【ニュース】サン・マイクロシステムズは、オープンソースDB「MySQL」を事業内容とするMySQL社を7月1日付で吸収合併し、両社の事業を統合した。旧MySQL ABは、新たにサンのソフトウエア部門内に設けられたビジネスユニットとして、サンのオープンソース事業のさらなる発展を目指して活動を開始する。サンはMySQL統合を機に、日本でもオープンソースDBの企業レベルでの利用拡大を図ることにしている。MySQLとサンの革新的なネットワークコンピューティングを高い次元で融合させ、マーケティングおよび販売活動でのさらなる相乗効果を図ることにしている。統合後のビジネスモデルは、原則として従来の販売モデルを継続する。(08年7月1日発表)
【コメント】米国でのサンとMySQLの統合は08年2月に完了しており、今回の日本での統合はこれを受けて行われたもの。オープンソースソフトウエア(OSS)は、Linuxをはじめとして既に企業システムに導入されていることはご存知のとおり。OSSは導入コストを低く抑えることができる上、一メーカーの囲い込み戦略を回避できるといったメリットのために、徐々に企業システムに浸透し始めている。当初はOSSに対して品質上の問題がクローズアップされたが、最近発表されている調査報告書では「既存のソフトウエアに対しOSSは何ら遜色はなく、ある部分ではむしろ信頼性がある」とするものがほとんどのところまできている。
品質はクリアできてもOSSは常にソフトウエア特許の問題を抱えている。これに対しては、日米欧のコンピューター関連5社が、Linuxの特許を外部から購入、これを無償で提供する特許管理会社「オープン・インベンション・ネットワーク(CIN)」を設立するなど、現在着々と手が打たれている。また、08年6月には米レッドハットが米ソフト企業2社とOSSソフトでの特許訴訟を和解で決着するなど、OSSの特許問題の前途に光明を見出しつつある。
こうなるとOSSの課題として残るのはサポートの問題だ。OSSの事業主体は、これまで技術コミュニティか個人がほとんどで、経営基盤が弱体である。将来とも継続してOSSを提供し続けられるのかという不安がよぎる。将来でなく現在のサポートの点での保証が得られなければ、企業ユーザーとしてはOSS導入に二の足を踏まざるを得ない。そこで、大手IT企業は一斉にOSSベンダーの買収に乗り出すことになったわけである。レッドハットがJBossを、シトリックスがXenをそれぞれ買収したが、オープンソースDBについてはサンがMySQLを買収し話題を集めたわけである。大手IT企業がOSSベンダーを買収することによって経営基盤とサポート面の強化とが同時に実現できるようになるわけである。今回のサンとMySQLの事業統合により、今後DB分野で圧倒的シェアを誇るオラクルにMySQLがどこまで肉薄できるかが焦点となってくる。(ESN)