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サブカルとサッカーの話題っぽい

【ラノベ】僕は友達が少ない 8

2012-06-24 | ライトノベル
僕は友達が少ない 8 (文庫J) 僕は友達が少ない 8 (文庫J)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2012-06-22

 読了。

 大きく物語が動き始めたかもしれない一冊。小鷹の内面のローテンションを示すかのように星奈の「告白暴発」まではイマイチ面白くないというか、読んでいてテンポの悪さが気になってしまう内容でした。
 しかしまあ、皮肉なことに、小鷹が隣人部と距離を取って生徒会と絡むようになってから普段のノリに戻った印象です。最後に見せた理科と幸村二人の立ち回りが小気味よかったのと、次巻への引きが非常に気になる内容だったということで、最終的には面白かったという結論に至りました。
 以下雑感。

・ここにきて各キャラの立ち位置が明確に。メインヒロイン二人に関して言えば、これまでまったくいいところナシだった夜空に多少なり成長が見られ(小鷹だけに執着するのではなく隣人部全体のことを考えて行動したり)、逆に星奈は「揺るがない。変わる必要がない」というのを周囲の反応を含めてアピールしていた感じ。

・いやらしい見方をすると、ぶっちゃけ最終的に夜空が勝利する(恋愛的な意味で)伏線を張り巡らせているようで少し感じが悪いというのはある。星奈がマリアに抱きつかれたとき本気で迷惑そうにしているとか、身内のために名前を覚えていないクラスメイトをやり込めるとか、これまで夜空の領分だった「コイツは本気で性格が悪いです」系の描写を、今回はすべて星奈に押しつけたように見えるんだよなあ。

・まあ、逆に言うとコレって、これまでは夜空が過剰にワリを食っていたということの証明でもあるわけですが、そのせいで今回は星奈がワリを食っているように見えてしまうし、同時に夜空がいきなり殊勝な性格になりすぎてるようにも思える。ほんの少し前までは小鷹のことで恐慌状態に陥って、他の部員のことなんてどうでもいいと断じてたのに、どういう心境の変化なのかマジでわからんwせめてもう少し前から「夜空も他の隣人部メンバーを憎からず思っている」みたいな描写があったなら納得できるんだけど、ある程度長い時間を過ごしたあとで「小鷹以外はどうでもいい」って態度を取ったっていう経緯があるからなあ……。このへんは少し〝都合が良い〟かなと。

・幸村と理科はもうなんつーかカッケーっすねと。「自分がそうしたいから小鷹の傍にいる」と言う幸村の姿には心打たれたし、ギャグを交えつつもシリアスに小鷹の本音を引きだした理科は少し前から評価がうなぎ登りのストップ高ですよ。理科の「僕は友達が欲しいんだよ!」から帯にも書かれていた小鷹の「俺と友達になってくれ」までの流れには不覚にもジーンとしてしまいました。

・ただ……ただまあ、こうなると幸村と理科というキャラクターの「現在の立ち位置」には筋が通るんですが、そもそもどうして最初に小鷹に惹かれたのかという部分に対しての説得力が相変わらず皆無のままなので、腑に落ちないというか、妙な据わりの悪さがありますねえ。普段ならこんな細かいこと気にならないんですが、今回の『はがない』8巻では執拗なまでに「ラノベにありがちな設定」をdisる展開だったので、散々〝ソレ〟に頼っておきながら今さらdisるのは少し卑怯じゃねえかなあと思わなくもないです

・どういうことかっつーと、小鷹と理科のやり取りの中で「優しいだけの鈍感なハーレム系主人公がハッピーエンドをもたらす」ことを否定するのはいいんですよ。あと、理科の作った超兵器が実はそこまで大がかりなものじゃない(それでもスゴイとは思うけど)っていう設定もいいんですよ。でも、「マリアみたいな幼女が教員の資格持ってるわけねーだろ」ってちゃぶ台返しは必要あったかなあ……? そりゃあ現実と照らし合わせればあり得ないことですけど、「ラノベでよくある設定だから真に受けちゃいました? んなわけねーだろ!」みたいなのは、幸村が実は女でしたって展開に続いて二度目なので、正直「またこれか」とゲンナリするところもあったりなかったり。

・僕個人の好みの話をすると、こういう「ラノベやアニメ、漫画でテンプレになっている設定をメタな視点から否定することで読者の意表を突く」というギミックはむしろ好きなんですけど、こう何度も重ねられるといやらしさが鼻につきます。率直に言って、こういうアンチテーゼ的な手法が活きるのはしっかりとテンプレに沿って作られた作品が沢山あるからこそなのに、あまりにこの手法を多用するとそれらに対するリスペクトが足りてないように感じてしまうんですなー。……ぶっちゃけ、この手法を使う作家さんに対してはなにも感じないけど、この手法を使う作品を殊更に「他のラノベとはひと味違う!」とか「チープなハーレムラノベと違って高尚!」とか持ち上げるバカな読者を見るのがイヤってだけなんですけどね!(言ってしまった)

 とりあえず、次巻からは「主人公がヒロインの好意に向き合う」というラノベにあるまじき(?)展開が描かれるようなので一応期待しておきます。何度も肩すかし食らった作品なので、一応と言っておきますということで一つ。