78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎『君の名は。』上映中残念なリアクションをする観客

2016-09-13 19:19:40 | ほぼ週刊サンマイ新聞
『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』などで知られるアニメーション監督・新海誠がまたしても名作を生み出した。2016年8月27日に公開されてから3週間未満にして既に興行収入62億円を突破してしまったアニメ映画『君の名は。』である。オタクはもちろん普段アニメを観ない一般人・芸能人、更には秋元康やジブリの鈴木敏夫など業界人までもが絶賛する異例の作品を、当方は9月12日のレイトショーにてようやく鑑賞することが出来た。しかし、そこでの一部女性客のあるリアクションに幻滅してしまったのだ。

 これは東京で暮らす男子高校生・立花瀧と、飛騨の山奥の糸守町に住む女子高生・宮水三葉の身体が入れ替わり、お互い会うことは出来ないながらもその生活を何とか乗り越えていく物語。当方はこの作品のレビューをするつもりは無い。とにかく観ろ、観れば分かるとしか言いようが無いので、内容が気になる方はここから先を読まず、予告編や他者のレビューなど他の予備知識も一切入れずに真っ白な状態で今すぐ最寄りの劇場に足を運んでいただきたい。



 問題の女性客のリアクションとは、後半のとても真面目かつ感動できるシーンで笑い声が聞こえたことである。
 この物語の主軸は瀧の奮闘にある。まず入れ替わりが出来なくなった数週間後に三葉に会いに行こうと思い立ち、三葉になっている時の記憶をもとに糸守の風景を鮮明に描き、その絵を頼りに三葉の所在をバイト仲間と共に捜索する。そこで無慈悲な現実を知ることになるが、それでも三葉のことが諦めきれずに山上の神社の御神体へ向かい、三葉の口噛み酒を飲む。そこからである。瀧の目前に三葉の生い立ちの数々が走馬灯のように現れ、目を覚ますと三葉の部屋で彼女の身体になっていたのだ。
 自身のおっぱいを触り、入れ替わりが出来たことを確信した瀧は涙を流し、妹に呆れられる訳だが、ここで女性客の笑いが起きていたのだ。それも一人のみならず、おそらく10人以上は居たのではないか。確かに物語の前半で三葉と入れ替わった瀧が興味深くおっぱいを触るシーンがギャグとなり、以後数回に渡り天丼もされてはいたが、後半のこのシーンは、このあと三葉の身体の瀧が彗星の墜落から住民を、そして三葉を守る盛大な作戦を遂行し興奮不可避のクライマックスに向かう為の大事な“キッカケ”の場面であり、笑える訳が無いのだ。例えるなら『クレヨンしんちゃん』の映画『嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』で、野原ひろしが自身の靴下の臭いを嗅ぐことで自らの過去を思い出す感動の名シーンで「靴下を嗅ぐ」行為のみを切り取って爆笑する人が果たして居るだろうか。

 前述の場面で笑った全ての女性にお願いがある。この作品をSNSで褒めたり周囲の人に勧めるのはむしろ積極的に行うべきだが、その際は是非とも考察サイトを熟読し正しい解釈をした上で得た誠実な感想を正しい日本語で正確に伝えていただきたい。

(#12:1197字)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿