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サブカルとサッカーの話題っぽい

【漫画】こえでおしごと!4

2010-07-25 | 漫画
こえでおしごと! 4 通常版 (GUM COMICS Plus) (ガムコミックスプラス) こえでおしごと! 4 通常版 (GUM COMICS Plus) (ガムコミックスプラス)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2010-07-24

 新! 展! 開!

 やー、面白かったなー。三巻の前振りの時点で期待はしてましたが、まさか柑奈の同級生二人が加わったことで、ここまで作品の色が変わるとは。これまでは同年代のキャラが元樹だけでしたし、学園モノとしても業界モノとしても中途半端な印象があっただけに、四巻でこういう方向に舵取りしたのは大英断だと思いますハイ。コレによってフィクション色はますます強くなりましたけど、話が面白くなるならそっちのほうがいいですし。ていうかこの二人、他の漫画で「アナルセックスなら近親相姦にならないから問題なし」って言ってましたよね。
 それにしても、柑奈の同級生二人が増えたことにより、文花は明らかに煽りを受けてますね! 巨乳キャラポジションも思いのほかアッサリと奪われてしまい、酒波さんに対するツッコミを繰り返すだけのキャラになってしまった……。外見的にも葉月が2Pキャラ(色違い)みたいな感じで似てますし、こりゃ本気で立場ないな! 紺野あずれ先生描き分けできてないな!
 しかし小鳥の「柑奈はトランス状態のときイったって分かってるんだから、オナニーをしているのは間違いない」という分析は恐ろしい。こうなってくると、一種の特殊能力と思われていた柑奈のトランス状態って、ただ単に人目を気にせず素の自分を出してるだけってことになりますよね。僕はトランス状態というと、一種の神懸かり的な、いわゆるイタコさんが口寄せをしているときのような状態を想像していたんですけど、そんなことはまったくなくてワロタ。いやあ、エロゲヒロインに相応しい固有能力ですよね。コレ、エロゲじゃねーけど
 何はともあれ、とても楽しい一冊でした。演技で勃たせるとか何とか、やってることはマヌケなのに、キチンとラブコメになってるあたり大したもんです。

 そういえば、アニメイトで買ったらペーパーと、作中で柑奈が読んでいた台本の一部が特典としてついてきたんですけど、最近ってこういうオマケをつけるの流行ってるんでしょうか。取り扱いに困ること間違いなしの一品です。


【映画】借りぐらしのアリエッティ

2010-07-25 | 映画

[借りぐらしのアリエッティ]
http://www.karigurashi.jp/index.html


 感想:良くも悪くも普通

 個人的には『ゲド戦記』のチープさと『ポニョ』のキチガイっぷりに比べれば、愛すべき"普通"さがあると思う。でも昔のジブリ作品を観たときに感じた「これぞジブリ!」みたいなオーラは極限まで弱まってると思う。
 この作品を一言で表すなら「小学生の夏休みの課題として出る読書感想文の推薦図書になりそうな話」という感じ。創作物ってのはディティールに凝れば凝るほど中身がわかりにくくなるのが常で、「ディティールに凝る」か「わかりやすさを重視する」かっていうのは、どこかでバランスを決しないといけない問題なんだけど、この『借りぐらしのアリエッティ』はわかりやすさを重視するあまりディティールが疎かになってしまったのでは、と感じてしまうくらい細部がテキトーな話だった。
 ぶっちゃけ僕は、アリエッティが翔に見つかって角砂糖を落としてしまうシーンまではすっげー楽しめてました。「このサイズだと昆虫怖ぇなあ」とか「なんかこれ「巨人の街」みたいなマップでモンハンしてるみたいだなぁ」とか、映像を通して伝わってくる世界観にワクワクすることが多かったです。ところが、このシーンを過ぎてからは様々な破綻がはじまってしまったというか、キャラクターと世界観を活かす脚本になっているとは言い難い部分が多くなってしまって、イマイチ中盤~終盤までの展開がしっくりこなかったなと。結末も、あれしかありえないだろうなあという着地点ではあるんですが、そこに至るまでの道のりは決してベストではなかったなと。
 なんかこう、「100点を取るのは不可能な頭脳を持った学生が、自分なりに頑張って勉強をした結果、80点を取れる学力を身につけたのに、ケアレスミスをしたせいでテストでは60点しか取れませんでした」みたいな内容でした。……わっかりづらーwwwww

 以下雑感というか突っ込みなど。

1.ていうかアレ、"借り"てるんじゃなくて完全にパクってるよねwwwハル(家政婦)が「泥棒だ」って言ってたのは真実その通りで、いくら翔が擁護したところで、借りっぱなしで返さないんじゃ単にパクってるだけだと思う。

2.アリエッティの母親のキャラが謎すぎ。あれじゃ見た目「母」じゃなくて「祖母」だし、『魔女宅』のキキママみたいな「娘と同じ道を通って成長した」感、『トトロ』の母親みたいな包容力や優しさ、『ポニョ』のリサみたいなバイタリティ、どれもが欠落していて、これまでのジブリ作品と並べた場合には「母」として異色だとすら思う。捕まって救出される役どころに据えるためには、ああいうキャラのほうが適切だったのだろうか? あまりにも無力なキャラクターとして描かれていたので萎えてしまった。

3.ハルの行動にはいちいち笑わせてもらった。あれはあれでギャグorコメディとしては成立しているかもしれないけど、作中における敵役としては役不足(誤用)だったなあ。そもそもラストの展開が「翔とアリエッティが短い時間でありながらも心を通わせた――」という内容なのだから、悪役はコメディであってはならないはず。ハルさんの言動が脈絡のないテンプレ的なものであるせいで、イマイチ作品に緊迫巻が生まれず、締まりのない物語になってしまったのではないかと思う。ハルのキャラクター描写に関して、もう一工夫必要だったのでは。

4.そういえば『ゲド戦記』でいきなり挿入歌が流れたときも感じたんだけど、ジブリって作品における山場を描くのがほんっとヘッタクソになったよなー。『借りぐらしのアリエッティ』における山場って、アリエッティが翔に初めて姿を晒すシーンだと思うけど、あの会話の流れで「君たちは滅びゆく種族だ」と断じてしまう子供はただただ気持ち悪い。キャラクターに主張させたいことがあるなら、もうちょい上手く演出で覆い隠してくれないと鼻につきますよ。宮崎駿さんはこういうこと指導してくんねーの?

 順番に。

 1に関しては、「"借り"ぐらししてる側からも何らかのリターンがある」みたいな設定にしたほうがよかった気がする。この場合のリターンは物品である必要はなくて、「小人の暮らす家には幸いが訪れるという伝承がある」程度の設定でいい。たとえば、某『ショコラ』では「妖精のための一粒」なんていう話があったけど、ああいうのをモチーフにした伝承が存在して、かつ「かつて翔はその物語を母親から聞かされていた」ということにしてしまえば、翔がアリエッティに無条件で協力する動機付けにもなるし、「彼女たちは泥棒じゃなくて借りぐらしだ」という主張にも説得力が出てくる。
 2に関しては、最悪あのままのキャラクターであっても、もうちょっと危機感が欲しかった。理想を言えば、やはりこれまでのジブリ作品に見られたような「頼りがいのある母親」であって欲しかった。アリエッティの快活さを見る限りでは、借りぐらしたちは性別によって役割を分けているというわけではなさそうだし、父が「あの子ももう14歳だ。私たちがいなくなっても一人で生きていかなければならない」なんて言うほどシビアな状態であるなら、母親も最低限の体力維持に努めているとか、そういう設定にしないとなんだか怠惰すぎて見ていて気持ち悪い。「間抜けな母が捕まる→助けに行く」より「凛々しい母がアリエッティを庇って捕まる(父は怪我をしていて助けにいけない)→アリエッティが翔と共に助けにいく」って展開のほうが盛り上がったと思うんだけどなー。そういうヒーローイズムみたいなものを排除したかったのかな。
 3に関しては、食卓で翔、ハル、伯母さんの三人が小人について会話をしているとき、「伯母さんは小人に会いたがっている血筋の人である」というのを印象づけるのと同じくらいのレベルで、「ハルは小人が存在するのではないかと思っていると同時に小人に対しては否定的な考え方をしている」というのを印象づけてくれないと、終盤の展開についていけない。コレは単純な構造的欠陥。あんな「家政婦は見た!」的な展開で小人の存在を嗅ぎつけ、アリエッティの母を捕獲し、あまつさえ雇い主のお坊ちゃんを軟禁するなんて単なるキチガイ婆さんだ。人間と小人が心を通わせるなんてありえない! ……というのが"当たり前"な世界観において、人間と小人が心を通わせるきっかけになる唯一の事件なんだから、敵役の心情描写はもう少しキッチリして欲しかった。
 4に関しては、好意的に受け取ると「生まれたときから心臓が悪いせいで病床に縛り付けられていた翔は、自由活発に飛び回るアリエッティを羨んで、ついあんなことを口走ってしまった」とか、「翔は生い立ちのせいで年齢のワリに達観してる」とか解釈することは可能なんだけど、やっぱどうしても唐突さは否めない。ぶっちゃけ、あのシーンだけ登場キャラクターが突然"神の視点"を得て、次元の異なる会話をしているように見える。あそこって「私たちは人間に見られたから去らなくてはならない」→「せっかく会えたんだからそんなこと言わないで」→「元はといえばあなたのせいだ」→「ごめん。ここには病気の療養できたんだけど僕なんてこなければよかったね」→「どこか悪いのか」→「生まれつき心臓が弱い。今度手術するけどきっとダメ。本当にごめん」→「こっちこそごめん。私の自業自得だったのに八つ当たりしてごめん」程度の会話の流れでも、次の展開に違和感なく繋げられる気がする。キャラクターに自分の思想丸出しで代弁させるのって、創作における最低の行為のひとつだと思うんだけどなあ。

 以上。
 なんかこう、決定的に物語が破綻していたり、酷い超展開だったりするわけではないんですけど、細かいところまで作り込まれていないせいで純粋に作品としての完成度が低く、最終的には「普通」という評価に落ち着く気がします。見に行って時間と金を無駄にしたというほどつまらなかったわけではありませんが、なんか一週間後には頭から消えてそうな、そんな映画でしたとさ。