そういえば、週末の三浦で、愛用しているボードのストラップが吹っ飛んでしまいました。
ウインドサーフィンは、ストラップに両足を入れることで完全な安定を得る事ができる乗り物ですが。
当然に暴れるボードを抑える為にも使用されます。
私自身が下手なのも有るかもしれませんが、セイルパワーがオーバー気味になると、ボードが浮き上がり始めて、ジョイント部分を中心として、めくれかえるような動きをしはじめます。
簡単に体を吹き飛ばすのがセイルパワーですから、そのままにしていると、ボードもろとも吹っ飛ばされます。
その場合、マスト加重をとり、浮き上がりをおさえて安定させるのですが、
人間、欲がありますので、さらに加速してスピードを得ようという気が起きます。
特に、バイク乗りの血が騒ぐ、とばかりにアドレナリンが前進を巡り、心臓がバクバク大好きの私ですから。
それでさえボードが暴れているのに、さらにセイルを立ててフルパワーで加速しようとします。
マストを立てれば立てるほど、セイルのパワーは、ジョイント部分から、ブームをつかんでいる腕に移動し始めますから、体をもっていかれそうになるのを、ストラップに入れた足と、腰で受け止め、その力を前に蹴り込むようにして進行方向のパワーに変換します。
海面が固くなり、波の山と山の頂点を飛ぶように走る速度に達し、全身が感覚器官になったような、独特のプレーニングの世界に入ります。
ウォー!と叫びにもならないような声をあげたそのときでした、「ぶち!」という音がして、「アレー!」と言う間もなく海の中。
怪我は有りませんでしたが、何がおきたかのか解らず、少し離れたボードまで泳いでいくと。
なんとストラップを止めているビスがパワー負けして、飛んでいました。
その場で、浜まで戻りましたが。
「何が起きるかわからんなー」という思いが頭を駆け巡ります。
そういえば、この青いボード、私が一番始めに激安で購入し、常に練習の時に私と共にありました。 いつも私が悪口を言っているので、ヘソを曲げたのかもしれません。
そういえば、あるウインドサーファーがおもしろい事を教えてくれました。
今、自分の乗っているボードの悪口が言えるようになったときは、そのボードはその人にとっての寿命が来たのだと。
この意味は、悪口が言えるということは、それだけそのボードの癖がわかってきているということ、乗り込むからこそ見えてくるボードの癖、そしてそれは同時に、次のレベルに上がる事が出来ますよーというボードからのサインなのだと。
しかし、まだジャイブが不完全で、貧乏な私には、終わられては困まります!
つるつるになった表面に、クリアーを拭きつけ、ノンスリップの粉を振り掛け、デルリンのストラップの位置を変え、まだまだ「乗るぞー!」
帰宅した息子から、楽しい話をたくさん聞きました。
息子にとっては、ウインドで過ごした約二週間は、とても良い思い出になったようです。
そういえば、帰宅予定日をいきなり変更して出たレースですが、結果は今ひとつだったようです。
息子は最上級のスペシャルクラスにエントリー、根元プロも参加するクラスです。
当日は天候が非常に不安定で、風がどうなるか予測がつかないレース。
知り合いが9.0で出たらどうだと勧めてくれたそうですが。
息子がセレクトしたのは7.5。 理由はあとで説明します。
スラローム選手権は三大会を通じて戦いを繰り広げるレースですが、息子の参加は、今回だけの単発参加。 そのため、優勝を狙って大きな賭けに出たようです。 息子のセレクトしたサイズのセイルでは、風が上がりすぎれば他の選手は、セイルサイズオーバーとなって走るのが難しくなり、息子に有利。
風が上がらなければ、逆に息子は圧倒的にふりです。
そしてレース開始、残念なことに天は見方してくれませんでした。
トップは、息子が以前スクールいたときに行われた、ブルームカップランキング戦で、半年間にわたり息子とはげしい戦いを繰り広げた、大ベテラン(伊豆丸さん他)が勝利を収めました。
息子は「普段自分が使っている道具だったら・・・・」と、帰宅してから何回か言ってました。 相当悔しかったのでしょう・・・・・
道具の進化は激しく、見かけこそ同じ様に見えても、一年遅れのセイルではレースにほぼ勝てなくなるという程の絶対的事実存在します。 特にスペシャルクラスになれば、プロも混ざってのレーサー集団の集まりですから、小さな差が大きな差になるのです。
息子はボードこそ、その知り合いから特別の計らいで最新型を使わしてもらいましたが、セイルはスクールにあるもの。 となれば、同じセイルサイズで戦う事は圧倒的に不利で、初めから勝てない事は解っています。 その為、少しでもそのハンディを埋めるには、普通の方法では通用せず、自分に有利な条件(ある風域だけを集中して狙う)を設定し、それだけに集中しなければ、その差を埋めることはできません。
ウインドサーフィンはそれほどシビアなのです。
結果として賭けに破れたとはいえ、もし息子の読みどうりに風が強風に変わっていたなら、セイルの性能差によるハンディは無くならないにせよ、ほぼ同等にまで近づきます。
戦いは結果が全てではありますが、例え勝てない状態で有ったとしても、自分で全てを判断して作戦を立て、いざ戦いの時になれば、つべこべ言わずに腹を決めて最後まで戦い抜く事。 それはとても大切なことなのです。
同年齢のときの私には、今の息子のような決断力と、腹をくくる精神力はありませんでした。
そこまで成長してくれた息子に、大変な嬉しさを覚えます。
今回のレースは、息子にとって、青春時代の熱い思い出になる事でしょう・・・・・