味覚の到来です。
長野のNさんから大量の選りすぐりのタラの芽が届きました。



これは昨年送っていただいたものを撮影しておいたものです。
こうして並べてみると、美しさに暫し見とれてしまいます。



因みに、これはコシアブラです。
私は一昨年にNさんから送っていただくまでコシアブラというものを知りませんでした。
タラの芽より華奢で黄緑色が鮮やかで瑞々しく、あまりの美しさに絵に描いたほどです。


「山菜」 6号 2007年


私は安曇野の山裾育ちなのですが、当時は山菜にはまったく興味がありませんでした。
30歳頃に能登半島に出かけた折、泊まった民宿で初めてタラの芽の天ぷらを口にしました。
こんなにおいしいものが世の中にあったのか!
それ以来タラの芽の天ぷらは病みつきです。



早速、夕食は天ぷらです。
数ある天ぷらの中で、私はタラの芽が一番好きかもしれません。
最近は魚介類より野菜や山菜の天ぷらの方を好むようになってきました。
揚げたては天つゆでもいいですが、塩も格別です。
余ったら翌日天つゆでサッと煮るのも大好きです。
高校生の頃、たまに母親が余った天ぷらを煮て弁当のおかずに入れてくれました。
要するに少し柔らかめの天丼です。
弁当のおかずの中ではこれが一番好きでした。

揚げたての天ぷらからはタラの芽の良い香りが漂っています。
それではNさんと故郷の山々に感謝しつつ…いっただきま~す♪

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