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集団的自衛権行使は「戦争」に非ず 煽動と説得は大違い
防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛
防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛
文中より抜粋http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140617/plc14061703100002-n1.htm
大江健三郎氏は折からの集団的自衛権行使問題に触れ、
報道によれば、
「戦争の準備をすれば戦争に近づいていく」と語った。
集団的自衛権の行使とはすなわち戦争をすることだと捉えているらしい。
≪意図的に使う大江氏と朝日≫
朝日新聞は、
「集団的自衛権 戦争に必要最小限はない」と題する6段ぶち抜きの長大社説を掲げ、いみじくも「自衛権の行使=戦争」なる中見出しを打った。
これまた、集団的自衛権の行使イコール戦争だと捉えている。
馬鹿も休み休み言うがよい。
大江氏は高名な作家だし、朝日はインテリ紙なのだろう。
だから、用語には人一倍うるさいだろうと思ってきた。
今でもそう思っている。その両者が「戦争」を連呼するのはなぜか。
思うに2種の解釈があり得る。
(1)無知から出た用語間違い
(2)策略による用語選択。
(1)だと見ては失礼だろう。大江氏も朝日も、間違い御免の床屋政談をやっているわけではあるまいから。だとすれば、(2)になる。
両者は不適切な用語を意図的に反復使用し、聞き手、読み手を自分の思う方向へ誘導しようとしている。
巷間(こうかん)、そういう行為を煽動(せんどう)と呼ぶ。
「安保法制懇」報告を読んで、集団的自衛権行使の容認とは戦争準備のことだと説明するのは無茶だ。
どこをどう読んだら、そんな説が成り立つのか。
集団的自衛権は国連憲章抜きでは議論できず、わが国の現行政府解釈、すなわち「国際法上は保有、だが憲法上は行使不可」もまさにその線上での議論である。
ともに感情を抑えて砂を噛(か)む思いに耐える覚悟なしでは理解できない。
≪国民の説得と煽動とは違う≫
日本国憲法は「戦争の放棄」を謳(うた)う。
これは「戦争の違法化」を法典化した国連憲章と整合関係にある。
その憲章第51条が全国家に「個別的、集団的自衛の固有の権利」を認めている。
むろん、「戦争の権利」ではない。
大江流、朝日流の「それは戦争する権利だ」説を聴けば、世界中にブーイングが起きること間違いなしだ。
朝日も大江氏も「井の中の蛙(かわず)」の議論をやっている。
大海には目を閉ざしている。
なぜか。その方が大衆煽動には都合がよいからだ。が、
それは国民説得の道ではない。煽動と説得とは大違いで、説得に煽動は不要。地味でよい。
一言補うと、戦争という言葉は情況説明のために日常、しばしば使われる。
私だって使う。が、こと自衛権の法理、文理的説明のためには、この用語を使ってはならない。この点、肝に銘ずべきだ。
私は自分の経験から集団的自衛権について有権者の99%は理解ゼロだと考える。
有権者1億400万強の1%は104万強だが、この抽象的概念を曲がりなりにも説明できる人数はそれ以下だ。
99%の有権者にとり、それは正体不明の〈妖怪〉なのだ。
≪現代日本版〈妖怪〉が彷徨≫
そう、19世紀中葉にカール・マルクスが「共産主義という妖怪が欧州を彷徨(ほうこう)している」と言ったが、集団的自衛権は、それに似た現代日本版〈妖怪〉なのだ。賢人たちがその行使は戦争に繋(つな)がるとおっしゃる。おお怖い-。
とはいえ、日本の有権者だけが無知なのではない。
国民の99%がこの〈妖怪〉の理解度ゼロなのは他国でも同じこと。
違いは、他国はそれで一向に困らないのに、わが国だけがこの抽象的概念を理解するよう求められている点だ。
他国では国連憲章第51条の集団的自衛権はすべての国が保有し、行使できると理解されていて、ゆえに国民的議論は不要である。
わが国だけが負うべき宿命と言おう。
集団的自衛権問題で、その行使の是非を問われると、国民は理解ゼロの問題だけに答えに迷う。
すると、「妖怪が彷徨すると戦争なのだぞ」という賢者のご託宣が聞こえる。
大衆は「そうかもしれないな」と思う。
他方、「戦争だぞ」と脅さず、かくかくしかじかの具体的ケースで集団的自衛権による「反撃」には賛成ですか反対ですか、と世論調査すると、賛成多数となる。世論は揺れている。
世論獲得戦はなお熾烈(しれつ)化する。
我田引水型の世論調査も横行する。
煽動派にはメガホンと国会周辺という舞台装置は不可欠らしい。
逆に説得派にとり、それらは不用、むしろ有害である。
有権者の情動化が目的ではないからだ。
分かりにくいことを諄々(じゅんじゅん)と説き続ける持続心が必要とされる。
読み解けば非常に判りやすい「正論」
諸氏にも 熟読をされ 集団的自衛権の必要性を深く理解することが、現在の日本が置かれた状況下で、尤も必要不可欠な問題で、避けては通れない事象だと痛感する!!
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